あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

オリエンテーション 08*

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絞り出すように出した声は無視されて、くに、と肛門に指が食い込んだ。
今までで一番嫌悪感が強くなり、大きく眼を見開いて、体が痙攣し始める。
頭の中で、汚い自分に為されたお仕置きが蘇っていく。


 許して、と泣いて詫びても、母も母の一夜限りのセフレもやめてはくれなかった。
キッチンで出来合いの惣菜を食べている明紫亜の目の前で、情事は唐突に始まって、それを眺めるしかないのは、時偶あることだった。
それを面白くないと殴られることも、明紫亜の部屋に鍵を掛けて放置されることも、ごくたまにあることではあった。
その日も部屋に放置されて、おもらしをしたことを詰られた。
けれどこの日はそれで終わらなくて、おもらしをしたお仕置きだと、大便で汚れる肛門をティッシュで拭った後、幼い明紫亜のソコに、大人の男の指が埋められた。
肛門を弄り回し引き抜くと、指に付着した便を明紫亜の顔に擦り付けた。
明紫亜は嘔吐して、また母に叱られた。
泣き喚く明紫亜のことなど無視をして、母とセフレは、様々な異物を明紫亜の肛門に埋(うず)めては嗤った。
明紫亜は、何度も嘔吐して、その度に汚いと詰られたのだ。


 普段は思い出さないように固く蓋をしている昔の出来事が、鮮明に頭の中で暴れる。
僅かに潜り込んだ指が中に進もうと動いて、たすけてっ、と無意識に叫んでいた。


* * * * * *


 司破が瀬名と委員長と共に風呂場へと辿り着き、引き戸を開けようとした時だった。
中から明紫亜の声が響く。

「たすけてっ」

そう届いた言葉は、明紫亜が普段は口にしないもので、それだけ彼が切羽詰まった状況だと知れた。

「神沼! 大丈夫、か……っ……!?」

乱暴に引き戸を開くと、少年一人に後ろから体を抱え込まれる明紫亜と、それを二人の少年に囲まれているのが目に入り、抱え込む少年の指が明紫亜の肛門に僅かだが埋(うず)められていた。


 怒りで我を忘れた。
男の肩を掴み拳を振り上げると、その勢いで明紫亜の体は少年から解放されて床に転がった。

「せんせっ、ダメ! だよ。僕、大丈夫、だから。ね?」

殴る寸前で明紫亜の叫びに拳は止まる。
少年から解放されても、明紫亜の体はガタガタと震え、気持ち悪いのだろう、顔色も青白かった。
濡れているからなのか、いつものキノコはペタンと真っ直ぐで、おかっぱのようだ。
明紫亜はこんな状況でも、首を傾けて、へたりと笑う。


 バカみたいに笑えと、確かに司破は彼に言った。
だが、こんな時まで笑わなくてもいいのだ。
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