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しおりを挟む初めはおとなしいけどたくさん飲んでくれる良いお客さん、と思っていた。
注文の際に二言三言話す程だったのが、だんだんと話す時間が長くなったり、私が他のお客さんを相手にしていると「何故あんな奴らに君が接客しないといけないんだ?他の客の分僕が注文するから君は僕だけを見ていてくれ」と粘着質な眼差しを向けられた。
このことを少しソフトな感じでメリーに伝えると勝ち気な性格のメリーはすぐにその鼠さんに警戒心を持ち私のことを案じてくれている。
「ラキは楽観的すぎるよ。ここが終わる時間だって夜遅いのに迎えの男1人いないなんて!今日あたしの方が先に終わるけどカーターと一緒にラキの上がりの時間まで待ってるから3人で帰ろ?」
「えぇ!?いいよいいよ!2人の邪魔したくないし!それに家も近いから平気だよ」
メリーはカーターという犀獣人の彼がいてかなりラブラブだ。
ハキハキとした性格のメリーにおっとりしているが屈強な体のカーターさんは傍から見ても凹凸が合わさったようにお似合いのカップルだ。
そしてカーターさんはかなりメリーを溺愛していて、メリーのシフトが終わる時間には必ず酒場まで迎えにきてくれている。
その光景を今まで何度見たことか。愛されていて羨ましい限り…。
たまにカーターさんはメリーを送るついでに私も送ってくれる為に3人で帰ることもあるのだが、特に今日は2人のラブラブな帰り道を邪魔するわけにはいかない。
「明日からカーターさんが出張でしばらく会えないんでしょ?だから今日ほんとは休みだったのに人手が足りないから無理矢理出勤してくれたじゃない。今日は早く帰って2人でラブラブしなよ」
一見冷たく見えるメリーだが、責任感のある立派な女性だ。
だから今日も無理言って短い時間ではあるが出勤してくれている。
「もちろんラブラブのイチャイチャするわよ!でもあたしはラキのことも心配なの!!」
「ありがと。メリーはほんとに優しいよね。でもほんとに平気だから。さっ!仕事しよ!!」
「もう!!ラキったら!あたし本当に心配してるんだからね!」
厨房からあがった料理を運ぶ為に優しい同僚の助言を私はさらりと流してしまった。
鼠さんは私が上がる閉店時間ギリギリまでずっと1人でお酒を飲みながら、少しゾクリとする眼差しを終始私に送っていた。
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