あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

やじるし 06

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「ばーか、殺す訳ないだろ。話をしたいだけだ」
「あら、残念」

もう一度、コツンと額と額をぶつけて少年を睨む。
彼はわざとらしく目を見開いて肩を竦ませた。

「……僕、お兄さんが人を突き落として、フェンスに細工しているところ、見ましたよ。でも、誰かに言うつもりはないし、それで貴方を脅す気もないので、安心して下さい。殺して貰いたいけど、趣味に反するなら仕方ないですよね」

青年の話の内容を解っていたかのように、少年はスラスラと述べていく。
じっ、と青年を見据えていた。
すっ、と視線を避けるように青年は、少年から目をずらす。

「ならいい。話はそれだけ。殺しも諦めてくれたなら有り難いね」

片手で体重を支え、もう片手で少年の髪をくしゃりと掴む。
整髪料は何もつけていないのだろう。
ふわりとした髪は、掴んだところだけが歪に形を変える。
少年は唇を舐めると双眸を眇めた。

「諦めてはいないけど。お兄さんがその気になるように、生きる楽しみでも探しますよ」

建設的なんです、とはにかむように口端を僅かに上げる少年の本心は掴みかねた。
青年の手が乱暴に彼の髪を乱していくが、癖が強いのだろう、すぐにキノコにと形を戻してしまう。

「くっそ、お前の髪、シリアスな話向きじゃねぇな。笑っちまうじゃねえか。何とかしろよ」

ぶはっ、と息を吐き出し、笑いを堪えようと顔を歪める青年に、少年は頬を膨らませた。

「無理ですよー。何とかなるならとっくにやってます。それに、キノコさんは僕のアイデンティティーとなりつつあって、そんな風に言われたら、僕のキノコさん、泣いちゃいますよ」

気分を害したのだろう、離せとばかりに首を左右に振りたくり少年は青年を睨む。
少年が首を振る度に髪が揺れ、キノコがぶるんぶるんと揺れているように見えた。
あっはは、と堪え切れずに青年は大声で笑い始める。

「あー、もう! 俺さ、真剣な話がしたいから、動くなよ。ホントお前、面白いわ。下ネタに聞こえるから僕のキノコさんとか言うな。キノコさんが泣くとか親父の下ネタかよ」

思う存分笑い、涙の浮かぶ目尻を指で拭うと、文句をつらつらと連ねた。
少年は眼をぱちくりとさせ、嗚呼そうですね、と納得したように頷く。

「確かに、聞きようによっては、男性器が濡れそぼっている表現にも取れますね。今後気を付けます」

くすり、と少年の口元が微笑を湛え、ふふ、と笑いを漏らす。
そして、口元を引き締め真剣な表情になると、青年の胸倉を掴んだ。
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