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雨季島 ヨルタ

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VS猪神①

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 敵地、別の世界は、緑色だった…。

 俺の世界と比べると若干だが大きく。 地表は苔に覆われている。 その苔こそが緑色の正体である。 所々に食えるのか、食えないのかわからないキノコが散乱している…おそらく俺にとってのパンとぶどう酒が、奴にとってのキノコなのだろう。

「もっと綺麗に食べなさい。 ってお母さんに怒られなかったのか?」

 そんな軽口を叩いてはみたが、奴には届かないだろう。

 それもその筈、その緑色の地表の中心には、デカイ猪が鼻息を荒立てていた。 だいたい1m半程の大きさ、ガチでデカイ。 既に臨戦態勢で、殺ル気満々と言ったところか?

「よう、お前も神なんだろ?日本語わかるか?」

 当然返事は無い。 かわりに後ろ足を蹴り上げる動作を繰り返す…今にも突進して来そうだ。

 実際、俺にとって「こういうタイプ」の敵は都合が良かった。 正直、遠距離から攻めて来るタイプの敵だったら、負け濃厚で白旗を振るしか無かったことだろう。 なにせ泥人形マドゴーレムの射程は大分伸びたとは言え、精々10m程度、それっぽちの射程ならば射程外からの攻撃は消して難しく無い。 ちょっと腕力が有れば投擲武器で射程外攻撃可能だ。

 しかしながら、この猪は明らかに突進して相手を屈服させるタイプと見た。

「そら来た!」

 言うが早いか、猪が全速力で突進攻撃を仕掛けてくる。

反撃カウンター! 全軍攻撃開始!!」

 総数48体の泥人形マドゴーレムが石コロ入りの泥玉を巨大猪に向かって発射する。 数発を受けた猪は、ビックリしたのかUターンして射程外に逃げる。 ブルブルと身体を震わせて泥を落とす。 所々、血が滲んでいるのが見える。 初回の攻撃はこちらの優勢のようだが…。

 少し予想外でもあった。 思ったより踏み込んで来ない。 様子見している…のか? コレは油断は出来ない気がする。

 またもや、後ろ足を蹴り上げ、突進の態勢を取る猪。 俺はタイミングを見計らう。 ………来た!

「攻撃!」

 そう叫んだ瞬間だった、猪が横に跳ねる。 猪を狙った集中砲火は見事に外れ、右外側の泥人形マドゴーレム数体を撥ね飛ばすと、俺に向かって方向転換。 突進攻撃を仕掛けて来た。

「うおおおー!」

 間一髪で猪の突進を回避。

「全方位攻撃!! 撃ちまくれー!!」

 面での攻撃を嫌がった猪は、またもや距離を取る。「チッ」思わず舌打ちしてしまった。 もう集中砲火は出来ない。 外した時の隙がデカすぎる。 自分の大雑把な指示に、後悔の念を噛み締める。

 なんとかして隙を作らないと、正直ジリ貧だ。 何せ相手の無尽蔵な体力に対して、こっちの攻撃力が低すぎる。

 しかも奴は意外と慎重な性格なようで、深くは攻め込んで来ない。 先程も中央の俺に直進せず、端の戦力を削りながら、突進して来た。 隙を作るにしても奴の意表を突かなければならない。

「くそっ! 白旗あげて、降参したい気分だぜ!」

 しかし、それも奴には通じないだろう。 何せ猪だからな。 ハッキリ言って手詰まりだった。

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