逆ハーレムを作ったけど、護衛騎士が婿候補をことごとく蹴散らしていく件【R18】

冬見 六花

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23 月蕩酒はいらない

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 本格的な冬をとうに迎え、雪はないが吐く息が白く濁るような夜。
 
 とっくに回復した体は先日からまた朝のランニングを再開したが、まだ鈍った感覚が抜けていない。
 今はそんな体を隅々まで磨かれ、以前着たものより煽情的なデザインのナイトドレスに着替え、以前よりも厚手のガウンを羽織り、以前と違う王女付きの侍女を連れて長い廊下を歩いていた。

 今日は二回目の月渡りだ。

 静々と歩みを進め、目的の部屋へと辿り着き侍女が扉をノックした。

「ユリアーネ・シーゲル殿下がおいでです」

 そう言って扉を開けると、肌着の状態で最上礼でいる男性が目に入った。無言のまま部屋へと入ると、侍女が月蕩酒を置いて静かに出て行った。
 これで朝までここには誰も来ない。
 独特な緊張感のある儀式から解放され、ふうと一つ息を吐いてから詰め寄った。

「で? なんであなたは後宮にいるわけ?」

 状況がまったく掴めていない私を見て、ヴォルフは不敵に笑みを浮かべた。








 正直、安請け合いをしてしまったなと後悔していた。

 あの場の空気にあてられてヴォルフに事後処理を任せ、しかもそれが完了したら夫にするなんてことを約束してしまったが、そんなこと私の一存でどうこうできるものではない。

 だが私とてヴォルフと結婚したいと思っているのは事実。
 ヴォルフに変な期待を抱かせてしまった以上、それを叶えるべくどうにかして両親を始め、高位貴族連中を納得させねばなるまいと、療養しながらアレコレと考えていた。

 そんなある日のこと。
 完治したと言っていいほど回復したのに、未だ療養中の身である私の元を久々にヴォルフは訪れ、開口一番にこう言った。
 
「本日付けで姫様の護衛騎士を辞めさせていただきます」
 と。

 驚きすぎて呆然としている私を見て「お可愛らしいです」と何故か頬を赤らめながら照れたように微笑んだ後、ヴォルフはすぐさま出ていってしまった。

 もしや私との結婚を申し出て護衛騎士を解雇されてしまったのではと、数日間気が気でなかった。
 その後すぐ、あの日以降延期されていた月渡りを次回執り行うという報せが届き、どうしたものかと思いながらリストを見ると上級婿の箇所にヴォルフの名前を見つけ、驚いて後方に倒れそうになった。

 そんなことがあって、今日に至っている。

 ヴォルフは以前と変わらない恭しさで私を席に着かせ、いつものように温かいお茶を淹れてくれた。
 だが今は月渡り。このぶ厚いガウンの下は妖艶な下着姿でいるのがどうにも落ち着かないが、今はそれを悟られたくなく、毅然とした態度でカップに口をつけた。
 いつものように私の斜め後ろ立とうとしていたため、隣に座るようソファをポンポンと叩くと、ヴォルフは頬を赤らめながらぎこちなく隣に座った。
 
「それで? ちゃんと説明してくれるんでしょうね?」

 照れ臭さからちょっと棘のある言い方になってしまったが、ヴォルフは特に気にすることはなく、むしろ愛でてくるような甘い眼差しを向けてきた。

「もちろんです。まず、諸々の処理対応は恙なくすべて終了いたしました」

 すでに黒幕が誰なのかも目的もわかっていたから、その後の対応についてはもっと早く終わるものだと思っていたのに、まさか私が完治するまで待たされるとは思わなかった。
 しかもその間外に出ることは許されず、完治していたのに軟禁状態だったのだ。多少言葉に棘が生まれるのも致し方ない。

 ヴォルフの説明は淀みなかった。

 本来なら王族の暗殺は、未遂であろうと即刻死刑となる。
 だが、ドミニク様についてはユタバイト公爵が高額の賠償金と領地の一部を国へ譲渡したため減刑となった。
 これは此度の件が本人が企てたことでなく、傀儡とされていたための恩赦だ。
 とはいえ当然本人の意思で動いたため、ドミニク様はもちろん公爵家からは追放となり、その強い信仰心から神の御許である辺境の地の教会へ修行という名の流刑となった。

 ディグラン子爵については、てっきり即刻処刑にでもされたのかと思ったが、彼は国外追放を言い渡されたらしく既にシーゲルにはいない。
 ずいぶんと情けをかけたものだと思い、素直にヴォルフに聞いてみたが「そちらのほうが適した罰と判断したので」と言われてしまった。
 その言い方からして、これ以上の追及はできないだろうと判断した。

 彼がいなくなってから王配派の蓋を開けてみると、王配派の中でさらに派閥が別れていたらしい。
 王配殿下を王とした新体制を築き新たな妃を迎えたいと考え、自分達に縁ある令嬢を当てがいたい「国王派」と、ディグラン子爵率いる王配派に有利に動いてくれる新たな王に挿げ替えたいと考える「新国王派」がいたらしい。
 どちらにとっても私は邪魔な存在だったわけだが、今回のことで新国王派筆頭のディグラン子爵がいなくなったことから、新国王派は解体となり、それに伴い国王派も鳴りを潜めた。
 結果として王配派自体がかなり縮小されることとなったそうだ。



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