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我が名は蘆屋道満
翁と鬼と車と鳥と
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それは文字通りの瞬殺であった。
多少特異な血統であるとはいえここまで人間離れなミラに、道満も感心の一言であった。
(コレは予想外じゃ)
当初の道満の狙いは権天使からくすねた聖剣がどれほどのものか試したかっただけだったのだ。
もしも屈伏させたとしても精神は磨耗し、感情のなくなった『天使』か、それとも狂った『鬼』になるかどちらかだと踏んでいたのだ。
しかし彼女はどちらでもない。『鬼』としての角、黒くなろうとも聖火を操る『天使』の技、そして『人』としての感情、全てを兼ね備えていた。
鬼とは魔に堕ちた人間のことを指す。内外かまわず負の感情を溜め込み、陰の方に傾倒すると魔に堕ち鬼となる。半魔という半端者も存在するがそれは『鬼が理性を残している』と言う状態で鬼である事に違いはない。
天使も同様で、つまり『人間』と『鬼』、『人間』と『天使』が同時に存在することはなく、半分鬼、半分天使という状況は『矛盾』しているといって良い。
しかし現在のミラはその矛盾を体現させている。
それどころか『人間』としての理性も留めたままであり、人、天使、鬼と三点それぞれ対極に存在する事象がミラという一点で融けあい成立している。太極図でも表わせない【三次元的陰陽螺旋】。こんな物は道満でも知らない。
(つくづくこの世界には驚かされる…)
元の世界では決してあり得なかった出来事。それはミラが特殊だからなのか、この世界が、そうさせたのか、どちらにせよ道満にとっては数百年ぶりの驚きであった。
道満は、敵を切り終え立ち尽くしたミラに背後から声をかけた。
「どうじゃ、報復の味は?甘かったか?辛かったか?」
「…………これ程苦いものはないな、…………だがいくらか心がスッキリしているのも確かだ」
道満からは見えないがミラは地面に目を伏せたまま苦笑いを浮かべた。
「なんじゃその珈琲の感想みたいなのは…」
何を期待していたのかは推して知るべしだが、道満はミラのサッパリとした感想に残念そうだ。
「カーネル達の仇は討った、次はどうしようか主人よ」
くるりと振り向いたミラは涙の跡が色濃く残っているが、誤魔化すように明るい語調で言った。
「そうじゃな、先に貴様の『名』を決めるとしよう」
「名前か?私はミラという名を捨てたくはないぞ!」
母との唯一の繋がりである名前はミラにとっては大切なものであった。
「ちがう、わしが言っておるのは『式神』としての名じゃ。貴様の存在は不安定じゃからな、名を与え現世に留めるのじゃ」
「むぅ…、よく分からないが、必要な事なら早く済ませてしまおう」
「では…鬼であり、天使か…まぁそんなもの『鵺』とでも呼べば良いが安直過ぎるか、…………何だか考えるのが面倒になってきたの…」
「おい、ちょっと待て、名付けるなら真面目にやってくれないか?それは後から変えられるものなのか?」
「いんや?名は其の者のあり方を示す、変えられるなら法則が乱れる」
「なら真面目にやってくれ!!」
喚くミラ。外見が変わろうと彼女は十代の女の子である。
「うむ……、仕方がないが枠の一つを使うか。貴重な素体じゃ、高待遇でなければな?」
ニヤニヤと笑う道満は袖口から巻物を取り出し広げる。そこにはミラの見たこともない字が墨で書かれていた。
「…少し血を出せ」
「おお!何だか魔術っぽいな」
ミラは指先を少し噛み、血を滲ませるとそれを巻物の上に垂らした。
「………汝、ミラ・ペロールよ。貴様の式神としての名は【夜叉】。八部衆が鬼、汝は主人を守護する護法なり。汝の御魂は我と共に…」
幾何学的な光の線が2人の中に広がり消えた。
「少しばかり力が満ちたような気がするぞ…。成る程『繋がった』、蘆屋道満貴方がどういう存在か理解した…」
