楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合

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第七十五話

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「仲直り記念ということで、一緒にクレープでも買いに行きますか。もちろん、私が奢ってあげるわ。私、先輩だから」
「それじゃーお言葉に甘えて。ありがとうございます」
「やっぱり中村さんは笑顔が一番似合ってるわ。好きよ中村さん」
「私も好きですよ楠先輩。だからこれからもよろしくお願いしますね」
「もちろんよ。先輩後輩として……ううん、友達としてよろしくね中村さん」
「こちらこそよろしくお願いします楠先輩。と、友達として」
「うふふ、中村さんと先輩後輩じゃないく友達になれた。えへへ」
「でも私たち、四月に友達になりましたよね」
「そうね。でもあれはまだ先輩後輩の距離感が残っていたわ。言うならば友達のような先輩後輩だったわ。でも今の私たちは違うわ。友達のような先輩後輩じゃなくて友達よ」

 今まで友達のような先輩後輩だった二人だが、今日をもって本当の友達になることができた。
 なんだか不思議な気分だ。
 入学当初は楠葵という少女は高嶺の花だった。
 そんな葵と先輩後輩の関係になり、今は友達になった。
 入学当初の自分に言っても信じてもらえないだろう。

「友達になったんだからこれからは中村さんのことを優ちゃんって呼んでも良いかしら」

 優ちゃん。
 その甘美な響きに優の心は撃ち抜かれた。

「もし嫌だったら今まで通り中村さんのまま呼ぶから」
「いえ、優ちゃんで良いですよ。むしろ優ちゃんの方が嬉しいです」
「分かったわ優ちゃん。それじゃー私のことも葵って呼んでほしいな」

 葵は少し恥ずかしそうに名前呼びを勧めてくる。
 後輩にとって先輩の名前呼びはハードルが高かった。
 いや、今の優と葵は先輩後輩ではない。
 友達だ。

「……葵先輩」
「良いわね。でも葵ちゃんでも良いのよ。だって私たち友達だから」
「さすがにそれはまだ難しいです。今は葵先輩で許してください」
「分かったわ。……まだ難しいってことは今後は大丈夫になるかもしれないってことよね。その時まで楽しみに待ってるね、優ちゃん」

 いくら友達になったとはいえ、年上の女の子をいきなりちゃん付けにできるほど優は陽キャではなかった。
 葵が意味深な笑みを浮かべて優のことを見つめている。
 葵がなにを考えているのか、優には全然見当もつかない。
 その後、優たちは葵の奢りでクレープを食べに行った。
 その時のクレープは甘くてとてもおいしかった。
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