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一章:恋に堕ちた悪魔の子
告白された場合 04
しおりを挟む僕は自然と微笑んでいた。
「なに笑ってんの。変な奴」
そんな僕を横目で窺い、フィンも僅かに笑みを溢した。
柔らかい表情のフィンを見るのは、嬉しかった。
心がポカポカと暖まるような気がした。
ふと、フィンの顔が近くなる。
吐息が頬に掛かった。
「フィン、くん?」
「……こうしてても、イイ?」
切羽詰まったような声を出し、切なさそうに、彼の眉間には皺が寄っている。
ぎゅう、と首に腕が回り、僕の肩にはフィンの額が乗せられていた。
彼の重みが体に掛かる。
駄目だ、と叫ぶ僕がいる。
拒絶しろ、と理性が警告している。
それでも、僕はフィンの背中に腕を伸ばしていた。
どうしてだろうか。
愛しくて愛しくて、堪らなかった。
「どうか、したんですか?」
「ミル、可愛いから。待つって言ったけど、奪いたくなる。困るでしょ? これで我慢するよ」
体と体がくっついているところから、彼の温もりが伝わってくる。
どうしようもなく泣いてしまいたくなった。
視界の中で揺れる黒い髪に片手を置いた。
掻き抱く腕に力が入る。
「僕は……」
何かを口にしようとした。
フィンの顔が上がり、視線がガッチリと合う。
再び口を開けたその瞬間、ガタンと物音が聞こえた。
入口には、神父様が困ったような顔で立っていた。
慌ててフィンから腕を離す。
離れるように彼の肩を揺さぶるも、フィンは意地悪く笑い、首に回された腕に余計に力を籠めている。
僕は赤面しながらも、わたわたと現状を説明しようと神父様を見た。
「あ、あのっ、コレは! 違うのです。えっと、コレは……」
「ああ、ミル。落ち着いて。私はフィンの気持ちを知っている」
「え? あ、ハイ」
神父様が苦笑を滲ませて宣えば、僕の肩から力が抜けた。
はあ、と息が吐いて出た。
神父様はフィンの隣に立ち、僕から引き剥がした。
「なに。邪魔しないでよ」
「君の気持ちは解っているけどね。流石に教会でイチャイチャされると困るよ、フィン。それに、もう帰る時間だ」
首根っこを掴まれた状態で、神父様を睨むフィン。
イチャイチャって、と僕一人で悶々と頭を悩ましている間に、神父様はフィンを連れて部屋を出ていた。
こんな日々がこれからずっと続くのかと思うと、頭が痛くなるのだった。
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