73 / 78
第七十三話
しおりを挟む
「中村さん、話があるの。少し時間をいただいても良いかしら」
葵は優を離すを優の正面に立ち、真剣な顔で優の瞳を覗き込む。
葵の吐息が鼻に当たる。
そこには今まで見たことがないぐらい不安そうな葵がいた。
「……良いですよ」
「ありがとう中村さん。それじゃーついてきてくれるかしら」
葵の唇を見て、あの夜のことを思い出した優は葵を意識してしまい、視線をそらしてしまう。
優に断られなかった葵はホッと安堵する。
その後、葵は優を人気のない中庭へと連れていく。
葵は周りに誰もいないことを確認すると、躊躇なく地面に土下座した。
「勉強会の夜のことは本当にごめんなさい。きっと中村さんにひどいことをしたんだよね。私酔ってなにも覚えてないの。だからなにに謝れば良いか分からないけどずっと中村さんに嫌われたままは嫌なの。中村さんに許してもらうためならなんでもするわ。だから、仲直りしてください。お願いします」
葵の土下座は綺麗だった。
優は年上の土下座謝罪にどう反応するれば良いか分からずただ立ち尽くすことしかできなかった。
やはり、葵はあの夜のことを覚えていなかった。
それが悲しかった。
でも葵は覚えていないなりに誠意を見せてくれた。
「立ってください楠先輩。そんな格好だと話しづらいですよ」
「でも……」
「楠先輩の顔を見て話したいんです」
葵が顔を上げて優の顔を見つめる。
その目には涙が浮かんでいた。
葵もきっと、覚えていないことに苦しんでいたのだろう。
優は優しく葵に話しかける。
「やっぱり覚えていなかったんですね」
勉強会の朝の反応を見れば覚えていないことはほぼ分かっていたが、改めて言われるとやはり悲しかった。
「うん」
葵は素直に頷く。
「あのですね、楠先輩。楠先輩はあの夜、私にキスをしたんですよ。しかも口に」
「えっ……ホントにごめんね……」
「別に謝罪してほしかったわけじゃありません。嫌ではなかったので」
「えっ……」
「ただ、酔っぱらってキスして忘れたことにモヤモヤしてイラついているんです。私はいろんな思い出を楠先輩と一緒に作っていきたいのに楠先輩が大事な思い出を覚えていないから楠先輩にイライラしてたんです。楠先輩、なんでも言うことを聞くって言いましたよね」
「え……もちろん。私にできることならなんでも聞くわ」
「別に酒を飲むなとは言いません。でも酔っぱらってても覚えていてください。私との思い出は。それを約束してくれれば、今回のことは許してあげます」
「絶対約束するわ。二度と中村さんとの思い出は忘れたりしないわ。例え記憶喪失になっても中村さんのことは忘れない」
そうそう記憶喪失になることはないと思うが、葵はそこまでの覚悟を持って約束をしてくれた。
それはそれで嬉しかった。
葵は優を離すを優の正面に立ち、真剣な顔で優の瞳を覗き込む。
葵の吐息が鼻に当たる。
そこには今まで見たことがないぐらい不安そうな葵がいた。
「……良いですよ」
「ありがとう中村さん。それじゃーついてきてくれるかしら」
葵の唇を見て、あの夜のことを思い出した優は葵を意識してしまい、視線をそらしてしまう。
優に断られなかった葵はホッと安堵する。
その後、葵は優を人気のない中庭へと連れていく。
葵は周りに誰もいないことを確認すると、躊躇なく地面に土下座した。
「勉強会の夜のことは本当にごめんなさい。きっと中村さんにひどいことをしたんだよね。私酔ってなにも覚えてないの。だからなにに謝れば良いか分からないけどずっと中村さんに嫌われたままは嫌なの。中村さんに許してもらうためならなんでもするわ。だから、仲直りしてください。お願いします」
葵の土下座は綺麗だった。
優は年上の土下座謝罪にどう反応するれば良いか分からずただ立ち尽くすことしかできなかった。
やはり、葵はあの夜のことを覚えていなかった。
それが悲しかった。
でも葵は覚えていないなりに誠意を見せてくれた。
「立ってください楠先輩。そんな格好だと話しづらいですよ」
「でも……」
「楠先輩の顔を見て話したいんです」
葵が顔を上げて優の顔を見つめる。
その目には涙が浮かんでいた。
葵もきっと、覚えていないことに苦しんでいたのだろう。
優は優しく葵に話しかける。
「やっぱり覚えていなかったんですね」
勉強会の朝の反応を見れば覚えていないことはほぼ分かっていたが、改めて言われるとやはり悲しかった。
「うん」
葵は素直に頷く。
「あのですね、楠先輩。楠先輩はあの夜、私にキスをしたんですよ。しかも口に」
「えっ……ホントにごめんね……」
「別に謝罪してほしかったわけじゃありません。嫌ではなかったので」
「えっ……」
「ただ、酔っぱらってキスして忘れたことにモヤモヤしてイラついているんです。私はいろんな思い出を楠先輩と一緒に作っていきたいのに楠先輩が大事な思い出を覚えていないから楠先輩にイライラしてたんです。楠先輩、なんでも言うことを聞くって言いましたよね」
「え……もちろん。私にできることならなんでも聞くわ」
「別に酒を飲むなとは言いません。でも酔っぱらってても覚えていてください。私との思い出は。それを約束してくれれば、今回のことは許してあげます」
「絶対約束するわ。二度と中村さんとの思い出は忘れたりしないわ。例え記憶喪失になっても中村さんのことは忘れない」
そうそう記憶喪失になることはないと思うが、葵はそこまでの覚悟を持って約束をしてくれた。
それはそれで嬉しかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる