5 / 54
3 従順すぎる護衛騎士
しおりを挟む後宮入りした貴族令息達との顔合わせは順調に進んでいった。
他国には一夫多妻制が認められ、ハーレムには数百名の妃を迎えているところもあると聞いたことがあるため、どれほどの数の令息が来るのか戦々恐々していたが、後宮にやってきたのは三十名ほどだった。
十二分に多い人数だが目玉が飛び出るような数ではなかったことに多少安堵した。
男性不妊のせいで出生率が下がった今、俗な言い方だが種が機能している男性を私が持て余すわけにはいかないからだろう。
そして彼らが後宮入りしてからは、顔合わせの毎日だ。
私の逆ハーレム作りをきっかけにイテラ病の後遺症についても正式発表がなされ、国全土で大々的に子作り推奨を提言した。
子を持つ家庭への支援金はもちろん、経済的に子を複数育てられない人に養子縁組制度を積極的に提案し、子供を引き取った家庭や孤児院への支援金給付も可及的速やかに改定されていった。
過去には男後宮も女後宮も存在していたことや、イテラ病という大義名分があることから第一王女が逆ハーレムを作ることの正統性が説かれ、王族への不信を事前に防ぐことにも成功した。
あまりの手際の良さから、この計画は私に知らされるずっと前から進められていたことがわかる。
舞台はあまりにも綺麗に整えられていた。
ならば私も自分の役目を全うしなければならないと、日々後宮入りした方々と交流を深めているわけなのだが、どうにも疲れる。
来る者来る者皆私の寵愛を得ようと、容姿を褒めそやすだけでなんの実りのある話がない。
むしろあまりに見目を褒められるから、私の褒められるべき点はやはり容姿だけなのかと、少し落ち込んでくる有様だ。
「それにしても此度の施策には驚きました。まさか殿下が貴族令息達を囲うとは」
本日最後の顔合わせ相手である令息は、開始からずっと一人で喋っている。それを外面だけずっとにこやかに聞いていると、気を大きくしたのかそんな言葉が急に投げられた。
今回の逆ハーレム計画のことで、綺麗な言い方だが言葉の裏に私への嘲りを向ける者が一定数いる。端的に言えば「姫様は男に囲まれてさぞいい気分でしょうね」といった具合だ。
イテラ病という事情があるのだと彼らも説明を受けているはずなのに、何をどう解釈したのか、よくもまあそういった意見を持てるものだと呆れていた。
そしてその後ろでヴォルフが殺気ともとれるとんでもなく不機嫌なオーラを放っていたのだが、彼らは意に介していなかった。というよりもただ鈍感だっただけかもしれないが。
目の前の令息も似たような感じなのかと思い「またか」程度に思ったが、またしても背後から禍々しいオーラを感じる。
だがこの令息もそれには気付いていないようだ。
「囲うだなんて人聞きが悪いわ。これは王命でもあるし、そもそもイテラ病のことを聞いておいででしょう?」
「えぇ、もちろんです。ご気分を害されたなら謝ります。違うのですよ。私はむしろ殿下が愛でる花の一つとなることを、誰よりも喜んでいるのです」
「というと?」
「私は一つの宝石を一人で楽しむよりも、同志と一緒に楽しみたいと思う質なのです」
こいつ、私を嘲るつもりではなく、まさか顔合わせの席で初対面の王女に猥談を持ち込んできているのか。
もはや怒りなどなく、その豪胆さに感心する。
つまりこの人は複数で行う情事がお好きという趣味があるらしい。しかも男性側が多いほうがよいとのこと。そしてこの後宮でその情事を行いたいと言っているのだ。姫であるこの私と。
それを恥ずかしげもなく言える度胸は買いたい。……いや? この人は私も同じ趣味を持っていると思っているのか? イテラ病のことを知っているのに? だとしたら相当なバカだ。
そもそも夜伽は一対一が原則とされているのだから、複数で行うはずがない。
ここまで阿呆だと、この令息の家の教育方法を逆に知りたい。
貴族が愚かではその土地の領民が苦しんでしまう。一度この者の家が治める領地へ視察団を派遣したほうがいいだろう。
70
あなたにおすすめの小説
ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。
由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
【完】麗しの桃は攫われる〜狼獣人の番は甘い溺愛に翻弄される〜
こころ ゆい
恋愛
※完結しました!皆様のおかげです!ありがとうございました!
※既に完結しておりますが、番外編②加筆しました!(2025/10/17)
狼獣人、リードネストの番(つがい)として隣国から攫われてきたモモネリア。
突然知らない場所に連れてこられた彼女は、ある事情で生きる気力も失っていた。
だが、リードネストの献身的な愛が、傷付いたモモネリアを包み込み、徐々に二人は心を通わせていく。
そんなとき、二人で訪れた旅先で小さなドワーフ、ローネルに出会う。
共に行くことになったローネルだが、何か秘密があるようで?
自分に向けられる、獣人の深い愛情に翻弄される番を描いた、とろ甘溺愛ラブストーリー。
「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない
橋本彩里(Ayari)
恋愛
六歳の時に伯爵家の養子として引き取られたイーサンは、年頃になっても一つ上の義理の姉のミラが大好きだとじゃれてくる。
そんななか、投資に失敗した父の借金の代わりにとミラに見合いの話が浮上し、義姉が大好きなわんこ系義弟が「ご褒美ください」と迫ってきて……。
1~2万文字の短編予定→中編に変更します。
いつもながらの溺愛執着ものです。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
『嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です』
由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。
婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。
ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。
「君を嫌ったことなど、一度もない」
それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。
勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。
無能と追放された魔導鍛冶師、最強の騎士に拾われ溺愛される
ムラサメ
恋愛
「君の打つ剣は輝きが足りない。もっと華やかに光る、騎士団の象徴となる剣を打てないのか」
実家の鍛冶屋からも、婚約者である騎士団長カイルからも「無能」と切り捨てられた鍛冶師・メル。不純物を削ぎ落とし、使い手の命を守るためだけに特化した彼女の「究極の業」は、美しさを求める凡夫たちには理解されなかった。
冷たい雨の中、行き場を失い魔物に襲われた彼女を救ったのは、隣国の至宝であり、その強すぎる魔力ゆえに触れる武器すべてを粉砕してしまう最強の騎士――アルベールだった。
圧倒的な武力で魔物を屠り、砕けた愛剣を悲しげに見つめるアルベール。周囲がその「化け物じみた力」を恐れて遠巻きにする中で、メルだけは違った。彼女は泥にまみれた鉄の破片を拾い上げ、おっとりと微笑む。
「……騎士様。この子は、あなたの力に応えようとして、精一杯頑張ったみたいですよ」
その場で振るわれたメルのハンマーが、世界で唯一、アルベールの全力を受け止める「不壊の剣」を産み落とした瞬間――最強ゆえに孤独だった英雄の運命が、狂おしく回り始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる