YELL~未来からのメッセージ~

ブックリーマン

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第2章・第1節:出会いと別れ

モヤモヤの言語化

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「すいません。いや、そんな優秀な方なら今後のキャリアとかどう考えているのかなと思いまして。例えば転職とか起業とか?早く昇進された方の中には、現状に物足りなさを感じる方も多いと聞きます。その辺、孝一さんはいかがでしょうか?」
佐藤の内側を探るように片岡は話を続ける。

「私自身、今の会社を創業したのは、ちょうど孝一さんのように社会人になって数年経った頃でした。仕事の進め方とかで保守的な周囲と温度差を感じるようになって」

ー あぁ、なんか最近自分が感じていた違和感ってそういうことなのかな。
内面でふわふわしていた形のない感情が、一気に言語化されたように感じながら片岡の話を聞き入った。

「つまり、結論から言えば、孝一さんのネクストステージに向けたキャリアアップを私に支援させていただけないかと思っています」

「実は俺も片岡さんの支援を受けて、今の会社へ転職したんだ」
黙って話を聞いていた太田が会話に入ってくる。
そういえば、コンサルタントの前は同じ IT 系の仕事をしていたと太田は話していたっけ。

「桃田先輩には怒られるかもしれないけど、孝一さんの今後のステップアップを考えたら、この辺で一度しっかりと”違う選択肢”を考えてみるのも良いかもしれないと友人の一人として思ったんだ」

ー 考えもしていなかった。今後のキャリアか。

社会人になって数年。目の前のことがある程度一人でできるようになってきた。太田さんの言うように、自分の今後を考える良い機会かもしれない。

「まあ、今日は顔合わせということなんで、孝一さんの人となりも知りたかった会ですし。すぐにどうこうしていきましょうという話ではないので」
「ぜひまた今度。当社の話とかも興味を持ってもらえたら嬉しいです」
「あ、決して高額な教材を買ってください。とかそういうことはないので安心してくださいね。」
真面目な話をしながら、時折おちゃらけてみせる。

笑顔を見せながら、不安に思うようなことを丁寧に紐解いていくように説明する。
この人はおそらく天性の人たらしなんだろうな。
話が上手で何も言われなかったら壺でも教材でも買ってしまいそうだ。

「じゃあ、私は次があるんで。楽しかったです、また連絡します」
片岡の携帯電話が鳴っている。次の呼び出しだろうか。

「ゆっくりしていってください、ここウチで持ちますので」
「今日はありがとうございました」
席を立とうとする太田と孝一を左手で制止して、挨拶も早々に席を立ち颯爽と去っていった。

「本当は忙しい方なんだよ」
「今日は紹介できて良かった」
「桃田さんには秘密にね。絶対にシメられる」

先輩の会社の後輩に転職を薦めるなんて、自分のことを本当に友人の一人として思ってくれてるんだろうな。分からないけれど悪い気はしなかった。

「じゃあこの後はいつものやっときますか」
太田と孝一は定期的に個人コンサル的に壁打ちをしてもらっていた。
現状の課題や仕事への取り組み状況などディスカッションしていく。

太田もコンサルの練習になるからと”コーヒー代を出してくれればよい”と快く引き受けてくれていた。

太田の壁打ちを受けながら、転職の2文字が頭に浮かんでは消え、消えては再び浮かんできた。
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