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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係 101
しおりを挟む司破の腕を掴み、額をごんごんとぶつけてくるキノコに笑いが止まらなくなる。
「いてぇよ、馬鹿キノコ。俺がこれだけ愛を示しても信じらんねぇなら、もう結婚するしかねぇな。……お前を丸ごと全部、俺のモノにしてやる。逃げるなよ?」
額にぶつかる明紫亜の額を片手で押し返し、布団に押し付ける。
両手で顔を挟み込み至近距離で見詰めれば、むぐぐ、と唸る声が聞こえてきた。
「……司破さんはズルいです。僕は、幸せなんか望んじゃいけないのに。僕が幸せになったら、皆が不幸になるのに。解ってるのに。今まで何だって諦めてこれたのに。どうしても司破さんだけは、諦められなくて。自分から求めちゃう。司破さんのせいで僕、幸せなんだ」
唇を尖らせ不満たらたらに言う癖に、見詰めてくる瞳はトロンと蕩けている。
はうあ、と叫び目を瞑る明紫亜の口唇に啄むだけの口付けを落とす。
「お前一人が幸せになったところで、不幸になる奴なんかいやしねぇよ。大体、前提が逆だろうが。メシアの幸せが周りを幸せにするんだ。お前が笑えば皆が嬉しくなる。独り善がりで不幸に浸ってる奴ほど何もわかっちゃいない。メシア、テメエの価値観をぶっ壊した先にしか答えはないぞ」
ちろり、と伸ばされる舌に歯を立て彼の戯言を笑い飛ばした。
明紫亜は何度も眼を瞬かせ司破を凝視した後、眉間に皺を寄せ泣き出しそうに瞳を揺らす。
「僕の価値観、司破さんが破壊してくんだよ。司破さんは僕が必死で守ってきたもの全部壊して、其処に全く新しいものを植え付けて、それなのに知らん顔してる。笑えって言った癖に、無理して笑うなとか言うし。甘えろとか、泣いていいとか、無理なことばっか言う。サイボーグみたいに怖い顔してるのに優しく触れて僕の中に入り込んできちゃうし。本音とか聞き出そうとする。そういうの全部、どうしようもないぐらい頭くる。腹が立つ」
涙を滲ませていた眼が、キッ、と釣り上がり怒りを主張してくる。
ぷくん、と空気を溜める様に顔が弛むのを止められない。
怒っている姿が可愛く見えるなどと言えば更に膨れてしまうだろうと顔を隠すように明紫亜の首元に埋める。
「……ねえ、司破さん。僕はずっと自分がいなくなった未来しか描いてこなかったんだよ。僕が死んだ後の幸せに満ちた世界を思い描いてた。時々、従弟に怒られたりしたけど、それが僕の些細な楽しみだったんだ。狭い世界に引き籠もって、いつか死ぬ瞬間を夢見てた。僕が死ぬことが即ち世界の安寧だって思うんだ。今でもそれは変わらないけど」
明紫亜に髪を引っ張られて渋々と顔を上げていく。
馬鹿なキノコだ、と思う。
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