呪術により魂の繋がりを得たミラは、道満から流れてくるものを疑う事なく受け止めた。
「ではこれからどうする?取り敢えずワシは世界を見られれば良い、千年過ごせば時間には寛容じゃよ」
「私はもう人間ではないからな、私の中で人間としての私、鬼としての私、天使としての私で感じ方が違うようだ」
「ほぅ?それは貴重な意見じゃな」
道満にとっては今のミラの一挙手一投足が興味深いものであった。
「だが怒りや憎しみ、負の感情は鬼の領分のようだからな。だから私は鬼の意見を通すことにした!」
ミラは瞳を閉じて力を込める。次に出す言葉を悲願とする覚悟なのだ。
「ペルドラゴ帝国を潰す……」
そよ風が2人の間を駆け抜ける。僅かばかりの沈黙。そして次に起きたのは笑い声であった。
「カッカッカッカッカッ!!まさか齢十とそこそこの娘が齢千年を越えたワシも叶わんかった『國落とし』をしようとは!!傑作じゃ!大傑作じゃ!面白い!面白いゾォ!部下の願いじゃ、わしも一口噛むとしよう!!」
道満の笑い声は森に住むもの全てに恐怖を与える魔王の笑い声であったろう。
「ありがとう、主人。小娘の願いを聞き入れてくれて」
頭を下げようとするミラ。しかし静止の手が出た。
「何、久遠の時を生きたワシにちょっとやそっとの刺激では足りぬ。貴様の演劇、見とぉなった。劇には鑑賞料が必要じゃろ?ワシはただ対価を払うだけじゃ、……まずは第1部、貴様は何を成す?」
「ペルドラゴ帝国と仲の悪いラーロット王国に渡ろうと思う」
「その心は?」
「王国で富を築き、帝国の既得権益をむしり取る!!」
握り拳を掲げそう叫ぶミラ。
「ほぉ!貴様は何か金のなる木を持っておるのか!」
「ない!でもここにある!!」
その言葉を理解出来ず、首をかしげる道満。
しかしすぐにその言葉の意味を理解する。
「き、貴様、まさか!?」
「せっかくお小遣いが貰えるなら、貰えるだけ貰わないと、ね?主人の異世界の知識、存分に披露してもらいますよ?」
「貴様ァ?!計ったなあ!やはり女は魔性よ!梨花も夜具の中では甘い声を出しておきながら状況が悪くなるとひょこり晴明の元に帰りよってからにィ!!」
キレる道満。何か彼のトラウマを踏んでしまったようだ。
「批判に託けて自分の寝取り話をうら若き乙女にしないでください!」
赤面しながら訴えるミラ。
「何か乙女じゃ!どうせ檻の中で散々花を散らされたじゃろうに!!」
大人げなく言い返す道満。
「されてませんよ………あいつら…お尻が大きい方が良いだの、…………胸がある方が良いだの…………散々な言葉ぶつけた挙句、手を出されませんでしたよ…………」
光のない目で自分の胸にで当てながら、底冷えする様な声が響いた
「「…………………」」
盛大な自爆により閉幕した口論は気まずい雰囲気だけを残していた。
「………なんじゃ、もう日が暮れる。さっさと山を降りるとしよう」
「ソーデスネ、デ?ドウヤッテ降リルンデスカ?」
覇気の無い声で答えるミラ。
「車を使う」
「クルマ?」
頭をひねるミラ。道満の眷属となったことで僅かではあるが異世界の常識というものを手に入れた様だ。
「クルマってあの鉄の馬車ですか?」
「そうじゃよ機械に【思業式】を組み込む事で式神化させておるのじゃ」
取り出した札に霊力を込める。輝き出した呪符は道満の手を離れかたちを変えて行く。
光が収まるとそこには大型車が停まっていた。
それは全ての道を走れる事を想定して作られた高級車。『ランドクルーザー』の名で知られるパワー車である。
「おお~」
初めて見る車に感動したミラは車の周りをクルクルと回り出した。
(機嫌も直ったか)
まるで幼子の様に窓ガラスを覗き込むミラはある事に気がついた。
「主人、これはどの様に動かすつもりなのだ?主人が運転を?」
「別で新たな式を呼ぶ、貴様の同僚じゃ、仲良うせいよ」
取り出したのは黒い呪符。ミラが貼り付けられたもの同じである。
「ワシの声に答えよ【迦楼羅】」
突然札は火に包まれる。ミラの黒炎とは違う正真正銘の焔である。エネルギーに溢れた焔は徐々に形を変え次第に人型を取って行った。
