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雨季島 ヨルタ

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ナビコ②

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 鐘の音が鳴り響く。 これがナビコの言う鐘の音。 これから別の神との戦いが始まる。

「いよいよか…俺たち勝てるよな?」

「…ワカリマセン、相手次第カト?」

 う、うん。 デスヨネー。 他に言いようは無かったのか? 俺の幸福を祈ってくれるって言ってなかった?

「がんばって下さい! マスターなら絶対勝てます!って言ってもらえる。」

 ナビコはコクリと頷く。

「ガンバッテクダサイ、マスターナラゼッタイカテマス」

 チョー棒読みだった。 泣けてきた。

 やがて鐘の音が止む、そして今度は地鳴りが襲ってくる。 地面が揺れる。 まるでエレベーターに乗ったときのような居心地の悪い浮遊感、地に足が着いているのに脳が錯覚を起こして落ち着かない感覚。 どうやら上に昇っているようだ。 なんだか不安感が煽られる。 ガクガクと足が揺れる。 立っているのがキツイ。 クソったれ!

 そんな俺の手をナビコが握り、宝石箱のような瞳が、恐怖で濁った俺の目を覗く。 

「ナ、ナビコ?」

 ナビコは何も言わない。 手を握り俺を見上げた体制のまま、微動だにしない。 これは勇気付けてくれている?のか?

「…は、はは。 ありがとな、やっぱナビコがいないと俺はダメみたいだ」

「…私ハ無責任二気休メヲ言ウコトハ出来マセン、シカシ私ハ貴方ヲ無条件デ信ジテイマス。 …ダカラ、」

 俺はナビコの口を片手で押さえ強制的に会話を止める。 不器用な彼女にこれ以上無理をさせて機能不全を起こされては堪らない。 …と言うのは冗談は置いといて、これ以上はダメだ。 つまらないプライドだが、俺は男なんだ。

 両頬を思いっきり両手で叩く。 パァンと良い音がして、ジンジンと両頬に鈍い痛みが響く。 そうやって無理矢理に自分を奮い立たせる。 男って生き物はどんな状況でも、どんなに苦しくても、女の子の前では強がってしまう生き物なのだ。 それが俺の最後のプライドだ。 精一杯カッコつけて…。 散ってやんよ!

「もう大丈夫だ。 俺は負けない。 絶対に」

 最大限の虚勢をドヤ顔でいってやった。 それにナビコはいつもの表情で答えた。 そうだそれでこそナビコだ。 俺を勇気付けるなんて機能外のことは対応しなくて良い。 させてしまったのは俺のミスだ。

 だから、もうビビったりしない。 

 やがて揺れが収まり、上に別の地平が見えてくる。 俺の世界より一回り大きい、ここに俺とは別の神がいる…否が応にも緊張が走る。

迫り来る戦いの臭いにゴクリと唾を飲む。「大丈夫だ」、「俺は負けない」、そう言い聞かせる。 もう絶対にナビコに心配はかけさせない。 

 そう決めたんだ。
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