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【 表 】
②
しおりを挟む「それよりレイド、そのお鍋は何?」
「あ、そうそう! これ僕が作ったんだ! リセに食べてほしくて」
「えっ、でももう今日は果物を置いてくれてたのに」
「いいのいいの。それより見て? リセにいっぱい食べてほしいからスープを作ったんだよ。ほら、美味しそうでしょ?」
そう言って嬉しそうに蓋を開けてみせてくれると、いつも持ってきてくれる高級なお肉と少しの香味野菜が入ったスープだった。
「わぁ、美味しそう。これってテールスープ?」
「すごい! よくわかったね! ほら、リセ最近食欲ないでしょう? だからあっさり味にしたんだ」
「あれ、最近食欲がないなんてこと、レイドに言ったっけ?」
そう聞くと、レイドは答えずにただいつものようににっこりと笑うだけだった。
レイドは恩人である私のことを過保護と思うほど心配してくる。
そんなレイドを不安がらせないよう食欲がないことは言わないように努めていたのだが、どこかでポロリとこぼしてしまったのだろうか。
「ねえレイド。もう恩返しなんてしなくていいよ? 私が何をしたか覚えてないけど、絶対にそれ以上のことをしてもらってる気がするもん」
「そんなつれないこと言わないでよ~。それとも、僕がしてることってリセにとって迷惑だったかな?」
「まさか! むしろ助かってるんだけど……」
私の家は見渡す限り木々しかない山奥にあり、生活するには不便なところにある。年頃の娘としては街に行ってみたいと思い、以前レイドにそのことを言ってみたところ間髪入れずに反対された。
なんでも、今街はかなり治安が悪いらしく、女性1人がのこのこ歩いていたら危険らしい。
さらに私の黒髪はかなり珍しいものらしく、それを狙って奴隷商に攫われてしまう可能性が高いから絶対に街には行ってはいけないと、普段温和なレイドが必死に形相で伝えてきた。私だってそんな恐ろしい目には遭いたくはないため、結局そのままレイドに甘える現状を維持してしまっている。
「リ~セ。僕がいろいろ持ってきてるのはね、恩返しもそうだけど僕がリセにいろいろしてあげたいっていう僕の我儘でもあるんだ。だからリセにはそんな申し訳なさそうな顔するんじゃなくて、ありがとうって嬉しそうに言ってほしいな」
「そ、そりゃあ、ありがたいって思ってるよ? ありがとね?」
「うん! これからも僕がリセにいろ~んなものあげるから、ぜぇ~~んぶ受け取ってね。僕の大事なリーセ♡」
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