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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係(勉強合宿編)03
しおりを挟む何故か彼女とその周りの人間は明紫亜を神と呼んでいる。
俗にいう、腐女子という生態をもつ愛弥からすると明紫亜はとても美味しい存在なのだと言う。
委員長の水保 義一郎(ミズホ ギイチロウ)を優男攻めと称してはしゃぎ、明紫亜に並々ならぬ執着をみせ人目を憚らず構い倒そうとする杉木 涙夏(スギキ ルイカ)を執着溺愛攻めと呼んでは日頃から身悶えている。
明紫亜総受けが流行っているというのだから、女子の妄想力には恐れしか抱けない。
もう好きにしてくれ、と半ば諦めの境地に達していた。
「何してんだよ、朝っぱらから。キザシ、メシアは俺のなんだから勝手に告白とかしないで? メシアも俺以外の奴にベタベタ触らせんなよ」
ぐん、といきなりリュックを引かれ、体が後ろに持っていかれる。
握っていた愛弥の手は離れ、首に涙夏の腕が巻き付いてきた。
「おはよー、ルイルイ! 今日も萌をあざっす! 束縛したくなるのは解るさ? 束縛攻めも萌えるよ? しかしな、メアは皆のメアなんだからしょうがないよ。多目に見てくれ、兄さん」
ぎろり、と睨んでくる涙夏に堪えた様子もなく、へらり、と笑い顔の前で合掌した愛弥は強者である。
離せ、と涙夏の胸を押しても彼は解放しようとはしてくれない。
「俺はお前の兄になった覚えはないよ。……メシアなら兄さんって呼んでもいいけど。寧ろ、呼んで貰いたいな。なあ、メシア。お兄ちゃん、って呼んでみてよ」
嫌そうな顔で愛弥を睨むも、少し考えた末に涙夏の唇が明紫亜の耳元に寄せられる。
ふんおお、と奇声を上げ首を左右に振りたくる明紫亜は涙夏の腕から逃げようと必死だった。
正直、GW前に涙夏とギクシャクしたままで、どう接していいのか解らないのだ。
「な、そんなの、っ、呼べな、い」
明紫亜を束縛しようとする涙夏が怖くて拒絶を示したのが4月末のことだった。
クラスメイトと仲良くなることも許せないのだと、涙夏だけを見て欲しいと、異常なまでの明紫亜への独占欲を覗かせたのは、凡そ一週間前だ。
空き教室に連れ込まれてひどく詰られたのを覚えている。
他人と触れ合おうと頑張る明紫亜に現実を突き付け、無駄な努力だと嘲笑った涙夏を忘れられない。
けれども、彼は何事もなかったかのように振る舞っている。
怖い、と涙夏を突き飛ばして逃げたことなど無かったことにされている気がした。
微笑を浮かべている涙夏の気持ちが解らない。
「そ? 残念だったな、キザシ」
急に涙夏の腕から解放され、明紫亜は愛弥の背中に回る。
危険から逃げたつもりで自分から近付いていることに気付かなかった。
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