あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

秘密の関係 43

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「杉木くんには、人と触れ合うのが苦手だって伝えてあったんですけど。今日、委員長に触れるようになって、それで杉木くん、妬けるって言うんですよ。一番に触れるようになりたかったって。僕の頭を撫で回してハグしたいとか言ってた。まあ、そこはいいとして。問題はその後に、一番近いのにもどかしい、と。意味が解らなくて聞こうと思ったんですけどタイミング逃しちゃって。名探偵マッシュルームとしては、謎を謎のままにしておくのが気持ち悪いんです!」

ふんふん、と相槌を打ち聞いていた司破も途中から眉間に皺を寄せ怖い顔になっていた。
後ろから手を回し明紫亜の頬を掴み、上下左右に伸ばす。

「お前、それ。言い寄られてんだろ。ボケっとしてんじゃねぇよ。ただの口説き文句だろうが。俺のもんだって自覚、ちゃんと持ってんのか? 浮気したら許さねぇぞ」
「へ? ほんなほとは、はいとほもいまふへど(そんなことはないと思いますけど)。はなひへくははい(放して下さい)」

頬を掴まれたまま喋り出す明紫亜だったが上手く発音出来ず、何を言っているのかサッパリだった。
頭を振り、放して、と要求すれば、頬から手が外された。

「杉木くんは良い奴で。ちょっとしたお巫山戯っていうか、うん、そういうのだと思うんです。男子高校生にありがちな戯れってやつです。……それに、不思議な感じがするんですよ。上手く表現出来ないけど、なんていうか。すごく心臓がキリキリする感じがして、なんか苦しくなるんです。少しだけど、逆らうのが怖いと言うか、拒絶したくないと言うか。そういう感じもするんです。うーん、存在が謎? 名探偵マッシュルームとしてはすごく気になります」

自身の頬を擦りつつ首を左右に揺する明紫亜は、矢張り太陽電池で左右に揺れ動く動物や植物を象った玩具に見える。

「えっ、と。その。司破さんのものだって、自覚は、沢山あります。今日も授業中、危なかったです。悶え死ぬかと思いました」

ふはあ、と吐息を吐き出す明紫亜の頬が染まり、チラリと司破を窺うと、司破さんのもの、と小さく呟き、ぐふふ、と笑い出す。

「でも、それとこれとは別の話でして。すごく気になっちゃうんですよー! 謎が、謎が僕を呼んでいるー!」

うぬぬう、と唸り声を上げ、ぐるんと体を回転させると司破と向き合った。
上目で彼を窺うと、とても恐ろしい顔を晒している。
元より怖い顔が更に怖く仕上がっていた。

「あのな、メシア。逆らうのが怖いってだけで危ないだろうが。拒絶したくないって、何かされたらどうすんだよ? お前がそう感じるなら距離置いた方が」
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