幼女剣王KUSARI ~俺が幼女になっちゃった!転生ドルオタの異世界無双!俺、異世界でアイドルになります!

ZUZU

文字の大きさ
2 / 57

幼女の毎日

しおりを挟む

 ゴブリンを斃し――

 後ろを向くと、そこには老人が立っていた。

 一言で表現するなら、デカくて汚い。

 前世で会ったら、きっとホームレスと思っただろう。伸ばし放題の白髪を雑に後ろでまとめ、ガビガビになったシャツとズボンに、革鎧の肩当てを着けている。そして靴は、壊れる度に布と自家製の糊で補修を重ねた結果、巨大なかさぶたみたいになっていた。

 両手には、俺が持ってるのと同じ木剣。
 というか、実際は棍棒に近い代物なのだが。

 簡単にいうと、この爺さんは俺の保護者だ。物心付く前から、俺は爺さんとダンジョンの洞窟で暮らしている。そしていつからか俺は、木剣を手にダンジョンを探索し、魔物と戦うようになっていた。まるで、それが子供の正常な成長であるかのごとく。

 爺さんの名はムート。
 偽名くさいが、冒険者ギルドにはそれで登録されている。

 そして、俺の名は――

 クサリ。

――それが、この人生での俺の名前だ。もっとも、爺さんが付けたわけではない。最初は『おい』とか『おまえ』だった。しかし、ダンジョンに出入りする冒険者たちが俺のことを『クサリ』と呼び始めると、そのうち爺さんも『クサリ』と呼ぶようになった。

 クサリ――名前の理由は、見たまんまだ。

 俺の首には、革の首輪が着けられている。首輪には鎖が着けられ、その先端が地面を擦り、いつもじゃらじゃらと鳴っている。単純にそれを見て、鎖――クサリと、みんなそう呼んでいるのだった。

――と、またゴブリンが現れた。

 といっても、姿はまだ見えない。向こうはまだこっちに気付いてないが、あと5メートル進んで角を曲がれば、正面から顔を合わせることになる。そんなことが分かるのは、鎖が教えてくれるからだ。

 振動とか、それだけじゃなく。

 鎖は、空気や魔力の流れやそこに溶け出した感情や意志。そういった諸々の情報を地面から拾い上げ、俺に教えてくれる。鎖を着けてたからそうなったのか、そうなるために鎖を着けさせられてたのか、どっちかは分からないが、確かなのは、これがとんでもなく役に立つってことだ。

 姿勢を低くして、曲がり角の陰に身をひそめる。ゴブリンたちが現れたところで、その足元に転がり、目に映る脛を木剣で叩きまくった。

「「「~~~~~~~ッッッッ!!」」」

 跳ね起きながら、何匹いるか見定める。あらかじめ鎖で知ってた通り、五匹だった。そのうち三匹は脛を砕かれ蹲ってる。その頭を叩き割って回りながら、残った無事な二匹との距離を整えた。

 二匹のうち一匹は、メイジゴブリン。右手に魔力を溜めている。しかし俺が、間にもう一匹が入るように位置を取ってるから、魔法を放つことが出来ない。

 鎖は、こんな場面でも役立つ。

 メイジゴブリンは、立ち位置をずらそうと考えている。仲間を避け、魔法を放つためだ。何故分かるか? 鎖が教えてくれる。これによって俺は、相手の動きの初動を抑えることが出来る。

 たとえば、こんな感じで。

 位置を変えるべく踏み出そうとしたメイジゴブリンを、先回りして叩く。真正面から、木剣で。意識の空白を衝かれたメイジゴブリンは、それをまともに頭頂で受け、木剣は頭蓋を断ち割り、奴の鼻の位置まで潜り込んだ。

 相手の意識を読んで、その後どう動くかは、稽古で叩き込まれている。乱取りとかじゃなく、型稽古だ。爺さんが毎朝やってるのを、最初は真似して遊んでた。爺さんは、無視。だがそのうち、間違えると殴られるようになった。殴られた理由は、教えてもらえない。

 型稽古で殴られないようになると、今度はダンジョンの探索で先頭を任されるようになった。そしてやはり、ヘマをすると殴られる。いきなり後ろから、ぽかりだ。

 しかし最近は、探索でもめったに殴られなくなった。

 そのかわり、新たな仕事を任されるようになった。
 道場破りの撃退だ。

 時折、ダンジョンの棲家を訪ねてくるやつらがいる。
 爺さんに弟子入りを願ったり、あるいは試合を申し込んでくる連中だ。

 そういう奴らの相手を、俺がさせられるようになった。負けたことは、一度もない。怪我すらもしない。俺みたいな幼女が相手で、最初は怒りや戸惑いを浮かべてたそいつらの大半が、剣を持って俺と退治した瞬間、冷や汗をかきだす。

 そして俺は、いつもの通りそいつらを叩きのめし、これもいつもの通り、爺さんに指示されたセリフを、教わった通り、そいつらに向かって言うのだ。

「おじさん、何歳から剣を習ってるの? 週に何日稽古してるの? あのね。子供の頃から毎日稽古してないと、強くはなれないんだよ?」

 爺さん、性格悪すぎだろ。

 さて、残った1匹だ。
 やはり攻撃の初動を抑えて、横っ面への一撃で仕留めた。

 しかし――ぽかり。後ろから、殴られた。久しぶりの、爺さんによる叱責だ。どうやらいまの攻防で、俺は何かを間違ってしまったらしい。理由は教えてもらえない。

 さて、一体どこが悪かったのか?

 首を捻りつつ、ゴブリンの死体から素材を採取し、それで今日の探索は終わった。棲家に帰って飯を食い、寝て起きたら飯を食って稽古をし、また探索に出かける。

 幼女『クサリ』としての俺は、こんな毎日を過ごしている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...