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しおりを挟む我が国は獣人の国。
種族も多岐にわたり、様々な種族の獣人が平和に暮らしている。
昔は同種族での交配をしていたのだが出生率が低い獣人はだんだんと近親交配を繰り返すようになり出生率はますます低くなった。加えて子をなしても繰り返された近親婚で貧弱な子が産まれ成人まで生きることが難しくなっていった。
獣人滅亡を危惧した当時の国王は自身と種族の違う者を后とし、異種族交配を国民に全面的に推奨するようになった。
そのような歴史がある獣人国は既に異種族婚姻は当たり前であり、むしろ同種族婚姻は時代遅れであるとされていた……―――
私はそんな獣人国に住む犬獣人だ。
「ラキちゃーん。こっちにビール2つくれー!」
「はーい!」
ここは獣人国の中で特にに栄えていて、冒険者や旅人や行商人など様々な人が行き交う常に賑わいを見せている街だ。
私は街の中心地にある酒場のウエイトレスとして日々あくせく働いている。
「はい。お待ちどうさま」
「ありがとラキちゃーん。疲れたときはビールとラキちゃんの可愛い笑顔で癒やされねぇと1日を終えられねぇよ」
「ふふっ、ありがとうございます」
熊獣人2人の常連さんに笑顔でそう伝えて、私は出来上がった料理を運ぶ為にバックへと向かった。
その時、同僚であり友達の羊獣人のメリーもバックへと入ってきた。
羊獣人独特のフワフワした髪を仕事中はまとめているが頭に2つあるクルンとした角も、もちろん容姿も可愛い仲の良い女性だ。
「あっ!ラキ。やばいよ。またあのストーカー来てるよ!あの鼠野郎!」
メリーは可愛い見た目に反して少し口が悪い。
「ただの常連さんだよ。見られてるなぁとは思うけど実際は少し話しかけられるくらいだし平気だよ」
「いや、絶対違う!あたしの野生の勘があいつはやばいって言ってるもん!自警団に言ったほうがいいよ!幼馴染に自警団の人いるんでしょ?猿獣人の」
「いやいやおおげさだって!自警団に言うほど何かされたわけでもないんだからさ。っていうかメリー野生じゃないでしょ」
「言葉の揚げ足を取らないでよ!」
「はいはい、心配してくれてありがとね」
メリーには平気とは言ったものの、実は私は悩んでいた。
その鼠獣人さんは、ここ最近この街に仕事で来た行商人だという。たまたま立ち寄ったこの店をいたく気に入ってくれて仕事は一旦暇を取り、毎晩こうして店に来ては1人で静かに飲みながらジーッと私のことを見てくるのだ。そして注文も必ず私に言ってくる。
その絡みつくような視線が、少し胸を不快に撫でるものだった。
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