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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
オリエンテーション 16
しおりを挟む後ろから布団を抱えた仲居さんが二人やってきて、キャッキャッ言いながら、ベッドとソファーの間に敷いて出て行く。
「遅くなってごめんね。仲居さんにお茶誘われちゃってさ。でも、布団を運んでくれるって言うから、助かったよ」
頭を擦りながら人の良い笑顔で宣う瀬名に、明紫亜がペコリと頭を下げ、有り難う御座います、とお礼を述べている。
「あ、笹垣先生。もうお風呂入って下さいとのことでした。行きましょうか? 神沼君は寝てるんだよ」
司破と瀬名は入浴の支度を手に出て行き、明紫亜は布団に潜り込んだ。
* * * * * *
瀬名と二人並んで脱衣所に入ると、他のクラスの教師が数人裸になっているところだった。
「そう言えば、笹垣先生は。倉本 純さんと知り合いなんですか?」
衣服を脱いでいると、唐突に瀬名が聞いてくる。
服を脱ぐ手が止まり、彼を凝視した。
「先生は、倉本の知り合いでしたか」
動揺を悟られぬように動きを再開させ、呟くように告げる。
「知り合い、と言うか。まあ、有り体に言ってしまえば、遠い親戚になるのかな。普段は交流とかないんだけど、昨日だったかな、いきなり電話が掛かってきて、笹垣先生のこと、聞かれたから。気を付けて、下さいね。純さん、ちょっと特殊な人で怖くて。僕は関わりたくないんだよね」
困り顔を晒す彼は、倉本をあまり良くは思っていないのだろう。
確かに、言われてみれば雰囲気や容姿に似た部分があるかもしれない。
倉本の頭のネジが正常に締まっていれば、瀬名のようにまともだったのか。
「そうですか。また連絡する予定はありますか?」
「連絡するとは言われましたよ。恐らく、先生のことを聞かれるんでしょうね。一応昨日は、新任の先生で付き合いがないから解らないと、そう言ってはおきましたが。いつまで通じるかは、ちょっと」
服を脱ぎ終わり、浴室にと向かう。
瀬名は眉が下がった顔で溜息を吐いた。
「すいません、兄がご迷惑を。私が靡かないので、アレはあの手この手で嫌がらせを仕掛けてくるんですよ。神沼と知り合いだと、弟に知れてしまいましてね。それで探りを入れているのだと思います」
瀬名は驚きに目を見張るも、倉本の実家の事情を知っているのだろう、納得したように頷いた。
「神沼君は、体質が体質だし、純さんに捕まったら、ちょっとヤバそうですね。僕も気を付けて目を光らせますよ」
「お願いします。神沼から体質のこと、聞いたんですね。懐かれましたか?」
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