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第三章
ネル お姉さんに頭を使って立ち向かう
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注意! 最初だけ別視点です。
◆◇◆◇◆◇
ピーターが違和感を覚えたのは、互いに自己紹介をした時の事だった。
イザスタと変なドロドロに邪因子の繋がりがあるのは分かる。分からないのは、イザスタから周囲に放出されている邪因子と、逆にイザスタへ島のあちこちから流れ込んでいる邪因子。
それだけなら不思議な事というだけで済む話。ただし、ネルとの一度目の戦いを見る内、ピーターだけがその異常性に気が付いた。
この場所に来た時から感じていた包み込むような邪因子。
いくらイザスタが強いとしても、普段に比べて異常なほど激しいネルの邪因子の消費率。
そして、ネルの身体からもイザスタに流れ込んでいく邪因子。
「まさかとは思ったけど……いやホントにまさかだよ。普通そんな事出来るわけがない。この島全体を漂う邪因子。それら全てがイザスタさんの物だなんて」
イザスタから放たれる邪因子。本来なら広い世界に溶けてしばらくすれば消え去るそれだが、ここは外と隔絶された場所。
コップの水にある一定以上砂糖を溶かすとそれ以上は溶けずに残るように、その空間の限界値まで邪因子が溜まり続けた結果、消えずに邪因子はそのまま大気に残る。
ネル達がこの場所に来た時身体の調子が良くなったのも、大気中の邪因子を無意識に吸収していたから。つまり自動回復エリアだった。
しかし、それはどこまで行ってもイザスタの邪因子。
もてなすべき客人としてあるならまだしも、敵対すれば回復する道理もなく、むしろなまじ身体に取り込んだ分が勝手にイザスタへと戻っていく。元々あった自身の邪因子を一部巻き添えにして。
客人には癒しを。敵対者には脱力を。それこそがこの空間。イザスタのプライベートルームだった。
全貌とまではいかずとも、ピーターはそれに気が付いてガーベラに報告。そして戦っているネルにも知らせようとするが、
「まったく。ネルさんったら半分暴走状態でこっちの声なんか聞いちゃいないんだから。しかも結局力尽きて途中で動けなくなっちゃうしさ」
仕掛けを知らせる前にネルがダウンした時、ピーターは内心少し呆れていた。勝手に突っ走って暴走してこれだよと。だが、
『仕方ありませんわね。どうせ数分したら立ち直るでしょうが、その間私が出るといたしましょう。あれだけの方にお相手頂けるというのも良い機会でしょうし。リーダーさんはどうします?』
ネルはすぐに戻ってくると信じて疑わないガーベラの言葉に、ピーターは困惑した。
しかし実際その可能性はネルの性格上高いし、半分自滅とはいえチームメンバーがやられて何も動かないというのも気分が悪い。なので、
『ええっ!? あれに乱入するんですかっ!? ……ああもうっ!? やれば良いんでしょ!? じゃあボクはさっき言ったように、イザスタさんに流れ込んでいく邪因子を辿ってみます。あれだけちゃんとした流れだ。どこかにきちんとした道筋を作る中継点か何かある筈。それにちょっかいを出せば、少しでも意識が向いて隙が出来るかもしれません。タイミングは連絡よろしく』
当然ここで戦っても勝ち目はない。だが、今回の勝利条件は有効打を当てる事。一瞬でも隙が出来れば勝機はある。
卑怯? 盤外戦術? 悪の組織ですがそれが何か問題でも?
そうして邪因子の流れを辿っていき、
「ふぬぬぬっ…………あ~目が痛い。目薬持って来れば良かったっ! ……だけど、やっと見つけたぞ! 中継点っ!」
流れを見逃すまいと酷使した眼を瞼の上から押さえながら、ピーターは密林に隠された物を見つけてホッとしていた。
それは一見するとただの木だったが、幹に小さな石のような物が埋め込まれていてそこから邪因子が流れている。
「罠は……ないよね? あとはタイミングを合わせてっと……上手く行けば良いんだけど。頼みますよガーベラさん。ネルさん」
◇◆◇◆◇◆
残り10秒。
指が絡まった状態に、イザスタはやっと焦った顔をした。身を翻そうとしたけどがっちり掴んでいる。これはあくまで有効打ではないけど、やっとここまで来たんだ。もう逃がさないよっ!
「はあああっ!」
「……っ!?」
パシパシパシパシパシパシ!
あたしの拳は全て空いた方の手で阻まれ、一発も身体に届いていない。だけど、
7秒。
「ほらほらほらっ! どうしたのさっきの余裕はっ!?」
「イタタタ。地味に全部受け止めるの痛くなってきたわね」
少しずつ、少しずつ。イザスタの反応速度が痛みで遅くなっていく。……いや、こっちが速くなっているのかも。
ドクンっ! ドクンっ!
