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人ならざる者
ep28 青い空、白い羽
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エンジニアが言うには、飛行石は、北方に固有の鉱石だそうだ。
その特性には魔法的な性質を含み、単なる科学的な特性ではないらしい。
と、僕はマネージャーからそう聞いた。
「マスター・アイトは、リソーサーと何かあったんですか?」
「何か、って?」
「リソーサーは、明らかに様子が変わりました。以前はクリーナーにつきっきりだったのに、最近はそうでもないですし」
「変ってほどでもないんじゃない? クリーナーが話せるって分かったから、そっとしてるんだよ。今は空を飛んでて、クリーナーがどこかに行っちゃうこともないし」
数日前から、この船は空を飛び、どこかへと航行を続けていた。
どうやら海へ向かっているらしい。大陸から離れて、安全を確保したいのだろう。
僕は、展望デッキで本を読んでいた。
ここは空が綺麗だし、風も通って気持ちがいい。ガーディナーには悪いけど、僕はガーデンよりデッキが好きだ。
ここは風が強くて、それも近頃は潮風が酷い。マネージャーは必要な時だけマイクとスピーカーを出したり仕舞ったりしているけれど、それでも長時間は話せないそうだ。
「それにマネージャーも、最近のリソーサーの方が好きだって言ってたでしょ? なんだっけ。チョコレートアイスクリームより、ココアの方が作りやすいとか、なんとか」
「リソーサーの、妙な拘りが和らいだのは事実ですよ。でも何があったのか、教えてくれたっていいじゃありませんか。それに、私の録画によれば、リソーサーは毎晩、マスターの部屋を訪ねています。何をしているんですか?」
「マネージャーはゴシップ好きだなぁ」
何を言われても、僕は言うつもりはなかった。
自分で自分を戒めて追い詰めるようなことはするべきじゃないと思うけれど、だからと言って、リソーサーのキャラクターを台無しにしたくない。
リソーサーはかなり長い間苦しんでいたみたいで、つい昨晩も、僕の部屋に来て泣いていた。
ぽつぽつと昔のことを話してくれるけど、僕が思っていたよりも、その根は深い。
彼女にとって、『旧バージョン』は、ほとんど全てなのだ。
悪い意味で。
その『旧バージョン』が実際に存在していたのかどうかすらも曖昧だ。
彼女の中でいびつな形に歪み、肥大したそのイメージは、彼女を重く抑えつけ、縛り付けている。
「ゴシップ? ゴシップって、お二人はまさか、秘密の関係!?」
「そういうわけじゃないよ」
「そうですよね、だってリソーサーとマスターでは、ぜんっぜん釣り合いませんから!」
「あはは……そんなことないよ。リソーサーって、可愛いところもあるし」
確かに、マネージャーはリソーサーが女の子だってことを知らないだろうけど。
僕は苦笑いして、話題を変えた。
「もうだいぶ時間が経ったけど、大丈夫? またエンジニアに叱られるんじゃないの?」
「もう! マスターまで小言ですか? 私を遠ざけたいんですか?」
「遠ざけたいわけじゃないけど、この前エンジニアが、マイクが塩だらけになったって、ケアラーに愚痴ってたみたいだよ」
「……ここだけの話、彼女は陰湿なんですよ」
マネージャーは、音量を絞ってそう言った。
ほとんど聞こえないはずなのに、悪口だからかよく聞こえる。
「小声で言っても記録に残るよ」
「すぐに消します……はい、もう削除しました!」
「削除した痕跡は残るんじゃないの?」
「復元は可能ですが、エンジニアはそこまで暇ではありません。ご心配なく!」
マネージャーは元気よく返事した。けれどその声には既に、微妙なノイズがかかっているような、いないような。
「会ったことのない人の悪口は、あんまりしたくないんだけどな。エンジニアは、まだ僕と会ってくれない?」
