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第99異界⑥
しおりを挟むまずは強化案その1を試してみる。 新たに2体の泥人形を作成する。 まずは1体目、目が2つ、口が6つのタイプである。 口を増やすことで泥玉を連射、速射性能の向上を図った自信作だ。 口の数を増やした関係上プロトタイプに比べ、一回り大きくなってしまった。 いわば戦闘用攻撃特化型試作機である、名づけて泥人形初号機! ちなみにプロトタイプは「泥人形零号機」である。 ついさっき決めた。
「初号機! 攻撃開始!」
意気揚々と攻撃支持を出す! ………しかし初号機はブルブル震えるばかりで動かない。
「右旋回」
試しに他の支持を出してみる。 右を向く。 …あ………ダメだ、コレ。 初号機失敗作だわ。
気を取り直して、次っ! 決戦用一撃必殺型試作機「泥人形弐号機」だ!! 零号機の三倍近い砲門(口)を持つ、まさに火力特化型! 大鑑巨砲主義と笑わば笑え! そして驚愕せよ! 恐れ慄け! さぁ行け! 弐号機よ!
「攻撃ーーっ!!」
…べちゃ。 口から泥の塊を垂れ流した。
「…ふふふ、ふ、ははは……、ふぁーーはっはっはっ!!! ………はぁ」
自分で笑ってしまった。 しかも無駄に三段笑いで、自己嫌悪で死にたくなる。
「…無様デスネ」
「…グフォアッ!」
言葉の刃がクリティカル! 心のHPが瀕死だ。 しかし落ち込んでばかりもいられないので、強化案その2を実行に移す。
…数十秒後。 完成。
「…コレハ、最初二作成シタ固体ト同様二見受ケラレマスガ?」
「…ふ、浅はかな女よ」
さっきの仕返しをして見た。 おっと、メチャクチャ睨まれた。 カワイイ。
「まー、物は試しだ見てろ」
今回作成した固体を「零号機改」と仮名し、零号機改から、だいたい10m程の距離にいる初号機…もとい失敗作、もとい的を指差す。
「攻撃」
零号機改から泥玉が発射され、見事、的に着弾。 その瞬間的の3分の1が吹っ飛ぶ。 成功だ。
「コレハ凄イデスネ」
「だろ?」
「シカシ解セマセン、見タ目ハ何モ変ワッテイノニ…」
「じゃ答え合わせといきますか?」
そう言って俺は、粉砕された的に歩み寄ると、形の崩れた泥溜まりの中から、泥だらけの物体を取り出しジャージの袖で泥を拭き取り、それを自信満々に見せ付ける。
「…石、デスカ?」
「そ、良い子はマネしちゃ駄目だぜ」
シンプルな話だ。 泥の塊は柔らかいし、飛ばすには重過ぎる。 じゃあどうするか? 答えは簡単、もっと硬くて軽いものを玉として使えばいい。
幸か不幸か、ここには土と水と小石だけは潤沢に有るのだから。
「さて正式名称考えなきゃな?」
ここぞとばかりに軽口を叩いてみる。 少女は相変わらずの無表情、俺は肩を竦める他なかった。
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