心臓が高鳴る度、邪因子もまた昂って身体中に流れていく。
なんかさっきから勝手に身体から放出される分があって消耗が激しいけど、そんなの気にならないくらいに……ああ。楽しくなってきた。
どうすればもっと効率良く動ける? 残り少ない邪因子をどのタイミングで高め、そして緩める? オジサンの言っていた事を思い出しながら、瞬間瞬間に浮かんだ手を試していく。
圧倒的格上? 実力じゃ勝てない?
なら、戦いながら勝てるようになれば良いだけの話だよね!
5秒。
「……ふっ!」
「危な……って!? 今の動き……まるでケンちゃんの」
見様見真似でオジサンが前見せてくれた型をやってみると、思ったよりすんなり身体が動いた。
それを見てイザスタが一瞬驚いた様子を見せる。今だっ!
「やあああああっ!」
「ウソ。踏ん張りの効かない砂浜でこんな……きゃああっ!?」
あたしは掴んでいた手に思いっきり邪因子を込めてそのまま振り上げた。掴まったままのイザスタは一瞬だけど足が地面から離れて宙に舞う。
3秒。
「きゃあああ……なんちゃって!」
だけどイザスタもそれで慌てたのは一瞬だけ。おどけた様子で笑いながら軽く指を振ると、地面からドロドロがあたしの足元に絡みついてくる。
このまま放っておいたらどんどん上がってきて、あたしの身体はまともに動かせなくなるだろう。だけど足元を振り払っていたら時間が、
「さあ。どうするの?」
「こうすんのよっ!」
「あらっ!?」
あたしは咄嗟に全身から邪因子を放出し、ズンッと足を踏み下ろしてドロドロを吹き飛ばしながら真上のイザスタを一気に引き寄せる。
1秒。
残るあたしの邪因子は、ありったけを振りかぶった右腕に。
心臓から肩に。肩から腕に。腕から拳に。そして、
「いっけえええぇっっ!」
あたしは全力で拳を振るい、
「惜しかったわね」
バシイッ!
微笑むイザスタにギリギリで拳を受け止められた。
0秒。
「アンタがね」
ズガァンッ!
ピピピッと時間らしきアラームが鳴るのと、あたしがそのままの勢いで落ちてくるイザスタの額に頭突きを食らわせたのは、ほぼ同時の事だった。
これにてネル対イザスタ戦決着です。
久々のバトル描写でかなりの難産になりましたが、楽しんで頂ければ幸いです。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。
お気に入り、感想等は作家のエネルギー源です。ここぞとばかりに投入していただけるともうやる気がモリモリ湧いてきますので何卒、何卒よろしく!
◆◇◆◇◆◇
ピーターが違和感を覚えたのは、互いに自己紹介をした時の事だった。
イザスタと変なドロドロに邪因子の繋がりがあるのは分かる。分からないのは、イザスタから周囲に放出されている邪因子と、逆にイザスタへ島のあちこちから流れ込んでいる邪因子。
それだけなら不思議な事というだけで済む話。ただし、ネルとの一度目の戦いを見る内、ピーターだけがその異常性に気が付いた。
この場所に来た時から感じていた包み込むような邪因子。
いくらイザスタが強いとしても、普段に比べて異常なほど激しいネルの邪因子の消費率。
そして、ネルの身体からもイザスタに流れ込んでいく邪因子。
「まさかとは思ったけど……いやホントにまさかだよ。普通そんな事出来るわけがない。この島全体を漂う邪因子。それら全てがイザスタさんの物だなんて」
イザスタから放たれる邪因子。本来なら広い世界に溶けてしばらくすれば消え去るそれだが、ここは外と隔絶された場所。
コップの水にある一定以上砂糖を溶かすとそれ以上は溶けずに残るように、その空間の限界値まで邪因子が溜まり続けた結果、消えずに邪因子はそのまま大気に残る。
ネル達がこの場所に来た時身体の調子が良くなったのも、大気中の邪因子を無意識に吸収していたから。つまり自動回復エリアだった。
しかし、それはどこまで行ってもイザスタの邪因子。
もてなすべき客人としてあるならまだしも、敵対すれば回復する道理もなく、むしろなまじ身体に取り込んだ分が勝手にイザスタへと戻っていく。元々あった自身の邪因子を一部巻き添えにして。
客人には癒しを。敵対者には脱力を。それこそがこの空間。イザスタのプライベートルームだった。
全貌とまではいかずとも、ピーターはそれに気が付いてガーベラに報告。そして戦っているネルにも知らせようとするが、
「まったく。ネルさんったら半分暴走状態でこっちの声なんか聞いちゃいないんだから。しかも結局力尽きて途中で動けなくなっちゃうしさ」
仕掛けを知らせる前にネルがダウンした時、ピーターは内心少し呆れていた。勝手に突っ走って暴走してこれだよと。だが、
『仕方ありませんわね。どうせ数分したら立ち直るでしょうが、その間私が出るといたしましょう。あれだけの方にお相手頂けるというのも良い機会でしょうし。リーダーさんはどうします?』
ネルはすぐに戻ってくると信じて疑わないガーベラの言葉に、ピーターは困惑した。
しかし実際その可能性はネルの性格上高いし、半分自滅とはいえチームメンバーがやられて何も動かないというのも気分が悪い。なので、
『ええっ!? あれに乱入するんですかっ!? ……ああもうっ!? やれば良いんでしょ!? じゃあボクはさっき言ったように、イザスタさんに流れ込んでいく邪因子を辿ってみます。あれだけちゃんとした流れだ。どこかにきちんとした道筋を作る中継点か何かある筈。それにちょっかいを出せば、少しでも意識が向いて隙が出来るかもしれません。タイミングは連絡よろしく』
当然ここで戦っても勝ち目はない。だが、今回の勝利条件は有効打を当てる事。一瞬でも隙が出来れば勝機はある。
卑怯? 盤外戦術? 悪の組織ですがそれが何か問題でも?
