逆ハーレムを作ったけど、護衛騎士が婿候補をことごとく蹴散らしていく件【R18】

冬見 六花

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 体を動かすと頭がからっぽになる。
 
 自分が何かに悩み、模糊もことしたものに頭が支配されてしまったときは、体を動かして余計な思考ゴミを捨ててしまうと、至極簡単に答えが浮かんでくる。
 いずれにせよ自分一人で考え付いていることなのに、「体を動かせば良い考えも浮かぶだろう」というどこか他人頼りにも思える行動だが、何故かこれが案外うまくいくのが人間のおもしろいところだ。
 これは私だけに限った話ではなく、割と一般的なことに思う。

 だが自分一人が頭をこねくりまわして考えても、一度頭をからっぽにしたとしても、どうにも解決できないことはこの世にごまんと存在する。
 例えそれが、他人から見たらとてつなく簡単にほどける糸だとしても、自分には難解すぎて到底ほどけそうにないものに見えることがある。

 この場合、ならば他人にほどいてもらえばいいと言われるだろう。
 だが違うのだ。私はあくまでも自分でそれをほどきたい。
 他人が介入していいのは、そのほどき方を教えるまででいいのだと、私は思う。

「ハッ……ハッ……」

 後頭部を引っ張られているような感覚を覚えながら、規則的な呼吸を意識してひた走る。

 毎朝行うジョギングはすっかり習慣となったが、どうにも髪型が決まらない。自分の長い髪を後ろで一つにまとめると尻尾のように大きく揺れてしまい、どうにも今のように引っ張られる感覚がして頭皮に負担をかけているように思えてならない。
 かといって編み込んだり丸めたりしても、途中でほどけてしまって邪魔になる。そもそもこの髪結いは私が自分で行っているため、工夫されたものはできない。
 ジョギング前に侍女に来てもらうこともできなくはないし、過去には「やります」とも言ってくれたのだが、夜遅くまで働いている彼女達を必要以上に早起きさせるのは酷だと私は思う。臣下を自分のごく個人的な都合で振り回すことを、私はあまり好まないのだ。

 私のこのような思考や行動を「親しみやすい」と受け取るか、「威厳が損なわれる」と捉えるかは個人に委ねるが、後者であった場合、それはそれとして受け止めていただきたいのが本音だ。
 侍女を早くに叩き起こすことでしか示せない威厳というのは、もはや暴慢だ。そんな暴慢を持っていない私が、侍女達を起こして「ごめんね、起こしちゃって……」と毎朝申し訳なく思いながら支度させるのならば、自分一人が起きて後頭部の頭皮に悩む程度で済ませたい。

 とはいえ当然の如く一人きりでいるはずもなく、護衛はいる。言わずもがなヴォルフである。
 そして私の頭の中をこんがらがらせている張本人でもある。

 私がヴォルフに対して抱く思いがなんなのか、ハッキリとさせたい。
 これが恋だというならば、恋というのは結構薄っぺらいのではと思ってしまう。何せ少々迫られた程度で抱いてしまうような思いなのだから。

 ……なんだかだんだん自分の思考がめんどくさくなってきたな。
 だから恋愛事なんてせず、政略結婚でいいって思っていたのに。
 今回の逆ハーレム計画のせいで無駄に考えることが増えてしまったように思う。 
 

「お疲れ様でございます。姫様」

 ジョギングを終えた私に、フルーツジュースを渡しながら丁寧にあいさつをしてきた。相変わらず護衛は見てくれだけで、執事なのかと思ってしまうほどだ。

「いつも思うけどあなたは走らなくていいの?」
「はい。大丈夫です」
「そう。まあ私のペースじゃ物足りないでしょうしね」
 
 少し冷たい言い方になっている自覚はある。だが、わざわざそれを訂正するのも憚られた。
 もう使用人達が活動を始めている時間だ。ジュースを飲み終え、汗を流してドレスに着替えるためヴォルフを一旦外に出し代わりに侍女を部屋へと入れた。
 今日は後宮の上級婿のもとを訪れる予定となっているため、装いを派手にしたく赤のドレスを選んだ。
 
 というのも、明日はいよいよ「月渡り」が行われる。
 今日後宮へ行くのは、明日の夜伽相手を誰にするのかの最終確認のようなものだ。
 
 先日、また新たに辞退者が数名出てしまった。
 また王配派ばかりかと思ったがそういうわけではなく、むしろ女王派の方が多かった。いずれも顔合わせの際、良くも悪くも印象に残らない者達だった。そして今回も陛下も王配殿下もお咎めは無しとしている。
 もう後宮に残っているのは少しの王配派と、女王派の中でも有力貴族な家の者だけだ。



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