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VS猪神②
しおりを挟む攻略の糸口が見えないまま、猪神の猛攻は続く。 突進と言う単純明解な攻撃方法故、回避に専念すれば直撃を喰らうことはないが、端から泥人形がガンガン減っていく。 俺自身も日頃の運動不足が祟ったか、息を整えるのがやっとの状況だった。
その間にも奴は後脚を掻き上げて、再度突進の準備に入る。 くそっ、万事休すか…。
相手が突進してくるのを確認し、泥人形達に全方位攻撃の指示を出す。 猪は右へ左へと身体を振るわせ泥玉のダメージを減少させ、やはり端の泥人形を削り取ると俺に向かって突進攻撃をするために急激な方向転換を行う。 視界の端に映る猪の影に戦慄が走る。
呼吸が苦しい、脚が震える、体が重い、全身が鉛にでもなったかのようだ。
「…あ、死んだわ、コレ」
呆気ない…。 そう思うと途端に何もかも楽になる感覚が襲いかかり、脚から力が抜けて、立っているのも儘ならない。 生を諦めた人間がこれ程までに無力だとは…。
「カミサマッ!!」
ナビコの呼び声で急激に現実に引き戻される。 もはや目と鼻の先に猪が迫っていた。 両手をクロスさせ一応は防御の態勢を取る。 取ることが出来た。
当然、防御ごと吹っ飛ばされるが、辛うじて受け身に成功、突進の勢いを軽減し、追撃を喰らわないように重い脚を奮い立たせる。
「ありがとう、助かった」
ナビコに礼を言うと、猪から追撃を避けるために移動を開始する。
ここで勝負の流れが大きなうねりを見せる、勝ちを焦った猪は更に追撃を行うためにUターンをしようとしていた。
その瞬間、猪は泥人形の破片に脚を取られて態勢を崩す。 予想外のチャンス到来に俺は吼える。
「集中砲火!撃てーっ!!」
泥人形達の泥と石礫の雨が猪に向かって降り注ぐ。 しかし、まだ足りない。 これでは致命傷は与えられない。 殺しきることは出来ない。
「うおぉぉぉおおおおおおおおお!!!」
猪に向かって全力疾走。 そのままの勢いでタックルし脚を取る。 横たわり、もがく猪の脚を掴み、立ち上がれない様に脚に抱きつく。 その間も泥と石礫の雨が俺自身にも降り注ぐが、知ったことかっ!
血と泥に塗れながら、降り注ぐ石と猪の後脚から繰り出される強烈なキックで身体中がボロ雑巾のようになっているが、このチャンスは見逃せない。 必死で奴の息の根を止める方法を模索する。
せめて鈍器として使える大きさの石があれば、トドメを刺せたかも知れないが今は無い。 撲殺は不可だ。
刺殺、絞殺、毒殺、射殺、殴殺、轢殺、焼殺、爆殺、悩殺、強殺、斬殺、溺殺、感電殺、堕落殺、呪殺、笑殺、惨殺、残殺、銃殺、重殺、扼殺、圧殺、自殺、屠殺、虐殺、故殺、暗殺、刑殺、飼殺、忙殺、謀殺、抹殺、封殺、黙殺、他殺、相殺、滅殺、激殺、撃殺、噛殺、血殺、通殺、薬殺、生殺、要殺、禁殺、鏖殺、縊殺、粛殺、罵殺、窒息殺、etc…。
駄目だ、いい案が思いつかな…。
…ん? なんかあったぞ?
窒息殺…。 一気に頭の中の曇りが裂けて、晴れやかな風が俺の内側を突き抜けていき、勝利への道のりが急に姿を現す。
あとは走るだけだ。
「うおぉぉぉおおおぁああああ!!」
俺は精一杯の気合いと共に全身の力を右手に込めて、猪の下顎目掛けて鉄拳を繰り出した。
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