「【かるら】なんて、だれが読めるよ~?、ちゃんとセイランって呼びなさいよ!」
現れたのは一言で『派手』な男であった。
髪は燃えるように逆立つ赤髪、ダンサーを思わせるしなやかで筋肉質な身体に長い手足。髪と同じ様に赤い社交ダンス衣装の様な派手な服は胸元がV字に大きく開かれ立派な大胸筋が見えていた。
「なにぃ~お嬢ちゃん?固まっちゃってかわいいワ~………、あら!あらあら?!貴女もしかして式神!?」
驚いた迦楼羅は道満に顔を向ける。
「そうじゃよ、此奴が【夜叉】に就くことになったミラじゃ」
「あはははは、まさかこんな可愛い子が入るなんてぇ~、そのツノは鬼?でも何か混ざってるわねぇ…」
「聖剣を依り代しておるからな、天使の技も使えるぞ」
「ヘェ~、凄いじゃない貴女、この狂人が楽しそうにしているところなんて中々見れないわよ?」
「…あ…あの…貴方はだれ…でしょうか?」
いきなり現れた真っ赤なオネェに情報処理がある追いつかなかったミラはやっと声を発する。
「はじめましてね、お嬢さん。アタシの名前はセイラン。蘆屋道満の護法式【八部衆】から【迦楼羅】の名を授かった不死鳥よ。ヨロシク」
笑顔で手を出すセイランに慌てて手を取るミラ。
「よ…よろしくお願いします、ミラ・ペロールです」
「可愛いわねぇ、ほら道満、姉妹に見えるでしょ?」
「言霊を用いずワシに寒気を感じさせるとは…やるの」
「あら?その『入れ物』燃やすわよ?」
ジッと睨み合う2人とも身長差はかなりあるが纏う霊力はまるで龍と虎の様に見えた。
「まぁまぁお二人共その辺にしましょ?」
ミラの仲裁に二人は霊力を引っ込める。
「…ったく、で?アタシを呼んだのはどおして?」
「貴様にこの『ヨシダ』を動かして貰おうとな」
(その車、ヨシダって言うんですね)
ミラは間違った知識を手に入れた。
「あらなんだ、そんな事?こんな山奥で何やってんのよ…ていうかここ何処なの?」
「異世界じゃよ?」
その日山中に汚いオネェの悲鳴が響き渡り、近くの村では山の神の怒りだと認識され多くの捧げものがされたとかなんとか。
多少特異な血統であるとはいえここまで人間離れなミラに、道満も感心の一言であった。
(コレは予想外じゃ)
当初の道満の狙いは権天使からくすねた聖剣がどれほどのものか試したかっただけだったのだ。
もしも屈伏させたとしても精神は磨耗し、感情のなくなった『天使』か、それとも狂った『鬼』になるかどちらかだと踏んでいたのだ。
しかし彼女はどちらでもない。『鬼』としての角、黒くなろうとも聖火を操る『天使』の技、そして『人』としての感情、全てを兼ね備えていた。
鬼とは魔に堕ちた人間のことを指す。内外かまわず負の感情を溜め込み、陰の方に傾倒すると魔に堕ち鬼となる。半魔という半端者も存在するがそれは『鬼が理性を残している』と言う状態で鬼である事に違いはない。
天使も同様で、つまり『人間』と『鬼』、『人間』と『天使』が同時に存在することはなく、半分鬼、半分天使という状況は『矛盾』しているといって良い。
しかし現在のミラはその矛盾を体現させている。
それどころか『人間』としての理性も留めたままであり、人、天使、鬼と三点それぞれ対極に存在する事象がミラという一点で融けあい成立している。太極図でも表わせない【三次元的陰陽螺旋】。こんな物は道満でも知らない。
(つくづくこの世界には驚かされる…)
元の世界では決してあり得なかった出来事。それはミラが特殊だからなのか、この世界が、そうさせたのか、どちらにせよ道満にとっては数百年ぶりの驚きであった。
道満は、敵を切り終え立ち尽くしたミラに背後から声をかけた。
「どうじゃ、報復の味は?甘かったか?辛かったか?」
「…………これ程苦いものはないな、…………だがいくらか心がスッキリしているのも確かだ」
道満からは見えないがミラは地面に目を伏せたまま苦笑いを浮かべた。
「なんじゃその珈琲の感想みたいなのは…」
何を期待していたのかは推して知るべしだが、道満はミラのサッパリとした感想に残念そうだ。
