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一章:責任取ってね?

神沼が大変です 01

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1.訳ありクラスメイトと保健医
【神沼が大変です】


 その高校は、都心にありながら田舎と表現する方が合っている場所にあった。
駅を降りて徒歩で20分程、平坦と坂道を乗り越えて歩き、漸く姿を現す。
電車で一駅行けば栄えているのに、此処は田圃(たんぼ)と山に囲まれた自然豊かな場所だ。


 不便と言えば言い方は悪いが、文明から取り残されたようにゆったりとした時間が流れるこの土地を、水保 義一郎(ミズホ ギイチロウ)は気に入っていた。
歌舞伎を生業とする家に生まれ、幼き頃より周りには常に人がいた。
落ち着きたかったのだ。
芸能の学校に行かせようとする両親を押し切り、この高校に進学することになって3日目が経とうとしている。


 この日は交流目的で温泉街で一泊することになっていた。
バスで宿泊する宿に向かうのだが、此処で一つ想定外の出来事があった。
クラスメイトの神沼 明紫亜(カミヌマ メシア)が、自家用車で向かうと言う。
どうやら車酔いが酷く、いつも迷惑を掛けてしまうからと言うことらしい。
入学してから2日目の委員会決めにて、流れで委員長を引き受けてしまった義一郎に担任からそう報告がきたのは、バスが発車する5分前のことだった。
もっと早くに連絡はあっただろうに、この担任はやる気がないのか、いつも不満気な顔にダルそうな態度だ。
義一郎はシートベルトを締めながら、そっと溜息を吐き出す。


 明紫亜は学校の中では浮いた存在だった。
まだ日は浅いのだが、そうさせているのは、その独特な髪型と、近寄りがたいオーラだろう。
マッシュルームを連想させる茶褐色のキノコヘアーに、コロコロと変わる表情は可愛らしいのに何処となく一線を引こうとする態度。
それ故に彼は、クラスでも変わった子と言う立ち位置にいる。


 義一郎としては、そんな明紫亜のことが気になっていた。
周りの遠巻きに彼を見る雰囲気には気付いているだろうに、気にした素振りも見せず己の世界を作り上げている。
義一郎にはとても出来そうにない芸当だった。
単純に、すごいな、と憧れた。
明紫亜の顔に笑顔が浮かべば、どんなに遠巻きで見ている人間でも、自然と笑みが浮かぶ。
なんて素敵なんだろう、と胸がときめいた。
彼はまるで、向日葵のような笑みを振り撒き、その癖、周りに交じることはない。
周りばかりを気にして、いつでもおどおどしてしまう義一郎とは違った。
バスの座席が明紫亜と隣だと知り、とても楽しみにしていたのだ。
残念だと肩を落として窓の外を眺める。
高速に乗ったのだろう。
周りは車しかない。
この何処かに明紫亜が乗る車があるのだろうかと考え、自然と口端が上がった。
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