SとKのEscape

Neu(ノイ)

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一章:SとK

喧嘩 06

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 今日はハンバーグだった。
病院で疲れることを見越して、タネを作ってから病院に出掛けたらしい。
誇らしげに話しているクロは面白い。
珍しいのだ。
家事は長いからか、自信が持てるようだった。


 向かい合わせに置かれた椅子に座り、手を合わせる。
頂きます、を一緒に言う。
何故だろうか、昔からだ。
箸を持ち、ハンバーグに添えられたサラダと温野菜を食べる。

「あ、あの、さ。サン君。あ、あの、ね。話が、ある、んだ、けど」

食事も半分程食べた時だった。
思い詰めた顔になるクロを見て、きたかと内心頭を抱えたくなった。
クロも一大決心の元に発言しているらしく、ボク以外の人間と話す時のような、挙動不審な途切れ方になっている。
なるべく感情を出さぬように無表情を心掛ける。

「なんだい、クロ君? 彼女でも出来た?」

いつものように意地悪く言えば、クロの頭は面白いぐらいに揺れる。

「ち、ちち違う、よ。そうじゃ、なくって。あし、明日、敷家先生に、誘われ、て。それで、遊ぶ、ことに、なって。どうしたら良いのか、解らなくて」

クロの顔は、話ながらどんどん下降していく。
目線はハンバーグもテーブルも通り越して、自分の足に向かっている。
要するに、困っているのだ。
自分で決めるのが怖いクロらしい。
ボクに決めて欲しいのだろう。
矢張り、苛つきは抑えられそうになかった。
ただでさえ、クロの口から継生の名前が出るのは面白くないと言うのに。
追い打ちを掛けるようだ。

「それで、ボクにどうしろと? 君は幼稚園児なのかい? ボクは、君の保護者じゃあないんだよ。どうするかは、自分で決める。決めたことで起きたことには、自分で責任を取る。其れが大人ってものだろ? 違うかい? 君はもう、35歳になる大人だ。ボクに頼るのはお門違いだよ」

クロを一瞥する。
肩が震えているのが見て取れたが、どうしようもない。

「そ、そうじゃ、ないよ。行くことは、もう決めた、けど。何をしたら良いのか解らない」

弱々しくクロの頭が左右する。
ボクは残りのハンバーグを口に運んだ。

「其れこそ、ボクではなく敷家君に相談するべきなんじゃないか? 彼も君の担当医だ。心置き無く聞いてくれるさ」

ハンバーグを飲み込んだ後で、淡々と言葉を返す。
苛ついているのが解らぬように、飽くまでも平淡な口調だ。

「きょ、今日の、サン君、なんか可笑しいよ。何をそんなに、イライラしてるのさ? いつもは、何だかんだ聞いてくれるじゃないか。そんなに冷たく言ったりしない」
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