「カーネル達の仇は討った、次はどうしようか主人よ」
くるりと振り向いたミラは涙の跡が色濃く残っているが、誤魔化すように明るい語調で言った。
「そうじゃな、先に貴様の『名』を決めるとしよう」
「名前か?私はミラという名を捨てたくはないぞ!」
母との唯一の繋がりである名前はミラにとっては大切なものであった。
「ちがう、わしが言っておるのは『式神』としての名じゃ。貴様の存在は不安定じゃからな、名を与え現世に留めるのじゃ」
「むぅ…、よく分からないが、必要な事なら早く済ませてしまおう」
「では…鬼であり、天使か…まぁそんなもの『鵺』とでも呼べば良いが安直過ぎるか、…………何だか考えるのが面倒になってきたの…」
「おい、ちょっと待て、名付けるなら真面目にやってくれないか?それは後から変えられるものなのか?」
「いんや?名は其の者のあり方を示す、変えられるなら法則が乱れる」
「なら真面目にやってくれ!!」
喚くミラ。外見が変わろうと彼女は十代の女の子である。
「うむ……、仕方がないが枠の一つを使うか。貴重な素体じゃ、高待遇でなければな?」
ニヤニヤと笑う道満は袖口から巻物を取り出し広げる。そこにはミラの見たこともない字が墨で書かれていた。
「…少し血を出せ」
「おお!何だか魔術っぽいな」
ミラは指先を少し噛み、血を滲ませるとそれを巻物の上に垂らした。
「………汝、ミラ・ペロールよ。貴様の式神としての名は【夜叉】。八部衆が鬼、汝は主人を守護する護法なり。汝の御魂は我と共に…」
幾何学的な光の線が2人の中に広がり消えた。
「少しばかり力が満ちたような気がするぞ…。成る程『繋がった』、蘆屋道満貴方がどういう存在か理解した…」
呪術により魂の繋がりを得たミラは、道満から流れてくるものを疑う事なく受け止めた。
「ではこれからどうする?取り敢えずワシは世界を見られれば良い、千年過ごせば時間には寛容じゃよ」
「私はもう人間ではないからな、私の中で人間としての私、鬼としての私、天使としての私で感じ方が違うようだ」
「ほぅ?それは貴重な意見じゃな」
道満にとっては今のミラの一挙手一投足が興味深いものであった。
「だが怒りや憎しみ、負の感情は鬼の領分のようだからな。だから私は鬼の意見を通すことにした!」
ミラは瞳を閉じて力を込める。次に出す言葉を悲願とする覚悟なのだ。
「ペルドラゴ帝国を潰す……」
そよ風が2人の間を駆け抜ける。僅かばかりの沈黙。そして次に起きたのは笑い声であった。
「カッカッカッカッカッ!!まさか齢十とそこそこの娘が齢千年を越えたワシも叶わんかった『國落とし』をしようとは!!傑作じゃ!大傑作じゃ!面白い!面白いゾォ!部下の願いじゃ、わしも一口噛むとしよう!!」
道満の笑い声は森に住むもの全てに恐怖を与える魔王の笑い声であったろう。
「ありがとう、主人。小娘の願いを聞き入れてくれて」
頭を下げようとするミラ。しかし静止の手が出た。
「何、久遠の時を生きたワシにちょっとやそっとの刺激では足りぬ。貴様の演劇、見とぉなった。劇には鑑賞料が必要じゃろ?ワシはただ対価を払うだけじゃ、……まずは第1部、貴様は何を成す?」
「ペルドラゴ帝国と仲の悪いラーロット王国に渡ろうと思う」
「その心は?」
「王国で富を築き、帝国の既得権益をむしり取る!!」
握り拳を掲げそう叫ぶミラ。
「ほぉ!貴様は何か金のなる木を持っておるのか!」
「ない!でもここにある!!」
その言葉を理解出来ず、首をかしげる道満。
しかしすぐにその言葉の意味を理解する。
「き、貴様、まさか!?」
「せっかくお小遣いが貰えるなら、貰えるだけ貰わないと、ね?主人の異世界の知識、存分に披露してもらいますよ?」
「貴様ァ?!計ったなあ!やはり女は魔性よ!梨花も夜具の中では甘い声を出しておきながら状況が悪くなるとひょこり晴明の元に帰りよってからにィ!!」
キレる道満。何か彼のトラウマを踏んでしまったようだ。
「批判に託けて自分の寝取り話をうら若き乙女にしないでください!」