「彼女は超効率主義ですから、必要にならない限りは、会わないと思いますよ。元々人付き合いが嫌いですし、船のあちこちを、ほぼ休みなくメンテナンスしていて多忙なんです」
「僕が会いに行ってもいいんだけどな……」
「彼女がいるバックヤードは、関係者でない者の侵入を想定していないのです、マスター。今度、マスターに挨拶するように進言してみます」
「だから、わざわざ来てくれなくても、僕が会いに行くってぱ」
そんな風に楽しく話していたら、ピピッ、と小さな警告音が鳴った。
マネージャーはムッとして、いや「むむぅ」と言って、心底残念そうに、「仕事に戻ります」と言い、沈黙する。
それから、静かになったデッキで、僕は再び本を読み始めた。
「……ん?」
しかし、それから間もなく、気配を感じて顔を上げると、そこには、一羽のハトがいた。
いや正確にはハトではないんだけど、白くて綺麗な鳥で、あの平和の象徴に似ているので、僕はハトと呼んでいる。
つまり何かっていうと、僕はその鳥に見覚えがあった。
「……」
僕が本を置いて腕を差し出すと、ハトは僕の腕に留まり、毛づくろいを始める。
僕はその足に括られた筒を抜いて、中から手紙を取り出し、広げてみた。
---
緋色・ブラッド様
勇者様が王城を去ってから、とても長い時間が過ぎました。
愚かな民草は既に勇者様の名を忘れ、続く戦争に不安を覚え、些細なことに不満ばかり訴え、毎日うんざりしています。
さて、さっそくですが、勇者様に朗報があります!
喜んでください、勇者様が再び我が国に貢献できる方法について、召喚士が素晴らしい方法を考えてくれました。
どうか、遠慮なさらないでください。確かに勇者様は帝国に反逆した大罪人ですが、もう十分に罪を償いました。それに、その功績は本物ですから、これは当然の権利です。
あとは全てこちらで上手くやります。疾風の翼で、すぐにお迎えに上がります。
このハトは、難しい仕事をやり遂げてくれたようです。よく褒めてあげてください。
そして新たに、素晴らしい仕事を与えてください。
骨の勇者 白亜・ボーン
---
「……」
僕は手紙を読み終わり、苦笑いして、白いハトの頭を撫でた。
うーん。どうしようか、この手紙。
「戻って来い、ってことだよね」
もちろん戻るつもりはない。
まともな扱いはされないということは分かり切っているし、もう一度こんなクソダサい名前を名乗るなんて、寒気がする。
だからといって、強硬に無視したり撥ねつけたりすれば、彼らがこの船を攻撃する口実を与えてしまう。
いやこの文面だと、あくまで僕の帰還を促してるだけだし、僕に帰るつもりがないと分かれば、案外あっさりと手を引いてくれたりするのかもしれない。
(帝国のことだし、あんまり期待はできないけど)
ひとまず僕はハトの頭をよく撫でてから、そっと船内に引き入れた。
「あっ、マスター! 大きな虫が付いていますよ! 変な生命反応があります!」
「虫? ……ああえっと、この子は、手紙を運んでくれたんだよ。返事をしないといけないから、連れて来たんだ。勝手に入れちゃってごめんね」
「トリで手紙? 帝国には郵便制度がないのですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど……骨の勇者の、スキルみたいなものかな……うん。あの子は空を飛ぶものに好かれるんだ。天使ってホント、見る目がない。……すぐに返事を書いて、外に出すよ」
「私は構いませんが、ガーデンには入れないようにしてくださいね。ガーディナーが怒り狂います。遺伝子学的に問題があるのです」
「そうするよ」
僕は空が飛べないことで有名だったけど、逆に骨の勇者は、空を飛ぶのが得意だ。
美しい銀髪と、澄んだ空みたいな青い瞳をした勇者。
空を駆ける様はまるで天使、その美しさから人気が高い。
彼女はいつでも、いつも僕にくっついてきた。
周囲は僕と白亜を友人だと思っていたらしい。それもかなり親密な。
確かに一緒に居ることは多かったんだけど、僕は白亜を友達と思ったことはない。そう思おうと努力したことはあるけど。
でも恐らく、それは向こうも同じだ。そして白亜は、僕を友人として認めようとしたことなんて一度もない。
白亜はとても純粋で、綺麗で。
「ねぇマネージャー、マネージャーって、ビジネス文書とかよく書いてた?」
「私は生成AIではありませんが、そういった質問を受けた時のために、テンプレートの知識はありますよ! マスター、ラブレターの様式をお探しですか?」
「ラブレターじゃないよ。今、帝国から『帰還しろ』って手紙をもらったんだけど、お断りの返事を書きたいんだ。できるだけ角が立たないように」
「帝国から?」
マネージャーは、さすがに少し不安そうな声音で言った。
「ああうん、お祈りメールって奴だね。今後のご活躍をお祈り申し上げます、いや、まぁ祈ってないんだけど。できれば滅びてほしいね。あんな国。いやそれはいいんだ、そういうことはうまく隠して、なんていうか、無難な文章を考えてくれない?」
僕が自分で考えちゃうと、恨みつらみばかりが連なりそうで。
冗談めかしたはずの僕の声は、思ったよりも低かった。
別に帝国を恨んではなかったはずだけど、決して好きなわけじゃない。
……ああいや、うん。
やめよう。自分にすら取り繕うのは。リソーサーに、偉そうなことを言えないじゃないか。
「……お戻りにならなくていいんですか?」
「戻らないよ」
帝国なんて大嫌いだ。
あんなに気持ち悪くて、居心地悪い場所はない。
「生成AIを使用するのは、非常にローコストで効率的な方法ですが、マスターはより高級なサポートを受けられることをお伝えします。実はリソーサーは、こういった作業について、非常に高いレベルで精通しています。彼女なら、『生の文章』を書いてくれるかもしれません。ご依頼されてみてはいかがですか?」
「……そうだね、聞いてみようかな。リソーサーはどこにいるの?」
「オフィス区にいます」
「なら行くよ。案内をお願いしてもいい?」
「もちろんです、マスター!」
そもそも、僕を先に追放したのは向こうなんだから、僕が戻る義理なんてない。
心からの親切でこう言っているのかもしれないけれど、それならなお悪い。
できることなら、帝国との縁はこれっきりにして、このままずっとこの空で、彼女達と一緒に生きられればそれが一番だ。
しかし、そんな僕の想いとは裏腹に、船中に響き渡るような、ものすごい音量の警告音が鳴り響いた。
その特性には魔法的な性質を含み、単なる科学的な特性ではないらしい。
と、僕はマネージャーからそう聞いた。
「マスター・アイトは、リソーサーと何かあったんですか?」
「何か、って?」
「リソーサーは、明らかに様子が変わりました。以前はクリーナーにつきっきりだったのに、最近はそうでもないですし」
「変ってほどでもないんじゃない? クリーナーが話せるって分かったから、そっとしてるんだよ。今は空を飛んでて、クリーナーがどこかに行っちゃうこともないし」
数日前から、この船は空を飛び、どこかへと航行を続けていた。
どうやら海へ向かっているらしい。大陸から離れて、安全を確保したいのだろう。
僕は、展望デッキで本を読んでいた。
ここは空が綺麗だし、風も通って気持ちがいい。ガーディナーには悪いけど、僕はガーデンよりデッキが好きだ。
ここは風が強くて、それも近頃は潮風が酷い。マネージャーは必要な時だけマイクとスピーカーを出したり仕舞ったりしているけれど、それでも長時間は話せないそうだ。
「それにマネージャーも、最近のリソーサーの方が好きだって言ってたでしょ? なんだっけ。チョコレートアイスクリームより、ココアの方が作りやすいとか、なんとか」
