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我が名は蘆屋道満

閑話休題其の壱

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ラーロット王国においてホットな話題がいくつか出ている。その中でも最も国民の関心を集めているのは、やはり新進気鋭のCランク冒険者チーム『陰陽』であろう。

彼らはたった3人であの元Sランク冒険者『豪腕』のガエンを入会試験で倒してしまったのだ。引退したからと言ってレッサーワイバーンを素手で狩る男をまさかの丸刈りにし、抵抗出来ぬよう魔術で縛り上げたとの事。どこまで事実かは弊社でも把握できぬ処だが、少なくともガエン本人はその事を語ろうとせず、最近ニット帽をかぶるようになった。

彼ら『陰陽』は構成メンバーが変わっている。リーダーであるドウマンは見かけでは80歳を超える老人だ。本当の年齢を尋ねると「千年は生きている」と軽快なジョークで返してくれた。
彼の魔術師としての力は凄まじく、札を使った『陰陽術』は全属性に対応しており、様々なバフを身体に与える『仙術』による高速移動は怪鳥ドリルホークを超える。更には魔道具制作にも明るいという。もしかしたらこの国の一等宮廷魔術師リリア・アイオーンを超えるかも知れない。さらに後の二人は彼の従者であるらしい。彼は一体何者なのだろうか?

その従者の一人、セイランと名乗る派手な赤毛の男も凄い。彼は魔術師として火属性魔術を扱うがその技量は現代魔術理論を大きく逸脱している。全身に炎を纏い、そのまま近接格闘を行うのだ。その蹴りは、レッドボアの上位種ブラックボアの突進を蹴りで受け頭蓋骨を砕いてしまった。彼曰く「炎だけならあのジジイに負ける事はないわぁ」との事。炎を纏う必要性について問いただしたい。化粧をして奇抜な格好をしているが顔立ちは整っているためその強さと相まって密かな女性ファンを集めていたりするらしい。やはり男は顔なのだろうか?

そして最後の一人は今最も注目の人物だと言っていい。

ミラ・アシヤと言う名前を聞いたことのない者はいないだろう。黒髪、黒いツノ、緋色の眼と言う伝説の鬼人族『黒鬼』の特徴全てを持った美しい鬼人族の少女だ。魔剣を携えているにも関わらず普段は独特の形をしたロングソード(ドウマン曰く『カタナ』というらしい)で数多の魔物を狩るその姿は多くの男性冒険者を魅了して止まない。
本物の黒鬼ではないのかと巷で話題になっているが、鬼珠を用いた検査では魔力の注入過多で破壊してしまう珍事を起こし、答え合わせは見送りとなってしまったとの事。ちなみに街灯アンケートによるとやはり黒鬼が一番予想のようだ。
彼女にもファンクラブが存在し、陰ながら彼女を応援しているとの事。最近は彼女に纏わりつく衛兵の少年ストーカーをどうするかで会議を重ねている。血が流れなければ良いが…

突如として現れた謎多き冒険者チーム『陰陽』!

我々は今後とも彼らの動向に注目していきたい!!


~デイリー・ラーロット・タイムリー新聞記者 ロバート・ジョナサン 著
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