あべらちお

Neu(ノイ)

文字の大きさ
81 / 242
一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

オリエンテーション 31*

しおりを挟む


「メシア。俺のこと、信じられないか?」

静かに問い掛ければ、フルフルと首は横に振られる。

「ならいい。甘えたい時だけ甘えとけ」

ポンポン、とキノコを柔く叩く。
動きに合わせて揺れ動く明紫亜の髪は、いつ見ても面白い。
こんなシリアスな場面でも、ほっこりとなってしまうのだ。
確かに明紫亜の言う通り、秀逸で優秀なのだろう。

「う、ん」

こくん、と頷く彼は落ち着いたのだろう、隠していた顔が現れる。
涙は止まっていた。
えへへ、と上気した顔ではにかむ明紫亜の目蓋にキスをする。

「俺は、お前の笑った顔が、好きだ。でも無理に笑おうとされると、なんかムカつく。だから、笑いたい時だけ笑え。泣きたい時は、胸貸してやるから」

ずっと言いたかったことを微笑混じりに告げた。
はい、と双眸を細め幸せそうに返事をする明紫亜に、胸が温かくなるのを感じる。
それはとても、司破にとっては衝撃的な感覚だった。
これを幸せと呼ぶのかもしれない、と堪らずに明紫亜の体に腕を回し、ぎゅうぎゅう、と抱き竦める。

「し、司破さ、ん! くるし、い!」

抗議の声に力を緩め体を離せば、少し怒ったような照れたような、そのどちらをも含む表情を浮かべる彼の肩を布団に押し付けた。

「時間がないから少しだけ。触ってもいいか?」

見下ろした明紫亜の両目は、真っ直ぐに司破を捉え、細まった双眸は肯定を示す。
そろそろと彼の手が伸ばされ、司破の頬を包んだ。

「勿論、です。僕は、司破さんと、その、セックス、出来るように、早くなりたい、です。司破さんで埋め尽くされたい」

熱を帯びた瞳が司破を見詰め、赤い舌がチロリと覗く。
自身の唇を舐め明紫亜は、くたりと緩い笑みを浮かべる。
触、っ、て、とゆっくりと唇が動いていく様は、淫靡さを醸し出していた。


 噛み付くように唇を重ねる。
薄い肉を舌先で辿れば、薄っすらと口唇が開かれた。
僅かに口を離せば、ふあ、と呼吸にしては甘い声が彼から漏れる。
無防備に出されている舌先を舐めると、くちゅりと水音がした。
ぐちゅ、と音を立て、舌を絡ませながら口内にと深く潜らせる。

「ふ、ん、っ、っ、ん」

一生懸命に応えようと舌を動かす明紫亜に胸が熱くなった。
奪うように激しく舌を吸い、絡ませ、歯を立て、優しく舐め上げる。
歯列をなぞるように舌を這わせると、明紫亜の体がビクビクと震えた。

「っ、っ、ん、ぅ、っ、ん」

ゆっくりと口唇を離せば、つー、と混じり合った唾液が糸を引いた。
明紫亜の瞳がトロンと蕩けている。
目尻には涙が浮かんでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

少年探偵は恥部を徹底的に調べあげられる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...