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一章:傲慢王子は呪われ奴隷を飼う
奴隷と水浴び 19
しおりを挟む背中を撫でていくシヴァに「ダメ」と呟く。
「来ないで。来ちゃ、ダメ。っ、ダメ、ダメ、ダメ、っ! ダメです。もう、会わない。会いたくない」
額を胸につけたまま首を左右に振りたくり駄目だと言いながら離れる素振りのない少年に、青年は嘲笑う。
顔を上げたメシアと視線が合い、顔を近付けた。
額同士がくっつく至近距離で二人は見詰め合っている。
「言っただろ? お前に拒否権はないんだ。諦めて俺のモノになれよ」
瞳を揺らす少年は繰り返し「ヤダ」と口にし、言葉ではシヴァを拒むが、身体は青年にしがみ着いたまま離れはしない。
触れたら駄目だと思うのに、もっと彼の温もりが欲しかった。
心が震えるのが何故なのか解らない。
メシアにとって、他人と触れ合うことは耐え難い恐怖と同義だったのだ。
認めたくなかった。
他人の温もりを求める弱い自分など要らない。
独りでも生きて行くのだ。
誰にも頼らずに、この街から嫌われ、それでも此処から離れることは叶わず、カースレストの泉の傍で生涯を送る。
メシアの未来は産まれた時から決まり切っている。
シレンヒルは監獄だ。
メシアを囚えて放してはくれない。
罪人に自由など必要ないのだ。
「……アンタの奴隷にでもなれってこと? 僕を傅かせたいんでしょ? 跪いて足でも舐めたら満足? 残念だけど、僕に自由なんてないから。僕の意思で決められることなんか一つもないんだよ。王子のモノになるかどうかを決めるのも僕じゃない。お母さんは僕を奴隷商に売った。僕の所有権は奴隷商にある。僕のことを決めるのは奴隷商だ」
見上げたシヴァの先に見える満月が眩しい。
自分で告げた事実が刃になってメシアの心に戻ってくる。
シヴァは感情のない瞳でメシアを凝視し、ふっ、と息を吐き出して笑った。
「買い取れば文句はないってことか? ……まあいい。綺麗にしてやるよ」
何やら物騒なことを呟かれ、真意を問おうとして、言葉を発する前に水の中にと引き込まれる。
座り込んだシヴァの膝の上に座らされ、背中を彼の胸に預ける形となった。
後ろから腕が回され、抱き込まれる。
互いの体液に濡れた箇所を青年の大きな手が擦っていく。
「やっ、やめ、っ、自分で、できる!」
身を捩り拒んだのは、いつものような恐怖からではなかった。
擽ったさと恥ずかしさに心臓が暴れて苦しい。
こんな感覚を赤の他人に抱くのは、生まれて初めてのことだった。
「自分のモノを綺麗にするのは当然のことだ。……もう、怖くはないだろ?」
傲慢で自分勝手な振る舞いの奥に優しさを感じてしまうのはどうしてだろうか。
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