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一章:可愛いキノコ、愛しい殺人鬼
秘密の関係(勉強合宿編)02
しおりを挟むきっと彼が誰にも愛を示さないサイボーグのような人間だからこそ、明紫亜は受け入れたくなってしまうのだろう。
生まれたての愛は辿々しくて、其処に打算も計算も不純物は一切混じってはいない。
ただ狂おしい程の愛なのだ。
殺したい、殺されたい。
それを他人は愛とは呼ばない。
異常だと糾弾するだろう。
おかしいと解っていても、明紫亜の中で芽生えた愛が、少年を生と向き合わせたのだ。
誰に非難されても、もう止まれない。
明紫亜は彼と生きる道を選び、その為に変わることを決意した。
最終的には恋人(仮)の手で殺されることを念頭に、少年は生きるのだ。
最期のその日を夢見て愛しい人と生きると、心に決めていた。
アンティーク調の軽自動車に揺られ校門近くで停車した車から明紫亜は外にと踏み出す。
背中では登山用のリュックが揺れている。
気を付けて、と心配を滲ませる智如に手を振り集合場所のグラウンドに向かう。
「メーアーっ! おっはー!」
ずどん、と背中からタックルを受け、前のめりになり数歩前によろけてしまう。
体勢を持ち直し後ろを振り返った明紫亜の頭をくしゃくしゃにして目の前の少女は、えっへへ、と笑った。
「アミちゃん、おはよう。楽しみだね! 僕、緊張で心臓出てきそうだよー」
つられるように、ボケボケ、とした笑いを浮かべれば、クラスメイトの少女、萌 愛弥(キザシ アミ)は何故か地団駄を踏んで明紫亜を睨んでくる。
「メアっていちいち可愛くてムカつく。朝から萌えて死にそうなんだけど? 高校生にもなって合宿でそんな緊張しないよー。テキトーテキトー。それに、ギーチンもルイルイもいるし。何かあれぱシノもメグも、勿論、私だっているんだからさっ! だーいじょぶ、大丈夫! 気分悪くなったらすぐに報告してね。これ、班長命令だかんなっ!」
力強く言い切ってくる彼女は明紫亜の事情を知らない。
それでも車に酔いやすい虚弱なイメージがついているのだろう。
彼女なりの気遣いがとても嬉しかった。
「うん。迷惑掛けちゃうかもしれないけど。アミちゃん、大好きだよ!」
びしっ、と人差し指を立てている愛弥の手を、がしり、と掴み想いを伝える。
目を見張った少女の顔に驚愕の表情が浮かび、徐々に喜びを表していく。
ぎゅっ、と握り返された手が上下に揺れた。
「おおおお! 私もメアのこと好きだぞ! いつも萌を有り難う! 君は神なんだから気にしなくていいんだよ」
むふふ、と気味の悪い笑い声を出す愛弥は、クラスの中で明紫亜が触れても大丈夫になった人間の一人だった。
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