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ふさわしい者
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大体、「複数の男性から求められるなんて嬉しいことだ」とかなんとか言っていたけれど、恋愛経験がない私からすると、めんどくさそうというのが本音だ。
私は立場上、恋愛ができるなどと思っていなかったから、そっち方面に興味を示さないで生きてきた。
だから「意中の相手がいれば」なんて言っていたけれど、そもそも私は自分の好みすらよくわからない。
恋愛小説を嗜む程度に読んだこともあるし、昔は人並みに恋愛ものの絵本に興じていたけれど、成長した今となってはいったいどうして恋愛事にあんなに一喜一憂できるのかも理解に苦しむ。
相手が好きなら好きとハッキリ言ってしまえばいいものを、何故かうだうだとまごついて、結局ややこしい事件に巻き込まれてしまったり、第三者の邪魔が入ってしまったりしている。
友人の貴族令嬢達やメイドは、その紆余曲折さが恋愛のスパイスとなって楽しいと言っていたけれど、私からするとただイライラするだけし、主役二人がくっついただけで何故か周囲も幸せになるというご都合展開が、どうにも肌に合わなかった。
恋愛小説にさえこんなことを思うのだから、私は恋愛に向いていないのだろう。
「ヴォルフ。一介の騎士としてでなく、古い友人として答えてほしいんだけど、どんな人を選べばいいと思う?」
お茶を淹れ終わってから、いつもの位置である私の斜め後ろに直立しているヴォルフを、だらしなくソファに体を委ねながら尋ねた。
ヴォルフは人形のように整った相貌を人形のように動かさず、ただ目線だけ動かし私を見つめた。
「姫様が望む、姫様にふさわしい男をお選びいただくことがよろしいかと」
「だから、どんな人が私にふさわしいか聞きたいの」
「姫様のご慧眼に叶った者ならば、自ずとふさわしい者となり得ましょう」
どうにもこの護衛騎士は、私に妄信している。
私はそれほど卓越した才能なんてものはない。頭脳だって人並みだし、今この男が宣った慧眼なんてものは持ち合わせてはいない。
唯一人より秀でているのは母譲りの華やかな容姿くらいだ。
父方の家系譲りのローズピンクの髪は気に入ってはいるが、これのせいでどうにも幼く見えてしまい、政においては不向きと言っていいだろう。
そうなると私にふさわしい者というのは、私の治世において善たる道を支援することができ、尚且つ子供っぽい見た目の私がなめられないよう大人びた、もしくは恐れおののくような大男がいいということか。
男性の好みのタイプがないというのは、こういうとき便利だ。
タイプなんぞあれば、それに反した者が伴侶となったとき多少の遺恨は残ってしまうだろうから。
とはいえ、貴族のご令息方に恐れおののくような大男がいるとは到底思えないけれど。
気は進まないものの諦めという名の納得をし、後宮においての慣例などを学んだり細かいことを取り込めた後、逆ハーレム計画は正式に遂行されることとなった。
数週間後、長年使っていなかったかつての後宮が超特急で整備され、経てして後宮入りした貴族令息達との顔合わせの場が開かれた。
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「だから、どんな人が私にふさわしいか聞きたいの」
「姫様のご慧眼に叶った者ならば、自ずとふさわしい者となり得ましょう」
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