「リソーサーの、妙な拘りが和らいだのは事実ですよ。でも何があったのか、教えてくれたっていいじゃありませんか。それに、私の録画によれば、リソーサーは毎晩、マスターの部屋を訪ねています。何をしているんですか?」
「マネージャーはゴシップ好きだなぁ」
何を言われても、僕は言うつもりはなかった。
自分で自分を戒めて追い詰めるようなことはするべきじゃないと思うけれど、だからと言って、リソーサーのキャラクターを台無しにしたくない。
リソーサーはかなり長い間苦しんでいたみたいで、つい昨晩も、僕の部屋に来て泣いていた。
ぽつぽつと昔のことを話してくれるけど、僕が思っていたよりも、その根は深い。
彼女にとって、『旧バージョン』は、ほとんど全てなのだ。
悪い意味で。
その『旧バージョン』が実際に存在していたのかどうかすらも曖昧だ。
彼女の中でいびつな形に歪み、肥大したそのイメージは、彼女を重く抑えつけ、縛り付けている。
「ゴシップ? ゴシップって、お二人はまさか、秘密の関係!?」
「そういうわけじゃないよ」
「そうですよね、だってリソーサーとマスターでは、ぜんっぜん釣り合いませんから!」
「あはは……そんなことないよ。リソーサーって、可愛いところもあるし」
確かに、マネージャーはリソーサーが女の子だってことを知らないだろうけど。
僕は苦笑いして、話題を変えた。
「もうだいぶ時間が経ったけど、大丈夫? またエンジニアに叱られるんじゃないの?」
「もう! マスターまで小言ですか? 私を遠ざけたいんですか?」
「遠ざけたいわけじゃないけど、この前エンジニアが、マイクが塩だらけになったって、ケアラーに愚痴ってたみたいだよ」
「……ここだけの話、彼女は陰湿なんですよ」
マネージャーは、音量を絞ってそう言った。
ほとんど聞こえないはずなのに、悪口だからかよく聞こえる。
「小声で言っても記録に残るよ」
「すぐに消します……はい、もう削除しました!」
「削除した痕跡は残るんじゃないの?」
「復元は可能ですが、エンジニアはそこまで暇ではありません。ご心配なく!」
マネージャーは元気よく返事した。けれどその声には既に、微妙なノイズがかかっているような、いないような。
「会ったことのない人の悪口は、あんまりしたくないんだけどな。エンジニアは、まだ僕と会ってくれない?」
「彼女は超効率主義ですから、必要にならない限りは、会わないと思いますよ。元々人付き合いが嫌いですし、船のあちこちを、ほぼ休みなくメンテナンスしていて多忙なんです」
「僕が会いに行ってもいいんだけどな……」
「彼女がいるバックヤードは、関係者でない者の侵入を想定していないのです、マスター。今度、マスターに挨拶するように進言してみます」
「だから、わざわざ来てくれなくても、僕が会いに行くってぱ」
そんな風に楽しく話していたら、ピピッ、と小さな警告音が鳴った。
マネージャーはムッとして、いや「むむぅ」と言って、心底残念そうに、「仕事に戻ります」と言い、沈黙する。
それから、静かになったデッキで、僕は再び本を読み始めた。
「……ん?」
しかし、それから間もなく、気配を感じて顔を上げると、そこには、一羽のハトがいた。
いや正確にはハトではないんだけど、白くて綺麗な鳥で、あの平和の象徴に似ているので、僕はハトと呼んでいる。
つまり何かっていうと、僕はその鳥に見覚えがあった。
「……」
僕が本を置いて腕を差し出すと、ハトは僕の腕に留まり、毛づくろいを始める。
僕はその足に括られた筒を抜いて、中から手紙を取り出し、広げてみた。
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緋色・ブラッド様
勇者様が王城を去ってから、とても長い時間が過ぎました。
愚かな民草は既に勇者様の名を忘れ、続く戦争に不安を覚え、些細なことに不満ばかり訴え、毎日うんざりしています。
さて、さっそくですが、勇者様に朗報があります!
