幼女剣王KUSARI ~俺が幼女になっちゃった!転生ドルオタの異世界無双!俺、異世界でアイドルになります!

ZUZU

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俺が幼女になっちゃった!

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  俺は、高橋丈二。
 どこにでもいる、32歳の会社員だ。

 いま俺は、殴られてる。

 俺はドルオタ――アイドルオタクで、平均年齢12歳以下の、ジュニアアイドルのグループばかりを追いかけている。人呼んで『ロリータ高橋』。気付けばネットにアンチも存在する、そこそこ有名なオタになっていた。

 その俺がなぜ殴られてるかというと、女の子を助けるためだ。無理やり車に連れ込まれそうになってるところを見つけて、助けに入った。車内へと引っ張られるのを、うずくまって耐えてる彼女に、俺は覆いかぶさって助けを呼んだ。だがまだ助けは来てない。それでいま、ボコボコにされている。

 彼女を襲ってた連中は、みんな俺より若い。どれも、アイドル現場で見たことのある顔だった。向こうも、俺のことを知っていた。「こいつ高橋じゃね?」「ロリータ高橋?」「てめえロリコンだろ!」「邪魔すんじゃねーよ!」「守備範囲と違うだろうが!」

 確かに、彼らの言うとおりだった。いま俺が助けようとしてる彼女は、アイドルだ。だがプロフィールが正しいなら27歳。だから俺の守備範囲ではないし、彼女を目当てにイベントに行ったりなんてことも、もうずっと無くなってた。

 だったら、どうして……

「なに出しゃばって来てんだよ!てめえだって、同じじゃねーか!俺らと同じ、キモいドルオタだろうが!」「しかもロリコン!」「恥を知れ!」

 違う。そういうのじゃない。俺は、そういうのじゃないんだ。意識が遠ざかっては、また戻る。息が、肩から出てるような感じ。指が変な方向に曲がってるのが見えるけど、その意味がわからない。確実に、俺の中から何かが失われつつあって、でも逆に、残った方の何かは明確になっていく。

「おれは……おれは…おで……おでは………」
「ヤリてーんだろ!? てめえだって、繋がりたいんだろ!?」

 いま分かった。
 俺は、そういうのじゃない。
 俺は、アイドルとヤりたいとか、そういうのじゃないんだ。

 俺は――

「おでは……おでは………小さな……女の子………に…………」

――しかし俺の耳に届く俺の声は、そこで途切れた。

 ●

 俺は、死んだのだった。

 ●

 辺りを見回すと、真っ白だ。
 そして眼の前に立ってるのは、美しい女性。

 まるで事前に言い聞かされてたみたいに、俺は理解していた。
 これからここで行われるのは、一種の選別なのだと。

 俺の前や後ろを、歩いてく姿がある。
 どれもまっ白で、向かう方向はてんでばらばら。

 立ち止まってるのは、俺だけだった。

 それで、俺は気付く。
 選別は、既に終わってるんじゃないかって。
 女性が言った。

「これから、あなたを転生させます。死の間際、あなたは自らの真に欲する想いにたどり着きました。その想いの強さ、新奇性、タイミングのマーヴェラスさを鑑み、我々はあなたに、新たな使命と人生を与えることにしました」

 俺が死ぬ間際に抱いた夢を、転生して叶えさせてくれるってことか。

「あなたが転生する先は、とある世界のとある王国。10歳の秋、あなたは前世の記憶を取り戻ことになります。その際同時に、あなたは自らの夢が叶っていることに気付くでしょう。心しておきなさい。我々があなたに与える使命は、あなたの夢ではなく、夢が叶ったその後にあるのだということを」

 ぶつり。
 女性が消える。
 何もかもが、真っ黒になる。


 ●

 そうして、俺は転生した。

 ●

 記憶が戻る瞬間は、奇妙なものだった。

 それまでの――10歳の秋までの記憶は、断片的なものでしかなかった。子供の記憶というもの自体が、そういうものなのだろう。短い動画や写真、音声がばらばらに存在していて、ひとつに纏めたところで、上映時間は20分にも満たないに違いない。

 だからか、これまで誰かのものだった人生を乗っ取ってしまったというような罪悪感は、まるで無かった。たとえるなら、転生して寝ぼけてる間に10年経ってたって、そんな感じだった。

 俺は、木剣を振り下ろす。

「ゲシャァッ!」

 頭を潰されて、ゴブリンが斃れる。
 その流れで、更に奥のゴブリンも叩いた。
 斃れる。
 これで、残りは4体。

 奇妙なことだ。

 場所はダンジョン。
 ゴブリンに囲まれた、こんな状況で記憶を取り戻した。

 ピンチの真ん中で目が覚めたようなものなのに、俺は、まったく慌ててなかった。こっちの人生で身に着けた――つまり、前世で習った憶えの無い剣術もそのまま使えて、記憶を取り戻す前と後とが、まったく問題なしに繋がっている。

 どんな材質で出来てるのか、木剣は、どれだけ強くゴブリンを叩いても折れたりへこんだりすることが無かった。ただ、打撃の直後の一瞬だけ表面が銀色に輝き、それが消えると、付着した緑色の血液や肉片が、きれいに取り払われてる。

 何度めかに現れた、銀色に。
 一瞬だけ、顔が映った。
 俺の顔が。

 少女――いや、幼女。

 美しい幼女の顔だった。
 それが、いまの俺の顔だった。

 俺はさとった。

(ああ――夢は、叶ったんだ!! あの女性ひとの言った通り)

 幼女になりたい。
 美しい、小さな女の子になりたい。

 それが、人生の最後で気付いた、俺の本当の夢だった。

 そして、思い出す。

 あの女性は言った。

『心しておきなさい。我々があなたに与える使命は、あなたの夢ではなく、夢が叶ったその後にあるのだということを』

 つまりはだ。

 小さな女の子として、いかに生きるか。

 新たな人生での使命は、そこにあるってことなのだった。
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