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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
オリエンテーション 17
しおりを挟むあのキノコは、司破を特別だと言いながら、案外人によく懐く。
深い意味で言った台詞ではなかったが、瀬名は真面目な顔になった。
「僕の出番なんてありませんよ。笹垣先生のことしか、あの子は見ていない。ちょっとした依存ですよね。ああ、いいとか悪いとかではなく、恐らくあの子の支えなんですよ、先生が」
ふわり、と微笑むと瀬名は洗い場に歩いて行き、腰を降ろす。
瀬名の隣に座りながら苦笑を溢した。
依存と言うならば、お互い様かもしれない。
明紫亜の存在は、司破の中から消えていかない。
今まで、司破の心に感情を掻き立てる何かが残ったことなど、殺人以外ではなかった。
彼を面白いと思ったのは、殺してくれと言う割には表情が豊かで、子供っぽい仕草をする癖に、悟り切ったように笑う、そんなところだった。(勿論、奇抜な頭髪が一番面白いのだが)
どうでもいいところで甘えたな行動を取り、本当に甘えたい時には押し隠して、それを悟られないように大丈夫だと嘘を吐く。
何も考えていないようで計算された言動は、彼の心を覆い隠してしまう。
其処にあるようでない、ないようである。
掴んだと思えば逃げていて、逃げたと思えば掴んでいる。
彼は歪な形を呈しているようだった。
その歪さが司破の心に突き刺さるのだ。
甘えてくるのなら、どんなにでも甘やかしたい。
頼ってくるのなら、幾らでも手を差し伸べる。
そう願ってしまうのだから、司破は戸惑う。
出逢ったばかりの少年に抱いた劣情は、司破に恐怖を与えた。
失いたくないと初めて思った。
手放したくないと強く願った。
それだから、司破は明紫亜から逃げたのだ。
抜け出せなくなる前に、司破は彼を切り離した。
それでも彼は、司破の前に再び現れ、心を乱していく。
明紫亜と過ごした時間など些細なもので、それであれ、魂が彼を求めてしまうのだ。
倉本は、人の本心を暴き立て、その心に絶望を与えるのが好きな男だ。
彼には隠し事が出来ない。
何故か全てを読まれてしまう。
そして、ネチネチと精神が狂うまで本心を詰られ、肉体を痛め付けられる。
痛め付ける方法は、肉体的な暴力であったり、性的な暴力であったり、両方であったり、倉本の気分によって違った。
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好意も愛情もなかったが、告白を受けなんとなく付き合っていた彼女だ。
一緒にいても感情が湧き上がることはなかった。
体だけの関係になりつつあった時に、彼女は倉本に攫われた。
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