【完結】婚約者の浮気相手に「私にしない?」と囁いてみた

長草琵琶

文字の大きさ
5 / 10
本編

身に覚えのない話

しおりを挟む



 思えばギ……くんと対峙するのは久しぶりだ。ギ……くんは確証を持てないのか、真っ青な顔で恐る恐る私の名前を呼ぶ。

「ダイ…アナ……?」
「おや、私の名前覚えてるんだ」
「……!」

   意外な事実に目を見開くと、なぜかみるみる彼の顔から血の気が引いていく。あれ、今のは嫌味とかでなくマジで素なんだけどな。

 まあいいや、いつまでも怯えた顔と向き合うのもつまらない。私は彼にしがみついている、可愛い令嬢を一瞥した。
 
「……こんな可愛い子を独り占めなんて狡いじゃないか。私にも紹介してくれないか?」
「は……?お前、やっぱり……」
 
   何をブツブツ言っているのだろう。彼女を庇うどころか何故かショックを受けた様子の婚約者に呆れ果てる。

「いいや、可愛いお嬢さんには自分からアタックしないとな。……ダイアナ・エドワーズだ。お名前を聞いても?」

 ギ……くんとの会話は諦め本命に話しかけると、フェリシアは驚いたように目を瞬かせ、恐る恐るつぶやいた。

「フェ、フェリシア……」
「フェリシア、良い響きだ」
「あ、あ、貴方がギデオンの婚約者の……?」
「そうだが」

 かなり困惑しているらしい。訝しげな視線がギ……くんの顔と私の顔を何往復もしていたが、なにかを決意したような顔をすると、ビシリと私に人差し指を向けた。

「ギ、ギデオンを解放してあげてくださいッッ」

 解放……なるほど、さしづめ私はロミオに脅しをかけ、2人の仲を引き裂く悪女といったところか。

 それにしても、私に指を差して抗議する令嬢は初めてだ。そこかしこから殺気が飛んでいるな……。

 思ったよりも楽しい修羅場になりそうで、閣下の頼みで来たことを忘れそうになる。

「へえ、面白いことを言うね。……詳しく聞かせてもらおうか」
「ギデオンは貴方の束縛に苦しんでいるんです!」
「束縛……ふ、束縛か……!」

 彼がフェリシア嬢に話している"私"の印象が手に取るようにわかり、笑いがとまらない。ギくんは気まずげに口をパクパクし、それがまた彼の間抜けさ際立たせている。

「な、なにが面白いのですか!私は真面目な話をしているのです!」
「すまない、君があまりに素直にむかってくるものだから、可愛くて」
「かわ…っ?!」

 おや、意外とちょろいな阿婆擦れ。てっきり口説かれ慣れているものと思っていた。

 背後のレイから抗議の視線をひしひし感じるが、無視して続行することにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

はっきり言ってカケラも興味はございません

みおな
恋愛
 私の婚約者様は、王女殿下の騎士をしている。  病弱でお美しい王女殿下に常に付き従い、婚約者としての交流も、マトモにしたことがない。  まぁ、好きになさればよろしいわ。 私には関係ないことですから。

融資できないなら離縁だと言われました、もちろん快諾します。

音爽(ネソウ)
恋愛
無能で没落寸前の公爵は富豪の伯爵家に目を付けた。 格下ゆえに逆らえずバカ息子と伯爵令嬢ディアヌはしぶしぶ婚姻した。 正妻なはずが離れ家を与えられ冷遇される日々。 だが伯爵家の事業失敗の噂が立ち、公爵家への融資が停止した。 「期待を裏切った、出ていけ」とディアヌは追い出される。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

処理中です...