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第2章・第2節:届かないエール
大切なもの
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今日は散々な一日だった。玄関の扉がいつもよりも重たく感じる。
「ただいま・・・」
「おかえりー」
そんな孝一を奈々美は笑顔で出迎えた。
「あぁー、やっぱり」
「ん、何が」
「えー、今日は大変だったでしょう」
奈々美は全部見ていたかのような顔で、孝一の顔を覗き込んだ。
そんな眼差しに、慌てて表情を整えた。
「いや、そんなことないよ」
「昨日準備した資料でミーティングも・・・、うん、ミーティングも盛り上がったし」
「へぇー、ミーティングってそんなに盛り上がるんだ」
奈々美には、どんな顔に映っているのだろうか。
目が泳いだりしているのかもしれない。
ー 独りよがりな大立ち回りをして、空回りしてきました
そんなことは言いたくなかった。
「ふーん、ご苦労様でした。じゃあ、手洗ってきてね」
「それより、今朝腕時計忘れちゃってさ、この辺に置いてなかった?」
手を洗って戻ってきた孝一は、これ以上今日の職場での話に踏み込まれないように、話題をそらそうと奈々美に尋ねた。
「あったよ、あったよー」
「昨日の夕食の時に外して、そのままだったでしょ!」
奈々美は食卓に忘れられていた腕時計を、胸の前でしっかり両手で握って持ってきた。
「大切なものは、置きっぱなしにしないで、しっかりと持っていなさい」
奈々美の命令口調が愛らしい。
今日のガサガサした気分が、まるで降り積もった雪が溶けていくように、孝一の気持ちを落ち着かせた。
「はいはい」
「ありがとうは」
「はい、ありがとう」
「よし、じゃあご飯にしよう」
奈々美が夕飯の支度をしてくれている間に、書斎へ行くと片付けられている段ボールを見つけた。
自分の荷ほどきをしてくれたことにも気づいた。
食卓には二人分の夕食が並んでいる。遅い時間になってしまったが、食べずに待ってくれたようだ。
「奈々美、荷ほどきしてくれたの」
「フッフッフ。今日は特別だからね」
「重かったよー」
「そっか、悪い。ずっと忙しかったから後回しに」
「いーえ。しかし、すごい本の量ね」
「本棚に入る分だけ入れたけど、まだ少し残ってるわよ」
「あー、そっか」
孝一は箸を置き、顔を上げる。
「んー?」
「いや、うん。大丈夫ありがとう」
「場所も限られているから、読み終わった本、ちょっと処分しようかなって思って」
「助かるー。場所取ってるから、是非お願いしますね」
今日の出来事を思い返すと、落ち着いていた気持ちがふつふつと湧き上がってくる。
読み終えた本を取っておいても仕方がない。
この際だから、スッキリさせてしまおう。
その週末、持っていた本の大半を買取店に持ち込んだ。
一部、破損などの関係で値段が付かずに買取不可になってしまった本が何冊かあったが、買取額は、意外とそれなりの金額になった。
買取額を聞いた奈々美は驚いたが、あれだけ大量の本がポケットに収まる数千円になってしまったことに、孝一は思いのほかスッキリしなかった。
数冊だけが残され、真新しい本棚は、資料室から展示室のように姿を変えた。
その様子は、孝一の気持ちの変化を代弁しているようだった。
「ただいま・・・」
「おかえりー」
そんな孝一を奈々美は笑顔で出迎えた。
「あぁー、やっぱり」
「ん、何が」
「えー、今日は大変だったでしょう」
奈々美は全部見ていたかのような顔で、孝一の顔を覗き込んだ。
そんな眼差しに、慌てて表情を整えた。
「いや、そんなことないよ」
「昨日準備した資料でミーティングも・・・、うん、ミーティングも盛り上がったし」
「へぇー、ミーティングってそんなに盛り上がるんだ」
奈々美には、どんな顔に映っているのだろうか。
目が泳いだりしているのかもしれない。
ー 独りよがりな大立ち回りをして、空回りしてきました
そんなことは言いたくなかった。
「ふーん、ご苦労様でした。じゃあ、手洗ってきてね」
「それより、今朝腕時計忘れちゃってさ、この辺に置いてなかった?」
手を洗って戻ってきた孝一は、これ以上今日の職場での話に踏み込まれないように、話題をそらそうと奈々美に尋ねた。
「あったよ、あったよー」
「昨日の夕食の時に外して、そのままだったでしょ!」
奈々美は食卓に忘れられていた腕時計を、胸の前でしっかり両手で握って持ってきた。
「大切なものは、置きっぱなしにしないで、しっかりと持っていなさい」
奈々美の命令口調が愛らしい。
今日のガサガサした気分が、まるで降り積もった雪が溶けていくように、孝一の気持ちを落ち着かせた。
「はいはい」
「ありがとうは」
「はい、ありがとう」
「よし、じゃあご飯にしよう」
奈々美が夕飯の支度をしてくれている間に、書斎へ行くと片付けられている段ボールを見つけた。
自分の荷ほどきをしてくれたことにも気づいた。
食卓には二人分の夕食が並んでいる。遅い時間になってしまったが、食べずに待ってくれたようだ。
「奈々美、荷ほどきしてくれたの」
「フッフッフ。今日は特別だからね」
「重かったよー」
「そっか、悪い。ずっと忙しかったから後回しに」
「いーえ。しかし、すごい本の量ね」
「本棚に入る分だけ入れたけど、まだ少し残ってるわよ」
「あー、そっか」
孝一は箸を置き、顔を上げる。
「んー?」
「いや、うん。大丈夫ありがとう」
「場所も限られているから、読み終わった本、ちょっと処分しようかなって思って」
「助かるー。場所取ってるから、是非お願いしますね」
今日の出来事を思い返すと、落ち着いていた気持ちがふつふつと湧き上がってくる。
読み終えた本を取っておいても仕方がない。
この際だから、スッキリさせてしまおう。
その週末、持っていた本の大半を買取店に持ち込んだ。
一部、破損などの関係で値段が付かずに買取不可になってしまった本が何冊かあったが、買取額は、意外とそれなりの金額になった。
買取額を聞いた奈々美は驚いたが、あれだけ大量の本がポケットに収まる数千円になってしまったことに、孝一は思いのほかスッキリしなかった。
数冊だけが残され、真新しい本棚は、資料室から展示室のように姿を変えた。
その様子は、孝一の気持ちの変化を代弁しているようだった。
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