幼女剣王KUSARI ~俺が幼女になっちゃった!転生ドルオタの異世界無双!俺、異世界でアイドルになります!

ZUZU

文字の大きさ
11 / 57

彼女は龍皇

しおりを挟む

 最下層で、俺たちを出迎えた美女。

 どこか、ギルマスと似ていた。理知的な表情と細身な身体つきは正反対だが、全体として柔らかそうなところというか、もっと、はっきり言ってしまうなら――

「あのね、ムート……もう何年ぶりになるのかしら。私ね、ムート。私ね……」

――うん。この女性ひとも、爺さんに惚れてる。

「ああ、もう……私、どうしちゃったのかしら。あなたにお話したいこと、たくさんあるのに――」

 頬を赤らめて、非常に分かりやすくもじもじし始めた彼女だったのだが、改めて俺を見ると、すっと醒めた顔になった。

「で、この娘が例の?」

「ああ、あれ・・だ」

 美女と爺さんが、俺を見た。
 俺は訊いた。

「だ、だで? ご、こ、ごの、ひ、ひ、ひ……ひっと」

 本当に、この女性ひと、誰なんだろう?
 こんなところにいる時点で、只者じゃないのは確定なわけだけど。

「え……言ってなかったの?」

 どん引きだよって顔になる美女に頷いて。
 爺さんが言った。

「龍皇だ」

 龍皇――ってことは、あれか。
 あの龍皇か。

 なるほど。
 ダンジョンの最奥に棲んでるって聞くものな。

 龍にもいろいろあるが、最低レベルの種では単なる翼の生えたトカゲに過ぎない。それが上級種になるにつれ火を吹き、空を飛び、魔法を使い、人間の言葉を理解するようになり……と様々な能力が備わっていく。ざっくり表現するなら、猫又のトカゲ版とでもいったところだろうか。

 龍皇とは、その頂点にある存在だ。

 冒険者たちの話だと、ダンジョン最奥の寝ぐらから出てくることはまずなく、その姿を見たことがある者は、いまやエルフにしかいないらしい。最後に人前に出てきたのがあまりに昔過ぎて、目撃者はみんな死んでしまったのだ。

 その龍皇が、いま俺の目の前にいる。
 これってもしかして、人類レベルで貴重な体験なんじゃないだろうか。

 でも――爺さんが龍皇と知り合い?
 っていうか、龍皇に惚れられてる?
 っていうかいうか、龍皇が女性?
 っていうかいうかいうか、人間?

「ふんっ!」

 とりあえず、腹式呼吸で自分を落ち着けた。
 そのさまの、どこがツボに入ったのか。

「か、可愛い……なにこの娘、可愛いぃ~~~」

 俺を見る龍皇の目に、爺さんに向けるのとはまた別種の熱っぽさが灯った。
 再び頬を赤らめながら、

「ちょ、ちょちょ、ちょっと。ね? ちょっとでいいから。ちょっとで」

と、指を蠢かしながら近付いてきた。ワキワキっていうよりは、そよそよって感じの手付きなのだが、これはこれで不気味だ。

「抱かせて? 抱っこ。抱っこ。ね。ちょっとでいいから。ね?」
「だ、だだ、め、だめ」
「いいじゃないの、いいじゃないの~」
「!!」
「ほ~ら、捕まえた~」

 後ろから抱きかかえられ、俺は愕然、そして呆然となった。

 近付いてくる龍皇の動きを、いつもやってる通り『鎖』で読み、避けるつもりだった。しかし、伝わってくる情報が一瞬で乱れ、逆に、俺の動きを静止させたのだった。

『鎖』に誤情報を送った?
 いや、龍皇が行ったのはそれ以上。
『鎖』を通じて、俺の身体のコントロールを奪い取ったのだ。

「くんかくんか。この雄牝キッス的というか、野趣に溢れた香りがなんというか、もう、もう……」

 そんな変態に首筋の臭いを嗅がれながら、俺は思っていた。
 この女性ひとは、確かに『龍皇』だと。

 少なくとも、いまこの瞬間も俺の生殺与奪権を握っている、いつでも俺を殺すことの出来る、そういう存在――それほどの、圧倒的な強者なのだと。

「頼んだ……」

 爺さんはといえば、それだけ言って、奥の方へと消えた。

「ムート……私も、後で行っていい?」

 龍皇が訊く。
 返事は無かった――はずなのだが。

「も、もう……ムートったらあ。任せなさい! ご要望通り、しっかり、私がクサリちゃんを教育しちゃうんだからあ」

 と、はしゃぎ始める。
 そんな龍皇かのじょに、俺は訊ねた。

「きょ、ぎょお……い、いぐ?」

「あら、それも聞いてなかったのね。まあ、誰に会いに行くのかも教えてもらってなかったんだから、当然といえば当然でしょうね。ふふ、しょうがない人……クサリちゃん。あなた、学校に入るのよね」

「は、ばい、る」

「ムートの見立てだと、剣技と魔力は問題なし。学力的にも優秀。授業にはついていけるはず。ただし――」

 ああ、なるほど。
 なんとなく、話が見えてきた。

「――ただし、他人との会話能力が低すぎる。コミュ障という程ではないが、会話の経験値が低すぎるせいで滑舌が悪く、ボキャブラリーも使いこなせていない」

 会話能力についてだけ、やけに詳細というか、あの爺さん比較では長文レベルのコメントで、一瞬、本当かよとも疑ってしまったのだが。

「ぞお、とう、おり」

 龍皇の言った指摘は、俺自身も自覚してる通りのものなのだった。
 つまり、これから俺に施される『教育』とは――

「まあ、私が教えれば――2週間で人並みレベルには持っていけるかな。それで1ヶ月も経ったら『なんということでしょう!? そこには、詐欺師レベルのコミュ強KUSARIちゃんが!』ってところかしらね」

――他人との話し方、なのだった。

「任せなさ~い。ど~んと任せなさ~い」

 俺的に『信頼できない人間が言いがちな言葉ベスト3』というのがあって、それは『心配してます』『あなたのため』『任せなさい』なわけだが、どれだけ疑わし気であろうと、いまの俺に、逆らうすべは無かった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...