逆ハーレムを作ったけど、護衛騎士が婿候補をことごとく蹴散らしていく件【R18】

冬見 六花

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11 お戯れ

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 一番始めにテオドア様のもとを訪れた。
 テオドア様とは何度か共にお茶をするような仲となっていて、名前で呼ぶことを許している。彼は内気な性格の中にも知識への探求心が強く、後宮内の者も入れる王宮図書室へと足繁く通っていると聞いている。
 
「今日はテオドア様にプレゼントがあるの」
「プレゼント、ですか?」

 以前お茶をした際に、テオドア様がボソッと「見た目はただのブローチのような糸切バサミがあると嬉しい」と言っていたため、それを探し今回プレゼントしに来た。

「これ……!」
「気に入ってくれたら嬉しいのだけれど」
 
 テオドア様は趣味として刺繍を嗜んでいることを、交流していくうちに知った。
 そのことを、彼は家族に秘密にしているという。
 確かに刺繍と言えば淑女の嗜みで、男性が行うのはかなり珍しいが、そうした男女差別のようなものは母の治世となってから薄れつつある。おかげで徐々に女性騎士も増えてきている昨今だ。
 だが厳格なユタバイト家、しかもただでさえ青を持たないために肩身の狭い彼は、堂々と刺繍などできなかったのは言わずもがな。

 後宮に来てからもするつもりはなかったようだが、以前こっそりと私にだけ教えてくれたため、後日刺繍道具をプレゼントしていたのだ。
 もちろんその際はテオドア様だけでなく他の婿候補達にもそれぞれ趣味に合うものを贈っているのだが、今回のハサミだけは彼だけの特別だ。

「気に入るなんてそんな……! こんな嬉しいものをいただけて、喜ばないはずがありません!」
「そこまで喜んでくれると、あげる側も嬉しいわ」

 それぞれの家から様々な思惑で後宮に来ている彼らだが、つまるところ王命でここに来ているのだから快適な暮らしをしてほしいと思っている。

 私が子を産んだ後にもこの後宮を続けるのか今の段階では決めかねている。
 この逆ハーレム計画はイテラ病による後継問題のために起こしたものなため、子さえいれば後宮を残しておく必要はない。ならば一度後宮に入れられた令息達のその後をどうするかというのも、王室側が考えなければならないところだ。

 ユタバイト家の二人以外、後宮入りした者は家を継ぐ予定はない。だから元々それぞれ生きる道をある程度決めているか、考えていた段階だっただろう。
 家に戻って自分で決めるも良しとしているが、今は他国からの医術の他に文化を学ぼうとしていて、そこに志願すれば婿候補達も学べる機会を設けている。

 テオドア様は積極的にそこに参加しているらしい。
 上級婿であるテオドア様が参加してくれるおかげで、下の婿達も行きやすい環境となった。このハサミはそのほんのお礼のようなものだ。

 聞けば彼は元々外国文化に興味があり、必須履修ではない語学も独学で会得しているという。
 今繕っている刺繍も北国独自のデザインで、テオドア様曰く初心者向けの模様らしいが、私からすれば十分複雑な幾何学模様に見える。

「こうして心から刺繍を楽しめるようになったのは、ユリアーネ様のおかげです。なんでもいいから自信を持つべきとおっしゃってくださったことが、僕にとって革命のように思えたんです」
「そう思ってくれたならよかったけれど、私としてはあのとき説教臭くなってしまったことを恥ずかしく思ったわ」
「僕にはとてもまっすぐなお言葉で、すごく心地よく胸に刺さりました」

 いつぞやのオドオドした様子はもう見られない。
 この逆ハーレム計画について、まだいろいろ納得しきれていない部分もあったが、テオドア様が明るくなってくれたことは私にとっても喜ばしい。
 
 ただ刺繍を嗜んでいることは、まだユタバイト公爵にはもちろん、ドミニク様にも言ってはいないらしい。
 糸切バサミがそう見えないようなデザインを望んだ時点でそれは窺えた。

「ユリアーネ様、ドミニクとも会っておられますか?」

 突如意を決したようにテオドア様が尋ねてきた。

「えぇ。この後も伺う予定よ。ドミニク様がどうかしたの?」

 今回は月渡りの前日ということで上級婿全員に会う予定だが、正直テオドア様ほどドミニク様のところへは行っていない。
 口を開けば青い血を褒めそやす。それを私が聞いていようがいまいがペラペラ話すものだから、こっちとしてはかなり疲れるのだ。あまり会う頻度に差がないよう、完全に避けているわけではないがどうしたって差が生まれてしまう。
 ちなみにルスラルド様にも会いに行っているが、大した会話はせずに絵の鑑賞のために行っている感じになっている。

「なんといいますか。先日後宮内で少し話したのですが、ちょっと様子がおかしいように思えたので」
「様子がおかしい?」
「はい……。ご気分を害してしまったら申し訳ないのですが、なんというか、ドミニクがユリアーネ様を軽視しているように感じたのです」

 それは確かに少々、いや、尋常じゃなく様子がおかしいように思える。
 彼は自他ともに認める王家の青い血マニアだ。
 彼に崇められるのを辟易していたが、軽視されるというのはどういうことだろう。
 私と交流が深まったため、私が神ではなく人間と気づいてガッカリでもしたのだろうか。
 もしそうならそうで、良い気分はしない。
 
 だが心配する振りをして、ドミニク様を落とすような言い方をしているとも考えられる。
 テオドア様を信頼していないわけではないが、だからといって心から信用できるとも限らないのだ。 
 
「教えてくれてありがとう。ドミニク様にお会いしたとき注意して様子を見てみるわ。あとテオドア様が心配されていたこともお伝えするわ」
「僕に心配されていると知ったら、ドミニクは良く思わないと思いますが……」
 
 二人は元々仲の良い兄弟ではなかったが。後宮に入ってから不仲が加速しているのは聞いている。

 というのも、そもそもユタバイト家は双子だが一応兄であるテオドア様が後継で、弟のドミニク様が王婿候補の筆頭だった。
 だが今回の逆ハーレム計画で二人共後宮入りし、しかも私がテオドア様と交流を深めているのだから、ドミニク様にとっては腹立たしく思って当然だろう。
 そうなると私にも原因があるのだが、かといって二人の不仲を仲裁する義理もない。

 私は私で、与えられた役目を果たさなければならないのだから。
 
 
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