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第1章・第2節:未来からのメッセージ
締め切りギリギリにならないように
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ある日突然、未来の自分からのメッセージをまとめたという本が手元に来て数日経った。
少しずつ読み進めていくと、その時々に必要なアドバイスが書かれていたのであった。
もはや若い男にとって、ただただ”疑わしい本”であったその本は、今では明日への道しるべとしてその地位を確立していた。
朝、昨日まとめた資料を依頼通りにコピーするためにコンビニへ立ち寄ろうと、早めに寮を出た。いつも一緒に行く同期には、昨日のうちに早めに出ることだけ伝えておいた。こういう小まめな連絡が信頼を作っていく。YELLに書かれていた事を思い出した。
いつもより早い時間に会社の最寄り駅に着いた。出社まではまだ時間がある。
そのまま近くのコンビニで時間を潰してもよかったが、朝のコンビニは慌ただしく人が入っては出ていき、とても長居して良い雰囲気では無かった。
若い男は、コピー機の利用だけ済ませて、早々にコンビニを後にした。
行く当てをなくしてしまったこともあり、いつもより少し早めに会社に向かうことにした。
まだ静かなオフィス街。春の日差しに包まれて、より洗練された雰囲気が漂っている。
「おはようございます」
挨拶をしながら研修室に入っていくと、すでに何人かの同期は出社していた。
昨日資料のコピーをお願いしてきた同期ももう出社していて、報告書作成を早々と始めていた。
「おはよう、早いね」
「あ、おはよう。早く着いちゃったから、報告書早めに終わらせたいなと思って、残業したくないからさ」
何時から来ていたかはわからないが、出社前に買ったと思われるアイスコーヒーは、氷が溶けて薄くなっているように見えた。
「そうそう。はい、昨日頼まれていたメモのコピー」
「わー。佐藤君ありがとう」
「このくらいなんでもないよ、いつでも言って」
「すごい助かる」
気になっていた箇所があったのだろうか。彼女はコピーを受け取り、笑みを浮かべながら、早速コピーの束に目を通し始めた。
「俺もやらないとな」
彼女に感化されて、パソコンを立ち上げて、仕掛かっていた報告書の続きを書き始める。
”社内の提出物は締め切りギリギリに出してはならない。余裕を持ってスケジュールを立てて早めに仕上げるようにする”
”数分で終わるようなタスクは、先送りにせずその場で終わらせるクセをつけよう”
一応書く時間を夕方には取るといわれていたが、早めに終わらせるに越したことはない。
今日の夕方までに報告書を提出すると思っていた新人達が、実は報告書は1週間以内に提出すれば良かったというのを知ったのは、この後の朝の会であった。
「このメモ、本当に見やすいし、わかりやすいよ」
「そう?」
「ほんと、助かったよ」
「いやいや、役に立って良かった」
ー メモが誰かの役に立つ事ってあるんだな。
若い男ははにかみながら、報告書の作成を進めた。
少しずつ読み進めていくと、その時々に必要なアドバイスが書かれていたのであった。
もはや若い男にとって、ただただ”疑わしい本”であったその本は、今では明日への道しるべとしてその地位を確立していた。
朝、昨日まとめた資料を依頼通りにコピーするためにコンビニへ立ち寄ろうと、早めに寮を出た。いつも一緒に行く同期には、昨日のうちに早めに出ることだけ伝えておいた。こういう小まめな連絡が信頼を作っていく。YELLに書かれていた事を思い出した。
いつもより早い時間に会社の最寄り駅に着いた。出社まではまだ時間がある。
そのまま近くのコンビニで時間を潰してもよかったが、朝のコンビニは慌ただしく人が入っては出ていき、とても長居して良い雰囲気では無かった。
若い男は、コピー機の利用だけ済ませて、早々にコンビニを後にした。
行く当てをなくしてしまったこともあり、いつもより少し早めに会社に向かうことにした。
まだ静かなオフィス街。春の日差しに包まれて、より洗練された雰囲気が漂っている。
「おはようございます」
挨拶をしながら研修室に入っていくと、すでに何人かの同期は出社していた。
昨日資料のコピーをお願いしてきた同期ももう出社していて、報告書作成を早々と始めていた。
「おはよう、早いね」
「あ、おはよう。早く着いちゃったから、報告書早めに終わらせたいなと思って、残業したくないからさ」
何時から来ていたかはわからないが、出社前に買ったと思われるアイスコーヒーは、氷が溶けて薄くなっているように見えた。
「そうそう。はい、昨日頼まれていたメモのコピー」
「わー。佐藤君ありがとう」
「このくらいなんでもないよ、いつでも言って」
「すごい助かる」
気になっていた箇所があったのだろうか。彼女はコピーを受け取り、笑みを浮かべながら、早速コピーの束に目を通し始めた。
「俺もやらないとな」
彼女に感化されて、パソコンを立ち上げて、仕掛かっていた報告書の続きを書き始める。
”社内の提出物は締め切りギリギリに出してはならない。余裕を持ってスケジュールを立てて早めに仕上げるようにする”
”数分で終わるようなタスクは、先送りにせずその場で終わらせるクセをつけよう”
一応書く時間を夕方には取るといわれていたが、早めに終わらせるに越したことはない。
今日の夕方までに報告書を提出すると思っていた新人達が、実は報告書は1週間以内に提出すれば良かったというのを知ったのは、この後の朝の会であった。
「このメモ、本当に見やすいし、わかりやすいよ」
「そう?」
「ほんと、助かったよ」
「いやいや、役に立って良かった」
ー メモが誰かの役に立つ事ってあるんだな。
若い男ははにかみながら、報告書の作成を進めた。
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