そうして邪因子の流れを辿っていき、
「ふぬぬぬっ…………あ~目が痛い。目薬持って来れば良かったっ! ……だけど、やっと見つけたぞ! 中継点っ!」
流れを見逃すまいと酷使した眼を瞼の上から押さえながら、ピーターは密林に隠された物を見つけてホッとしていた。
それは一見するとただの木だったが、幹に小さな石のような物が埋め込まれていてそこから邪因子が流れている。
「罠は……ないよね? あとはタイミングを合わせてっと……上手く行けば良いんだけど。頼みますよガーベラさん。ネルさん」
◇◆◇◆◇◆
残り10秒。
指が絡まった状態に、イザスタはやっと焦った顔をした。身を翻そうとしたけどがっちり掴んでいる。これはあくまで有効打ではないけど、やっとここまで来たんだ。もう逃がさないよっ!
「はあああっ!」
「……っ!?」
パシパシパシパシパシパシ!
あたしの拳は全て空いた方の手で阻まれ、一発も身体に届いていない。だけど、
7秒。
「ほらほらほらっ! どうしたのさっきの余裕はっ!?」
「イタタタ。地味に全部受け止めるの痛くなってきたわね」
少しずつ、少しずつ。イザスタの反応速度が痛みで遅くなっていく。……いや、こっちが速くなっているのかも。
ドクンっ! ドクンっ!
心臓が高鳴る度、邪因子もまた昂って身体中に流れていく。
なんかさっきから勝手に身体から放出される分があって消耗が激しいけど、そんなの気にならないくらいに……ああ。楽しくなってきた。
どうすればもっと効率良く動ける? 残り少ない邪因子をどのタイミングで高め、そして緩める? オジサンの言っていた事を思い出しながら、瞬間瞬間に浮かんだ手を試していく。
圧倒的格上? 実力じゃ勝てない?
なら、戦いながら勝てるようになれば良いだけの話だよね!
5秒。
「……ふっ!」
「危な……って!? 今の動き……まるでケンちゃんの」
見様見真似でオジサンが前見せてくれた型をやってみると、思ったよりすんなり身体が動いた。
それを見てイザスタが一瞬驚いた様子を見せる。今だっ!
「やあああああっ!」
「ウソ。踏ん張りの効かない砂浜でこんな……きゃああっ!?」
あたしは掴んでいた手に思いっきり邪因子を込めてそのまま振り上げた。掴まったままのイザスタは一瞬だけど足が地面から離れて宙に舞う。
3秒。
「きゃあああ……なんちゃって!」
だけどイザスタもそれで慌てたのは一瞬だけ。おどけた様子で笑いながら軽く指を振ると、地面からドロドロがあたしの足元に絡みついてくる。
このまま放っておいたらどんどん上がってきて、あたしの身体はまともに動かせなくなるだろう。だけど足元を振り払っていたら時間が、
「さあ。どうするの?」
「こうすんのよっ!」
「あらっ!?」
あたしは咄嗟に全身から邪因子を放出し、ズンッと足を踏み下ろしてドロドロを吹き飛ばしながら真上のイザスタを一気に引き寄せる。
1秒。
残るあたしの邪因子は、ありったけを振りかぶった右腕に。
心臓から肩に。肩から腕に。腕から拳に。そして、
「いっけえええぇっっ!」
あたしは全力で拳を振るい、
「惜しかったわね」
バシイッ!
微笑むイザスタにギリギリで拳を受け止められた。
0秒。
「アンタがね」
ズガァンッ!
ピピピッと時間らしきアラームが鳴るのと、あたしがそのままの勢いで落ちてくるイザスタの額に頭突きを食らわせたのは、ほぼ同時の事だった。
これにてネル対イザスタ戦決着です。
久々のバトル描写でかなりの難産になりましたが、楽しんで頂ければ幸いです。
この話までで面白いとか良かったとか思ってくれる読者様。完結していないからと評価を保留されている読者様。
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