あべらちお

Neu(ノイ)

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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼

秘密の関係 65

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「そっか。大丈夫なら良いんだけどね。もし何かあれば一応相談して貰えると嬉しいな。家庭の事情はそれぞれにあるから、そこまで何か出来る訳でもないんだけど。……さて、ちょっと触るよ?」

保健医として言うべきことを言っただけという事務的な言葉を放つと、話題を戻すように杉木の腕からシャツを引き抜いていくのだった。


* * * * * *


 明紫亜は杉木と共に理科室に向かっていた。
瀬名が一通り診た結果、特に怪我もないと判断されたのだ。
隣を歩く彼は始終無言で、何を考えているのかは解らない。
俯いて歩いていると、前方から名前を呼ばれた。

「あっ、良かった。行き違いにならなくて。皆もう教室に戻ったよ。メシアと杉木君の荷物も運んであるから、このまま教室に戻れって笹垣先生が。授業も終わっちゃったし、HR始まる前に急いで戻ろう! 杉木君、大丈夫だった?」

バタバタと小走りのような早足でやって来たのは義一郎だった。
杉木はにんまりと口端を上げ、ピースをしてみせる。

「へーきへーき。そんな大袈裟にすんなって。少し割れただけだろ」

義一郎が、くるり、と踵を返し、明紫亜の隣に並び三人で歩く。
急ぎ足で歩きながら義一郎の表情が弛んだ。

「なら良かった。あ、そうだ。笹垣先生が放課後理科準備室に来るようにって、杉木君に」

最初明紫亜は自分への伝言かと思った。
最後、杉木へのものだと解り、秘かに動揺する。
義一郎が杉木に視線を送っていた。

「あー、そうか。さっきの授業でのことかな」

杉木は意味深に笑みを深め顎を擦って、ちらり、と明紫亜を窺い見る。
明紫亜としては面白くなかった。
放課後、押し掛けて誕生日プレゼントだけでも渡そうと考えていたのだ。
だいぶ面白くない。
無意識に、ふんぐうう、と唸り杉木を睨んでいた。

「なに膨れてんだよ、メシア。俺が他の奴と会うの、そんなに面白くない?」

わざとなのだろう、揶揄しながら杉木が明紫亜の頬を突付く。
義一郎が驚愕に両目を見開いているのが見えた。
その瞳が心配そうに揺れている。

「っ、違いますー! 笹垣先生が僕だけのけ者にするから面白くないだけで。僕だって一応当事者なんだからな」

ぶんぶん、と両手を振り否定する明紫亜に、杉木は双眸を細めた。
ふい、と明紫亜から視線を外す杉木は面白くなさそうだ。

「また笹垣かよ」

何かを言おうとして開かれた杉木の唇は閉じられていき、結局は小さく吐き捨てられた台詞のみが明紫亜の耳に届く。

「いつの間にか、前よりも仲良しだね。羨ましいなあ」
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