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二章:訪れた変化
異端児の場合(2)02
しおりを挟む情けなくて嫌になる。
神父は意図も簡単にミルの心をほどいて癒してしまうのに。
俺は見当違いな嫉妬に苦しんでいた。
涙をぼたぼたと溢すミルから逃げて、俺は自宅に帰る。
早かったわね、と声を掛ける母親に適当に返事を返し、自室に入った。
私服に着替えて学校用のバッグを手に部屋を出る。
もう行くの、と母親に問われれば、朝学習があると嘘を吐いて学校に向かう。
今日はもう走らないだろう、と思った。
あんなに泣いて、走れないだろう。
そういった想いとは別に、涙を静かに流すミルを、強引に奪いたくなった己の異常さに腹が立っていた。
これでは同級生達と同じである。
拳を握り、頭の中のミルを追い払う。
彼は綺麗な人間だ。
俺の汚い感情で汚したくはなかった。
本当は、抱き寄せて優しく涙を拭いたかった。
頭を撫でて安心させてやりたかった。
神父がするように、俺もそうしたかった。
だが、原因は俺だし、薄汚い気持ちが邪魔をして、ミルに触れるのが怖かった。
どうにか涙を拭い一度だけ頭に触れた。
それだけで、胸が震えて、悪魔の俺は奪ってしまえと囁く。
劣情を抑えつけて逃げて来たのだ。
明日からどうしよう、と頭を悩ませる。
泣かれてしまった以上は、少し距離を置いた方が良いのかもしれない。
涙を流すミルは破壊的だ。
理性がもたないと困る。
レンガ造りの住宅街を抜けて坂道を歩く。
学校は坂の上だ。
少しキツいがなんてことはない。
答えが出ないまま学校に着いてしまった。
教室に入ると、早く来ていた男子と女子に遠巻きに見られる。
いつものことだ。
多数派の人間は、異端児を恐れる。
俺は気にすることなく席に着いた。
話し掛けてくる人間などいない。
あるのはやっかみぐらいのものだ。
ミルと仲が良いことが気に食わない人間は沢山いる。
哀れみだ勘違いするな、と言われたこともある。
そんなことは自分が一番知っていた。
ミルは優しい。
俺を拒絶したりしない。
だけれど、解ってはいた。
いつかは拒絶されると。
彼は神父になる男で、同性愛を禁じる宗教に於いては、禁忌でしかない。
そんな俺を、いつまでも許容出来る筈がないと、理解はしていた。
同級生がミルにお熱だと言っても、彼等は所詮、思春期の一時期の迷いで、ミルを女の代替にしているに過ぎないのだ。
彼等は同性愛とは言わない。
だが、俺はミルだけが好きで、ミルだけを愛していて、ミルなしでは生きてもいけない。
ミルが男だっただけで、同性愛者ではないが、見てくれは立派な同性愛だ。
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