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第2章・第3節:
あの本は
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孝一は考え事をする際、よく電車の先頭車両に乗り込み、まっすぐ続く線路の上を電車が走っていく姿を運転席の窓から見るのが好きだった。
果てしなく続く線路の上を絶え間なく進んでいく様子がなんとも心地よかった。
線路を眺めながら考えに集中することができた。
ー 自分にはもっとふさわしい場所があるのかもしれない。
自分は会社に入ってから評価されることばかり優先してきてしまった。
もちろんその結果得たものもあった。
周囲の人間関係は常に慌ただしく変化をする。
それぞれの選択で退職していくもの、とどまるもの、しがみつくもの。
そんな人たちを目の当たりにして、自分も遅れを取らないように変わっていかなければならないのかと胸がザワザワする。
実はもう既に乗り遅れてしまっているのではないか?
この繰り返される歯車の 1 つとなってしまっているのか。
そんな焦燥感を抱かずにはいられなかった。
ふと思い出した。
ー そういえば、あの本ってどうしたっけ?
新しく過ごす日々の中ですっかり忘れていた。
未来の自分が書いたという。ある日送られてきた本”YELL”
いまの状況についても何か道しるべとなる答えが書いてあるかもしれない。
それと同時に、先日大量に処分してしまった蔵書のことを思い出した。
もしかしたら……、一緒に処分してしまったかも。
あぁ、しまった。早まった。
処分した本の中に”YELL”があったかどうかは定かではない。
買取りに持って行った時、買取り不可となった本が何冊かあった。
持って帰ってきた本と併せて、他にも処分する本があるからと、最終的に奈々美にお願いしたはずだ。
家に帰宅するのを待たずに、奈々美に連絡した。
「この前買取りしてもらえなかった本って、もう資源ゴミにだしちゃったんだっけ?」
「処分する?って言ってたやつ?うん、もう出したよ」
「まだ、持って行かれていなければ、資源ゴミ置き場にあると思うよ」
「何かはいってたの?」
「分かった。いや、ちょっと気になる本があったのを思い出して」
「もう一度、読み返したいと思ってたんだったよ」
「どんな本?」
- YELLって自分の名前が書いてある本とは言えなかった
いや、古い本だったからタイトルも忘れちゃったけど。
「まだ持ってかれていなければ。残ってるかもしれないよ」
「分かった。ありがとう、ちょっと帰りに見てみるよ」
帰宅するや、ゴミ収集場所に向かう。
資源ゴミ回収コーナーは、すでに綺麗に何も残っていなかった。
「いや。うん、これで良かったんだ」
もうあの未来から来たとかいう怪しい本に人生を左右されずに済む。
これからは自分で考えて行動していかないと。
家に帰ると奈々美が出迎えてくれた。
「どうだった?残ってた?」
「いや、なかったよ」
「大丈夫?もしかしたら、勘違いだったかもしれない」
「本当? ならいいけど」
孝一の内なる選択が決まった瞬間であった。
果てしなく続く線路の上を絶え間なく進んでいく様子がなんとも心地よかった。
線路を眺めながら考えに集中することができた。
ー 自分にはもっとふさわしい場所があるのかもしれない。
自分は会社に入ってから評価されることばかり優先してきてしまった。
もちろんその結果得たものもあった。
周囲の人間関係は常に慌ただしく変化をする。
それぞれの選択で退職していくもの、とどまるもの、しがみつくもの。
そんな人たちを目の当たりにして、自分も遅れを取らないように変わっていかなければならないのかと胸がザワザワする。
実はもう既に乗り遅れてしまっているのではないか?
この繰り返される歯車の 1 つとなってしまっているのか。
そんな焦燥感を抱かずにはいられなかった。
ふと思い出した。
ー そういえば、あの本ってどうしたっけ?
新しく過ごす日々の中ですっかり忘れていた。
未来の自分が書いたという。ある日送られてきた本”YELL”
いまの状況についても何か道しるべとなる答えが書いてあるかもしれない。
それと同時に、先日大量に処分してしまった蔵書のことを思い出した。
もしかしたら……、一緒に処分してしまったかも。
あぁ、しまった。早まった。
処分した本の中に”YELL”があったかどうかは定かではない。
買取りに持って行った時、買取り不可となった本が何冊かあった。
持って帰ってきた本と併せて、他にも処分する本があるからと、最終的に奈々美にお願いしたはずだ。
家に帰宅するのを待たずに、奈々美に連絡した。
「この前買取りしてもらえなかった本って、もう資源ゴミにだしちゃったんだっけ?」
「処分する?って言ってたやつ?うん、もう出したよ」
「まだ、持って行かれていなければ、資源ゴミ置き場にあると思うよ」
「何かはいってたの?」
「分かった。いや、ちょっと気になる本があったのを思い出して」
「もう一度、読み返したいと思ってたんだったよ」
「どんな本?」
- YELLって自分の名前が書いてある本とは言えなかった
いや、古い本だったからタイトルも忘れちゃったけど。
「まだ持ってかれていなければ。残ってるかもしれないよ」
「分かった。ありがとう、ちょっと帰りに見てみるよ」
帰宅するや、ゴミ収集場所に向かう。
資源ゴミ回収コーナーは、すでに綺麗に何も残っていなかった。
「いや。うん、これで良かったんだ」
もうあの未来から来たとかいう怪しい本に人生を左右されずに済む。
これからは自分で考えて行動していかないと。
家に帰ると奈々美が出迎えてくれた。
「どうだった?残ってた?」
「いや、なかったよ」
「大丈夫?もしかしたら、勘違いだったかもしれない」
「本当? ならいいけど」
孝一の内なる選択が決まった瞬間であった。
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