逆ハーレムを作ったけど、護衛騎士が婿候補をことごとく蹴散らしていく件【R18】

冬見 六花

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 傍にいられるだけで幸せ

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「まあ何はともあれ、武器を持たないで済むほど平和なのは確かだし、いいんじゃない?」
「えぇ。そうですね」
「でもそうなるとヴォルフには護衛とは名ばかりで、執事のようなことをさせてしまっているのは申し訳ないわね。せっかく王族の護衛になるほどのすごい実力を持っているようなのに、これじゃあ宝の持ち腐れだわ」

 一応派閥争いはあるものの、私を含め周囲に血生臭い事件は一切起きておらず、そのためヴォルフが戦う姿すら見たことがない。
 騎士としての実力を発揮させるどころか、むしろ執事レベルがどんどん向上してしまうような毎日だ。

 私とて誰かに殺されそうになるなんてもちろん嫌なわけだから、ヴォルフが実際に戦っているということは、私がそれだけ命の危機に瀕しているということになる。
 ならば今のまま命の危険など考えない、平和な毎日を送りたい。

「そもそも俺の力も含め、すべては姫様のものなのですから、姫様が俺をどのように扱おうと御心を痛める必要などなんらございません。俺はただ、姫様のお傍にいられることを至上としておりますので」
「ん~、ありがたいけどヴォルフにはもっと自分の幸せを考えてほしいな」
「俺は今とても幸せです」

 純粋無垢な子供のような眼差しで言いきられた。

「でももっと幸せになれるかもしれないじゃない? 例えば誰かを好きになって結婚したいとか、あとは旅に出たいとか。なんでもいいけど自分のために何かしたいことがとかないの?」

 ヴォルフの忠誠心は大変ありがたいけれど、やはり少々の申し訳なさともったいなさを思ってしまう。
 彼はまだ若い。
 王になる道しかない私と違って、その力を使ってのいろんな可能性がまだまだたくさんある。

 私の護衛という職を誉れと思ってくれているのはありがたいけれど、正直なところヴォルフにここまでの忠誠心を抱かせるほどの価値が、私にあるとは思えない。
 もちろん姫という立場ではあるけれど、それにしたってただ姫として産まれただけで、それは私自身の価値ではない。
 私の価値は、むしろこれから身に着けていかねばならないものだと思っている。

「俺は、姫様のお傍にいたいです。姫様のお傍以外に俺の幸せがあると思えません」

 ヴォルフがここまで私を慕ってくれている理由もわかってはいる。
 だけどそれだって私にとっては大したことなどしていない。だがこの男は、その恩義をそっくりそのまま忠義に挿げ替えてしまったのだから質が悪い。

 慕ってくれるのは有難いし、ヴォルフを辞めさせたいだなんて微塵も思っていないけれど、少しは「姫様離れ」をしてほしいと思ってしまうのは贅沢だろうか。

 ヴォルフの言葉に「そっか」としか返すことができず、この話は終わりという意味を込めてゆっくりと茶を飲んだ。



 その私の背後で、ヴォルフが凄まじい形相で天井を見つめていることに、私はもちろん気付くはずがないのである。


 
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