赤面しながら訴えるミラ。
「何か乙女じゃ!どうせ檻の中で散々花を散らされたじゃろうに!!」
大人げなく言い返す道満。
「されてませんよ………あいつら…お尻が大きい方が良いだの、…………胸がある方が良いだの…………散々な言葉ぶつけた挙句、手を出されませんでしたよ…………」
光のない目で自分の胸にで当てながら、底冷えする様な声が響いた
「「…………………」」
盛大な自爆により閉幕した口論は気まずい雰囲気だけを残していた。
「………なんじゃ、もう日が暮れる。さっさと山を降りるとしよう」
「ソーデスネ、デ?ドウヤッテ降リルンデスカ?」
覇気の無い声で答えるミラ。
「車を使う」
「クルマ?」
頭をひねるミラ。道満の眷属となったことで僅かではあるが異世界の常識というものを手に入れた様だ。
「クルマってあの鉄の馬車ですか?」
「そうじゃよ機械に【思業式】を組み込む事で式神化させておるのじゃ」
取り出した札に霊力を込める。輝き出した呪符は道満の手を離れかたちを変えて行く。
光が収まるとそこには大型車が停まっていた。
それは全ての道を走れる事を想定して作られた高級車。『ランドクルーザー』の名で知られるパワー車である。
「おお~」
初めて見る車に感動したミラは車の周りをクルクルと回り出した。
(機嫌も直ったか)
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「主人、これはどの様に動かすつもりなのだ?主人が運転を?」
「別で新たな式を呼ぶ、貴様の同僚じゃ、仲良うせいよ」
取り出したのは黒い呪符。ミラが貼り付けられたもの同じである。
「ワシの声に答えよ【迦楼羅】」
突然札は火に包まれる。ミラの黒炎とは違う正真正銘の焔である。エネルギーに溢れた焔は徐々に形を変え次第に人型を取って行った。
「【かるら】なんて、だれが読めるよ~?、ちゃんとセイランって呼びなさいよ!」
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髪は燃えるように逆立つ赤髪、ダンサーを思わせるしなやかで筋肉質な身体に長い手足。髪と同じ様に赤い社交ダンス衣装の様な派手な服は胸元がV字に大きく開かれ立派な大胸筋が見えていた。
「なにぃ~お嬢ちゃん?固まっちゃってかわいいワ~………、あら!あらあら?!貴女もしかして式神!?」
驚いた迦楼羅は道満に顔を向ける。
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「あはははは、まさかこんな可愛い子が入るなんてぇ~、そのツノは鬼?でも何か混ざってるわねぇ…」
「聖剣を依り代しておるからな、天使の技も使えるぞ」
「ヘェ~、凄いじゃない貴女、この狂人が楽しそうにしているところなんて中々見れないわよ?」
「…あ…あの…貴方はだれ…でしょうか?」
いきなり現れた真っ赤なオネェに情報処理がある追いつかなかったミラはやっと声を発する。
「はじめましてね、お嬢さん。アタシの名前はセイラン。蘆屋道満の護法式【八部衆】から【迦楼羅】の名を授かった不死鳥よ。ヨロシク」
笑顔で手を出すセイランに慌てて手を取るミラ。
「よ…よろしくお願いします、ミラ・ペロールです」
「可愛いわねぇ、ほら道満、姉妹に見えるでしょ?」
「言霊を用いずワシに寒気を感じさせるとは…やるの」
「あら?その『入れ物』燃やすわよ?」
ジッと睨み合う2人とも身長差はかなりあるが纏う霊力はまるで龍と虎の様に見えた。
「まぁまぁお二人共その辺にしましょ?」
ミラの仲裁に二人は霊力を引っ込める。
「…ったく、で?アタシを呼んだのはどおして?」
「貴様にこの『ヨシダ』を動かして貰おうとな」
(その車、ヨシダって言うんですね)
ミラは間違った知識を手に入れた。
「あらなんだ、そんな事?こんな山奥で何やってんのよ…ていうかここ何処なの?」
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