YELL~未来からのメッセージ~

ブックリーマン

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第2章・第3節:

噂話

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職場での桃田は理想の上司であり、よき先輩であった。

配下メンバー全員に分け隔てなく接して、一人一人の目線で物事を語ってくれる。
困ったことがあればいつでも親身に相談に乗ってくれた。

当然のことながら、顧客からの覚えも良く、多くのプロジェクトは桃田がいるからと成約することができた。
社内では誰しもが疑うことなく将来有望な社員の一人と認識していた。

そんな桃田が、周囲の期待をよそに他社への転職を考えているらしいと、
同期のめぐみから聞いたのは、新人歓迎会でのことだった。

最近、お客さんの社内ではこの話題で持ちきりらしい。

「そんな噂話、前にもあっただろ」

優秀な桃田は、その甘いマスクのせいもあり、何かと色恋の噂の的になってきた。

急に成績が上がった女性営業がいれば、実は桃田さんと付き合い始めたからだとか。
都内一等地に自社ビルを構える社長令嬢から、資産を全部譲るので交際を申し込まれているとか。

誰が面白可笑しく吹きまわっているのかは知らないが、自薦・他薦この手の話はいとまがなかった。

桃田もこれまでその手の話は笑って全否定してきているし、今回も同類の話に違いない。
孝一はいつものことだと冗談半分に聞いていた。

しかし、女子社員の間では噂の域は出ていないものの、ほぼ確定情報としてこれまでにない盛り上がりだという。

「誰がそんな話してるの」
「これが、相手として噂されている娘の同期が、相談されていることをうっかり口を滑らせてしまったとかで」

その相手とは、受付課にいる専務の一人娘だとかで、桃田さんがその専務にとても気に入られていて、将来は婿にしたいと縁談までまとまったらしいと。

さらに、専務の口添えで、うちの会社より、もっと待遇の良い会社に転職も決まったとのこと。

「いやいやいやー、うまくできすぎてるでしょ、そんなの」
フラフラの大塚が割って入ってくる。

「そうだよ、できすぎできすぎ」
「ももたさんーん、おれをみすてないでー」
「ちょっと、大塚さん飲みすぎですよ」

そもそも、そんな転職なんて重要な話があれば、まず自分にも話があるはず。
孝一は宴の席でのうわさ話に半信半疑ではあったものの、日に日に気になって仕方がなかった。
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