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本編
身に覚えのない話
しおりを挟む思えばギ……くんと対峙するのは久しぶりだ。ギ……くんは確証を持てないのか、真っ青な顔で恐る恐る私の名前を呼ぶ。
「ダイ…アナ……?」
「おや、私の名前覚えてるんだ」
「……!」
意外な事実に目を見開くと、なぜかみるみる彼の顔から血の気が引いていく。あれ、今のは嫌味とかでなくマジで素なんだけどな。
まあいいや、いつまでも怯えた顔と向き合うのもつまらない。私は彼にしがみついている、可愛い令嬢を一瞥した。
「……こんな可愛い子を独り占めなんて狡いじゃないか。私にも紹介してくれないか?」
「は……?お前、やっぱり……」
何をブツブツ言っているのだろう。彼女を庇うどころか何故かショックを受けた様子の婚約者に呆れ果てる。
「いいや、可愛いお嬢さんには自分からアタックしないとな。……ダイアナ・エドワーズだ。お名前を聞いても?」
ギ……くんとの会話は諦め本命に話しかけると、フェリシアは驚いたように目を瞬かせ、恐る恐るつぶやいた。
「フェ、フェリシア……」
「フェリシア、良い響きだ」
「あ、あ、貴方がギデオンの婚約者の……?」
「そうだが」
かなり困惑しているらしい。訝しげな視線がギ……くんの顔と私の顔を何往復もしていたが、なにかを決意したような顔をすると、ビシリと私に人差し指を向けた。
「ギ、ギデオンを解放してあげてくださいッッ」
解放……なるほど、さしづめ私はロミオに脅しをかけ、2人の仲を引き裂く悪女といったところか。
それにしても、私に指を差して抗議する令嬢は初めてだ。そこかしこから殺気が飛んでいるな……。
思ったよりも楽しい修羅場になりそうで、閣下の頼みで来たことを忘れそうになる。
「へえ、面白いことを言うね。……詳しく聞かせてもらおうか」
「ギデオンは貴方の束縛に苦しんでいるんです!」
「束縛……ふ、束縛か……!」
彼がフェリシア嬢に話している"私"の印象が手に取るようにわかり、笑いがとまらない。ギくんは気まずげに口をパクパクし、それがまた彼の間抜けさ際立たせている。
「な、なにが面白いのですか!私は真面目な話をしているのです!」
「すまない、君があまりに素直にむかってくるものだから、可愛くて」
「かわ…っ?!」
おや、意外とちょろいな阿婆擦れ。てっきり口説かれ慣れているものと思っていた。
背後のレイから抗議の視線をひしひし感じるが、無視して続行することにした。
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