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しおりを挟む初夜。
「―――ッンン、……フっ、…ん、……っ」
ここは皇城近くにあるアルガルド様所有のタウンハウスの夫婦の寝室。
薄紗の天幕がかかる広いベッドの中、素肌に濃紺の夜着を羽織ったアルガルド様は胸筋の谷間や割れた腹筋が垣間見えていてそれだけで妖艶極まりない。
私はそんな彼の長い脚に囲まれるように座り、甘く長く濃いキスに酔いしれていた。
「はっ、…ぁ、……ッアル、様ぁっ……」
「…フェリシア」
初めてのキスのときの初々しさは婚約期間中に頻繁に私に会いに来ては人目を避けた場所に連れ去りキスをしてくるアルガルド様によってなくなり、互いの口内を熟知するほどに深いキスを何度も行った。
アルガルド様は2人っきりのときだけ自分を「アル」と呼ばせたがるから「アル様」と呼んでいる。
熱く情炎が灯る群青の瞳を見つめていると、ゆったりと艶美に微笑まれまたキスに興じる。アルガルド様の舌は少し分厚い。だからだろうか、舐められるだけで私の舌を包まれているようでただひたすらに気持ちがいい。
「フェリシア、ずっと思っていたんだが……」
「っん…?」
「君は細すぎじゃないだろうか?腕なんて俺が掴むと指が余るし、肩も腰も、というより体が薄い。なのに何故こんなに柔らかいんだ?……同じ人間とは思えない」
「私は別に痩せすぎてませんよ。アル様の体がおっきくて固いだけです」
「そうなんだろうか…。このまま抱いたら君を壊してしまいそうだ…」
アルガルド様が最早見慣れた柳眉を下げた表情をしながら私を優しすぎる力で抱きしめた。
今まで何度も抱きしめてくれたのにどうして今さら怖気づいてしまうのかな?可愛い人。
「私は黒騎士であるアルガルド・ヴァートレット様の妻ですよ?そんなにヤワじゃありません。確かめてみてはどうです?」
「我が新妻は夫を喜ばせるのが本当に上手いな。俺も君を喜ばせたいのだが何か欲しいものはないか?」
アルガルド様がそう言いながら体を倒し、私はポスンとベッドに倒れ込んだ。
庭園でのあの日からずっと、群青が熱く愛し気に見つめてくれている。その目に触れたくて手を伸ばし、目尻を指先でなぞるように頬に触れた。
「私を見つめるこの青い瞳さえいただけるのであれば、それだけで十分です」
「それでは俺が満足しないな」
「―――――ンンッ」
抑え込むようなキスが襲う。
その分厚い舌を求めて自身のものを伸ばすと、クルクルと弄ばれるように舌が絡まり少し苦しいけれどそれよりも遥かに気持ちいい。
薄く目を開くとやはりすぐ大好きな群青が見えた。アルガルド様はキスのときよく目を開けて私を見つめているのだ。
「ッ、ハァ……はぅ…」
「フェリシア、俺は自分の全てを、君に贈りたい。………だから君も」
「はい、……私の全てをあなたに捧げます」
湿った肌同士を触れ合っているにも関わらず、私たちは互いの隙間を全てなくしたいとでも言うように抱きしめ合った。
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