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#2 部屋の中
20 何もかもこの霧のせい
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ブライドにもいつも通り接したし、仕事も同じようにこなした。
なんなら俺はむしろ安定した。
あんなに手放せなかった睡眠薬に手をつける必要がなくなったし、安定剤や抗うつ剤に溺れることもなくなった。
頭の中に蔓延る霧は、俺の血液の中に溶け込んでいて、血が流れることで俺は全てを忘れられることを知ったからだ。
薬なんて必要なかった。
俺に必要なのは、小さな小さな凶器だけだ。
俺は正常な人を、今までになく上手く演じた。
こんなにも俺は正しく生きられることを知った。
レビィから解放されたからだろうか、とたまに思う。
ルシファーもジャックさんも、二人ともあんなに苦しんで悲しんで、それなのに俺は早々に涙は枯れて日常に戻って、それは他ならぬ俺自身がレビィの死を歓迎しているからだろうかと思ってしまう。
体は正直なのだ。
俺の心以上に。
自分が何を感じているのか分からないのは、たぶん深い霧の中にいるからだろうと思う。
自分の鼻先すら見えないのに、ましてや胸の中なんて見えるわけがない。
俺はこんなに冷酷な奴だったんだなと、自分に絶望したりもした。
でももう飽きた。
レビィだって、考えるなと俺に言い遺したじゃないか。
だから俺は彼の遺志を汲んで、もう何も考えないようにしよう。それが彼の望みなんだ。
言い訳みたいにそう思っている。
俺が何かできたんじゃないかとか、そういう事はもう考えたくない。
俺のせいで死んだんじゃないかとか、そんなことは思いたくない。
俺なら止められたんじゃないかとか、そうやって責められたくない。
どうせ死ぬなら俺だったら良かったのに、そう思うたびに霧が濃くなる。
日常の記憶すら霧にかき消され、それなのにまるで当然みたいに呼吸してる自分が不思議でならない。
叫び出したいほどの狂気を内に秘めているのに、一筋の赤い糸がそれを容易く縫い留めているのがいっそ可笑しい。
俺はあまりにも冷静で、平静で、それでいて気が狂いそう。
なんなら俺はむしろ安定した。
あんなに手放せなかった睡眠薬に手をつける必要がなくなったし、安定剤や抗うつ剤に溺れることもなくなった。
頭の中に蔓延る霧は、俺の血液の中に溶け込んでいて、血が流れることで俺は全てを忘れられることを知ったからだ。
薬なんて必要なかった。
俺に必要なのは、小さな小さな凶器だけだ。
俺は正常な人を、今までになく上手く演じた。
こんなにも俺は正しく生きられることを知った。
レビィから解放されたからだろうか、とたまに思う。
ルシファーもジャックさんも、二人ともあんなに苦しんで悲しんで、それなのに俺は早々に涙は枯れて日常に戻って、それは他ならぬ俺自身がレビィの死を歓迎しているからだろうかと思ってしまう。
体は正直なのだ。
俺の心以上に。
自分が何を感じているのか分からないのは、たぶん深い霧の中にいるからだろうと思う。
自分の鼻先すら見えないのに、ましてや胸の中なんて見えるわけがない。
俺はこんなに冷酷な奴だったんだなと、自分に絶望したりもした。
でももう飽きた。
レビィだって、考えるなと俺に言い遺したじゃないか。
だから俺は彼の遺志を汲んで、もう何も考えないようにしよう。それが彼の望みなんだ。
言い訳みたいにそう思っている。
俺が何かできたんじゃないかとか、そういう事はもう考えたくない。
俺のせいで死んだんじゃないかとか、そんなことは思いたくない。
俺なら止められたんじゃないかとか、そうやって責められたくない。
どうせ死ぬなら俺だったら良かったのに、そう思うたびに霧が濃くなる。
日常の記憶すら霧にかき消され、それなのにまるで当然みたいに呼吸してる自分が不思議でならない。
叫び出したいほどの狂気を内に秘めているのに、一筋の赤い糸がそれを容易く縫い留めているのがいっそ可笑しい。
俺はあまりにも冷静で、平静で、それでいて気が狂いそう。
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