幼女剣王KUSARI ~俺が幼女になっちゃった!転生ドルオタの異世界無双!俺、異世界でアイドルになります!

ZUZU

文字の大きさ
3 / 57

我が家はシェルター

しおりを挟む

 洞窟の棲家を、どう表現するか?

 記憶を取り戻す前の幼女おれには、そのための言葉が無かった。
 でもいまなら言える。

『どこもかしこも蛍光灯みたいな艶に包まれた、体育館くらいの広さの空間』

 と。

 もちろん、二人で住むには広すぎるし、他に住人がいるわけでもない。
 確かに、住むだけだったらそうだろう。

 棲家のほとんどは、採取した素材の加工場として使われていた。

 探索から持ち帰った魔物の皮や肉を、干したり燻製にしたりするには、これくらいの広さが必要だった。主に換気のため。そしてメインで扱ってる素材の『ダンジョン苔』が、乾燥にやたらと場所を取るためだった。

 棲家の中央には、どこで入手したのか分からない木の板が、ずらりと並んでいる。そこへ刃の潰れたナイフで、採取したダンジョン苔を塗りつけていく。その状態で、一週間放置。そうすると乾燥してパサパサになるから、こそげ取り、袋に詰めて冒険者ギルドへと売りに行く。

 これだけで、並の冒険者の数カ月分くらいの収入になるらしい。

 帰宅したら、まずはそういった素材への処理を行いながら干し肉をかじる。それから魔物の臓物の煮込みで腹を満たし、これもダンジョンの素材で作った酒で口をゆすいで横になる。

 そして、眠る。

 朝になったら、目が覚める。

 洞窟の中でどうして朝が分かるかというと、冒険者たちがダンジョンに入ってくるからだ。常に地面から伝わってくる冒険者たちの足音が、朝になると、入口からダンジョンの奥へと向かうものばかりになるのだった。

 今日は、いつもより早く目が覚めた。

 お気付きかもしれないが、前世の記憶を取り戻してからここまでで、俺と爺さんは、いっさい言葉を交わしていない。ここまでの人生の記憶を辿ってみても、会話らしい会話は、ほとんど無かった。

 きっと、今日もそんな一日になるのだろう――と思ったら違った。

 鎖が地面から拾ってくる振動に、足音以外のものが混ざっていた。
 憶えがあった。
 こういう振動は、これまで何度も拾ったことがある。

 場所は――

 俺は、棲家を出た。
 棲家の入り口から、五十メートルも離れてない曲がり角。
 そこに、男が倒れていた。
 死にかけの人間、特有の鼓動を鳴らして。

(『囀り石さえずりいし』……か)

 男は、明らかにこの棲家を目指していた。
 ひと目でわかった。

 男の手には、ネックレスに仕立てた赤い宝石が握られている。
囀り石さえずりいし
 冒険者ギルドで販売してる、緊急時用の魔導具だ。

 ダンジョンに棲んでるのは、俺と爺さんだけではない。
 冒険者ギルドの許可を貰えば、誰でもダンジョンに棲むことが出来る。
 許可無しで棲むことも出来るが、しかしその場合、魔物と間違って襲われたりしても泣き寝入りしか出来なくなる。

 許可を得る条件は、棲家を冒険者のシェルターとして提供し、遭難者の救護に協力すること。
 そして『囀り石』とは、何かあった際に起動すると、一番近くにあるシェルターまで案内してくれる魔道具なのだった。

 とりあえず棲家に引きずってくと、痛みで目を覚ましたのか、男が呻いた。

「ゴブリンに襲われて……灯りを叩き落とされて……混乱……失態……まんまと……お嬢さんが、ミシェールと……ミシェールと……」

『囀り石』は、いったんシェルターまで着くと、逆に今度は、起動された場所へのルートを案内してくれる。この男の場合だと、ゴブリンに襲われ『お嬢さん』とはぐれた場所まで案内してくれるというわけだ。

 爺さんも、既に起きてた。

 男を引きずり入ってくる俺を見ながら、干し肉をかじり、粥をすすっている。手伝おうとする気配はゼロ。しかし、もしゃもしゃと食事をするその姿に、俺はファンシーグッズ的な可愛さを感じざるをえない。サンリオの泡沫キャラクター的なといってもいい。加えていうなら、記憶を取り戻す前の幼女おれも、どうやら同じように感じてたらしかった。

「ど、ど、どう……」

 男を指さしながら、俺は爺さんに話しかける。
 爺さんが頷く。
 俺は、男に訊ねた。

「も、もう……ひとつ、ある、だ、ろ?」

 男は、何を訊かれてるのか分からないって顔だった。

「お、嬢さん、はぐれたら、ここ、まる、困る? 魔、導具、ある、ある、ある……だろ、はず、あ、あある、ある、ある、はず」

 語彙力が足りない。それ以前に、会話の経験値が少なすぎて上手く話せない。お爺ちゃんっ子というのは、周囲の子供とボキャブラリーが合わなくて友達が出来にくかったりするものだが、この人生の俺といったら、更にそのお爺ちゃんというのが殺伐としたレベルで無口なんだから最悪だ。

 それでも何とか伝わったらしいのは、男が真摯で優秀だったからだろう。

「ここ……ここだ」

 男が、顎で自分の胸元を指す。
 俺は、そこに手を突っ込んだ。
 すぐに、見つかった。

「『再遇の貝』……だ」

 男の胸元から現れたのは魔導具――ペンダント仕立ての宝石というのは『囀り石』と同じだが、こちらは貝殻の形に加工されている。護衛が主人を見失った時のための魔導具で、対になった片方ずつを主人と護衛とで持つ。そして起動すると、もう片方のある場所まで案内してくれる。

『囀り石』と『再遇の貝』。

 爺さんが『再遇の貝』を手に取って――ぐい。
 粥の入った椀を、俺に差し出した。
 それを受け取って、俺は粥をすする。
 反対の手には『囀り石』があった。

「…………」

 そんな俺たちの様子を、男がどこか非難がましい目で見てる。
 懇願とか焦りとか、いろいろ混ざった結果なんだろう。
 だがそんな目で見られることに、俺は何も感じない。

 これから『お嬢さん』を助けに行く。
 そのためには、まず腹ごしらえが必要。

 そういう認識が、まず先に立つ。
 そういう人生を、幼女おれは送ってきたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...