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あの場所で
16_2_今なら2
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「作った曲がヒットしなかったって言ってもさ、条野さんがリリースの許可を出したんでしょう? だったら、あの人も責任を感じてないといけないはずですよね。父さんならそうだと思います。でも、あの人からは全然そんな感じはしなかった。それだけで人となりが分かっちゃった気がしてびっくりしました。本当にあんな人いるんですね」
現役の大学生である孝哉は、真っ黒に汚れた条野のような大人をまだあまり見たことが無いのだろう。大きな目が溢れそうなほどにその瞼を開き、それと同じくらいに口をポカンと開けて呆れていた。
「そうだよな? そう思うのが普通だよ。でもそんな風に思わない条野みたいな人種も、現実にいるんだよなあ。お前は汚れるなよー」
耀がそう言って、孝哉の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
「ちょっと! 耀さん、やめてよ……最近静電気起きやすくて困ってるんだから」
そう言って、耀の手を止めようとして孝哉が必死にて抵抗していると、その隙をついて純と色田が手を伸ばした。プラチナブロンドとキャンディブルーのグラデーションに変えられた髪色は、三人の男の手でぐちゃぐちゃになってしまった。
「孝哉、不良になっちゃったよねえ。青髪綺麗だよねー」
「これ、痛くなかったのか? ベースの色、真っ白だろう? それに、こんなに綺麗な青だと、お前学校で目立ちすぎて大変じゃないか?」
「今は顔を覚えてもらうために仕方ないって言われて……痛っ! ほらあ、絡まってるから止めてくださいってば!」
孝哉は、まるで蝿を払うかのように手を振り回した。それでも三人は、楽しそうに孝哉を構い続けている。まるで長年一緒にいる友人同士であるかのように、楽しそうに笑い合う三人を見ていると、俺はなんとなく親のような気分になっていた。気がつくと顔が緩み、ニヤニヤと笑いが漏れてしまう。ずっと夢見ていた関係性が出来上がった事に胸が詰まり、永遠にそれを堪能していたい気分になっていた。
「隼人さん、まるで子供を見守るお父さんのようですよ」
仁木さんはそう言って、俺と同じように目を細めていた。俺の気持ちを読まれたようで少し気恥ずかしくなったけれど、目の前の光景が愛おしすぎて、思わず
「そんな気分ですから、間違ってないですね」
と肯定してしまった。彼はまさか俺がそんな回答をするとはるとは思っていなかったようで、一瞬驚いて動きを止めたあと、ふっと吹き出して大きな声で笑い始めた。
「あっはっは。隼人さん、あなたはまだ二十五歳ですよね。でも今の顔……。そうとは思えないほどの貫禄が身につきましたね」
破顔する仁木さんを見ていると、俺の胸の奥はさらに詰まるように痛んでいった。ここに至るまでの彼の苦悩を思うと、鼻も僅かにツンと痛み始める。こっそりとそれを誤魔化して、なんでも無い顔を装った。
「まあね。俺だって割と苦労してきたんですよ、これでも。というかね、一般の会社勤めに比べると、音楽業界にいる人間はどこかしら若く見えるもんなんですよ。だから、仁木さんの目が若見えの人に慣れてるだけです。俺は年相応なはずです」
そう言って俺が戯けて怒ったふりをすれば、それを見て仁木さんはまた楽しそうに「それは失礼しました」と言いながら笑い続けている。
そうやってひとしきり笑った後に、ふっと懐かしむような表情を浮かべ、
「これほど柔らかい空気の醸し出せるメンバーでしたら、今度はうまくやっていけるでしょうね」
と呟いた。俺はそれに大きく一つ頷いて、
「俺もそう思います。もし気持ちがすれ違ったとしても、今のバランスならきっとうまく解決できると思うんです。誰かの心がささくれても、今ならそれを癒せる奴が必ずいると思いますから」
と答えた。
現役の大学生である孝哉は、真っ黒に汚れた条野のような大人をまだあまり見たことが無いのだろう。大きな目が溢れそうなほどにその瞼を開き、それと同じくらいに口をポカンと開けて呆れていた。
「そうだよな? そう思うのが普通だよ。でもそんな風に思わない条野みたいな人種も、現実にいるんだよなあ。お前は汚れるなよー」
耀がそう言って、孝哉の髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜた。
「ちょっと! 耀さん、やめてよ……最近静電気起きやすくて困ってるんだから」
そう言って、耀の手を止めようとして孝哉が必死にて抵抗していると、その隙をついて純と色田が手を伸ばした。プラチナブロンドとキャンディブルーのグラデーションに変えられた髪色は、三人の男の手でぐちゃぐちゃになってしまった。
「孝哉、不良になっちゃったよねえ。青髪綺麗だよねー」
「これ、痛くなかったのか? ベースの色、真っ白だろう? それに、こんなに綺麗な青だと、お前学校で目立ちすぎて大変じゃないか?」
「今は顔を覚えてもらうために仕方ないって言われて……痛っ! ほらあ、絡まってるから止めてくださいってば!」
孝哉は、まるで蝿を払うかのように手を振り回した。それでも三人は、楽しそうに孝哉を構い続けている。まるで長年一緒にいる友人同士であるかのように、楽しそうに笑い合う三人を見ていると、俺はなんとなく親のような気分になっていた。気がつくと顔が緩み、ニヤニヤと笑いが漏れてしまう。ずっと夢見ていた関係性が出来上がった事に胸が詰まり、永遠にそれを堪能していたい気分になっていた。
「隼人さん、まるで子供を見守るお父さんのようですよ」
仁木さんはそう言って、俺と同じように目を細めていた。俺の気持ちを読まれたようで少し気恥ずかしくなったけれど、目の前の光景が愛おしすぎて、思わず
「そんな気分ですから、間違ってないですね」
と肯定してしまった。彼はまさか俺がそんな回答をするとはるとは思っていなかったようで、一瞬驚いて動きを止めたあと、ふっと吹き出して大きな声で笑い始めた。
「あっはっは。隼人さん、あなたはまだ二十五歳ですよね。でも今の顔……。そうとは思えないほどの貫禄が身につきましたね」
破顔する仁木さんを見ていると、俺の胸の奥はさらに詰まるように痛んでいった。ここに至るまでの彼の苦悩を思うと、鼻も僅かにツンと痛み始める。こっそりとそれを誤魔化して、なんでも無い顔を装った。
「まあね。俺だって割と苦労してきたんですよ、これでも。というかね、一般の会社勤めに比べると、音楽業界にいる人間はどこかしら若く見えるもんなんですよ。だから、仁木さんの目が若見えの人に慣れてるだけです。俺は年相応なはずです」
そう言って俺が戯けて怒ったふりをすれば、それを見て仁木さんはまた楽しそうに「それは失礼しました」と言いながら笑い続けている。
そうやってひとしきり笑った後に、ふっと懐かしむような表情を浮かべ、
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と呟いた。俺はそれに大きく一つ頷いて、
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と答えた。
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