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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
オリエンテーション 31*
しおりを挟む「メシア。俺のこと、信じられないか?」
静かに問い掛ければ、フルフルと首は横に振られる。
「ならいい。甘えたい時だけ甘えとけ」
ポンポン、とキノコを柔く叩く。
動きに合わせて揺れ動く明紫亜の髪は、いつ見ても面白い。
こんなシリアスな場面でも、ほっこりとなってしまうのだ。
確かに明紫亜の言う通り、秀逸で優秀なのだろう。
「う、ん」
こくん、と頷く彼は落ち着いたのだろう、隠していた顔が現れる。
涙は止まっていた。
えへへ、と上気した顔ではにかむ明紫亜の目蓋にキスをする。
「俺は、お前の笑った顔が、好きだ。でも無理に笑おうとされると、なんかムカつく。だから、笑いたい時だけ笑え。泣きたい時は、胸貸してやるから」
ずっと言いたかったことを微笑混じりに告げた。
はい、と双眸を細め幸せそうに返事をする明紫亜に、胸が温かくなるのを感じる。
それはとても、司破にとっては衝撃的な感覚だった。
これを幸せと呼ぶのかもしれない、と堪らずに明紫亜の体に腕を回し、ぎゅうぎゅう、と抱き竦める。
「し、司破さ、ん! くるし、い!」
抗議の声に力を緩め体を離せば、少し怒ったような照れたような、そのどちらをも含む表情を浮かべる彼の肩を布団に押し付けた。
「時間がないから少しだけ。触ってもいいか?」
見下ろした明紫亜の両目は、真っ直ぐに司破を捉え、細まった双眸は肯定を示す。
そろそろと彼の手が伸ばされ、司破の頬を包んだ。
「勿論、です。僕は、司破さんと、その、セックス、出来るように、早くなりたい、です。司破さんで埋め尽くされたい」
熱を帯びた瞳が司破を見詰め、赤い舌がチロリと覗く。
自身の唇を舐め明紫亜は、くたりと緩い笑みを浮かべる。
触、っ、て、とゆっくりと唇が動いていく様は、淫靡さを醸し出していた。
噛み付くように唇を重ねる。
薄い肉を舌先で辿れば、薄っすらと口唇が開かれた。
僅かに口を離せば、ふあ、と呼吸にしては甘い声が彼から漏れる。
無防備に出されている舌先を舐めると、くちゅりと水音がした。
ぐちゅ、と音を立て、舌を絡ませながら口内にと深く潜らせる。
「ふ、ん、っ、っ、ん」
一生懸命に応えようと舌を動かす明紫亜に胸が熱くなった。
奪うように激しく舌を吸い、絡ませ、歯を立て、優しく舐め上げる。
歯列をなぞるように舌を這わせると、明紫亜の体がビクビクと震えた。
「っ、っ、ん、ぅ、っ、ん」
ゆっくりと口唇を離せば、つー、と混じり合った唾液が糸を引いた。
明紫亜の瞳がトロンと蕩けている。
目尻には涙が浮かんでいた。
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