喜んでください、勇者様が再び我が国に貢献できる方法について、召喚士が素晴らしい方法を考えてくれました。
どうか、遠慮なさらないでください。確かに勇者様は帝国に反逆した大罪人ですが、もう十分に罪を償いました。それに、その功績は本物ですから、これは当然の権利です。
あとは全てこちらで上手くやります。疾風の翼で、すぐにお迎えに上がります。
このハトは、難しい仕事をやり遂げてくれたようです。よく褒めてあげてください。
そして新たに、素晴らしい仕事を与えてください。
骨の勇者 白亜・ボーン
---
「……」
僕は手紙を読み終わり、苦笑いして、白いハトの頭を撫でた。
うーん。どうしようか、この手紙。
「戻って来い、ってことだよね」
もちろん戻るつもりはない。
まともな扱いはされないということは分かり切っているし、もう一度こんなクソダサい名前を名乗るなんて、寒気がする。
だからといって、強硬に無視したり撥ねつけたりすれば、彼らがこの船を攻撃する口実を与えてしまう。
いやこの文面だと、あくまで僕の帰還を促してるだけだし、僕に帰るつもりがないと分かれば、案外あっさりと手を引いてくれたりするのかもしれない。
(帝国のことだし、あんまり期待はできないけど)
ひとまず僕はハトの頭をよく撫でてから、そっと船内に引き入れた。
「あっ、マスター! 大きな虫が付いていますよ! 変な生命反応があります!」
「虫? ……ああえっと、この子は、手紙を運んでくれたんだよ。返事をしないといけないから、連れて来たんだ。勝手に入れちゃってごめんね」
「トリで手紙? 帝国には郵便制度がないのですか?」
「いや、そういうわけじゃないけど……骨の勇者の、スキルみたいなものかな……うん。あの子は空を飛ぶものに好かれるんだ。天使ってホント、見る目がない。……すぐに返事を書いて、外に出すよ」
「私は構いませんが、ガーデンには入れないようにしてくださいね。ガーディナーが怒り狂います。遺伝子学的に問題があるのです」
「そうするよ」
僕は空が飛べないことで有名だったけど、逆に骨の勇者は、空を飛ぶのが得意だ。
美しい銀髪と、澄んだ空みたいな青い瞳をした勇者。
空を駆ける様はまるで天使、その美しさから人気が高い。
彼女はいつでも、いつも僕にくっついてきた。
周囲は僕と白亜を友人だと思っていたらしい。それもかなり親密な。
確かに一緒に居ることは多かったんだけど、僕は白亜を友達と思ったことはない。そう思おうと努力したことはあるけど。
でも恐らく、それは向こうも同じだ。そして白亜は、僕を友人として認めようとしたことなんて一度もない。
白亜はとても純粋で、綺麗で。
「ねぇマネージャー、マネージャーって、ビジネス文書とかよく書いてた?」
「私は生成AIではありませんが、そういった質問を受けた時のために、テンプレートの知識はありますよ! マスター、ラブレターの様式をお探しですか?」
「ラブレターじゃないよ。今、帝国から『帰還しろ』って手紙をもらったんだけど、お断りの返事を書きたいんだ。できるだけ角が立たないように」
「帝国から?」
マネージャーは、さすがに少し不安そうな声音で言った。
「ああうん、お祈りメールって奴だね。今後のご活躍をお祈り申し上げます、いや、まぁ祈ってないんだけど。できれば滅びてほしいね。あんな国。いやそれはいいんだ、そういうことはうまく隠して、なんていうか、無難な文章を考えてくれない?」
僕が自分で考えちゃうと、恨みつらみばかりが連なりそうで。
冗談めかしたはずの僕の声は、思ったよりも低かった。
別に帝国を恨んではなかったはずだけど、決して好きなわけじゃない。
……ああいや、うん。
やめよう。自分にすら取り繕うのは。リソーサーに、偉そうなことを言えないじゃないか。
「……お戻りにならなくていいんですか?」
「戻らないよ」
帝国なんて大嫌いだ。
あんなに気持ち悪くて、居心地悪い場所はない。
「生成AIを使用するのは、非常にローコストで効率的な方法ですが、マスターはより高級なサポートを受けられることをお伝えします。実はリソーサーは、こういった作業について、非常に高いレベルで精通しています。彼女なら、『生の文章』を書いてくれるかもしれません。ご依頼されてみてはいかがですか?」
「……そうだね、聞いてみようかな。リソーサーはどこにいるの?」
「オフィス区にいます」
「なら行くよ。案内をお願いしてもいい?」
「もちろんです、マスター!」
そもそも、僕を先に追放したのは向こうなんだから、僕が戻る義理なんてない。
心からの親切でこう言っているのかもしれないけれど、それならなお悪い。
できることなら、帝国との縁はこれっきりにして、このままずっとこの空で、彼女達と一緒に生きられればそれが一番だ。
しかし、そんな僕の想いとは裏腹に、船中に響き渡るような、ものすごい音量の警告音が鳴り響いた。
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