あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

凹凸の巡り合わせ 34

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溜息が止まらない。
ここで抵抗したところで、無駄なのは解っていた。
調べ上げられて、結局は捕まるのだ。
ならば抵抗しない方が面倒は少なくなる。
はああ、と大きく息を吐き出し、スマホを取り出した。
ロック画面には、真ん中にアイコンとトーク内容が出ていた。
名前は『m.k』と、イニシャルになっている。
アイコンはマッシュルームの画像だ。

「早く貸して。えー、と。イニシャルー? なになに、今日はありが」
「読むんじゃねぇよ! もういいだろ」

スマホを奪い取られ、胸倉から手が外された。
あのキノコのことだ、色々なことを考えて計算して、思考を尽くして打ったに違いないのだ。
こんな男に読まれるのは嫌だった。
つい声を荒げてスマホを奪い返していた。

「ふーん。そんなに大事なヒト、かあ。じゅんじゅんが知ったら、きっと利用されちゃうね。あの人、手段選ばないからなあ。拉致って監禁して犯して。ボロボロにされちゃうね。だって、司破ちゃんが何かに執着するの、初めてでしょ? やっと弱味握れるんだもん、じゅんじゅん喜ぶだろうなあ」

ケラケラと笑いながら宣う志島の言葉は、その通りで何の反論も出来ない。
司破と志島の異母兄弟、倉本 純(クラモト ジュン)は頭のネジが何本も外れた異常な男だった。
司破も人のことは言えないが、それでも倉本よりはマシな筈だと思っている。

「イニシャルじゃ何にも解らないでしょ。名前、フルネームで。職業、年齢、家族構成も。司破ちゃんがいい子なら、じゅんじゅんも下手なことはしないよ、きっと」

この話を耳にすれば、倉本は何かしらの動きをみせるだろう。
本当に面倒なことになった、と髪をぐしゃぐしゃに掻き乱す。

「神沼 明紫亜。高校生、16歳。家族構成は知らん。ただの生徒だ。カタギの人間には、手ぇ出すなよ」

隠しても良いことはない。
寧ろ、隠せば隠しただけ、執拗に追いかけ回すような人間だ。
仕方無く答え、念を押すように言い放つ。

「かみぬま、めしあ、で、m.kね。てか、司破ちゃん! 高校生はまずくない? 流石に未成年は捕まるっしょー。そんなに具合よかったのー?」
「まだやってねぇよ」

最後まではな、と心の中で付け足し、志島を睨んだ。
枯れてんなあ、と呟く志島は堪えた様子もなく、司破に背を向ける。

「馬鹿なこと吐かしてねぇで、さっさと帰れ」
「へいへい。まったねー、お兄ちゃん! 大事なものから、目は離しちゃいけないよ?」

ばいぴー、と手を振って志島は、司破の前からいなくなった。
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