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一章:調教スタート
ハジマリ 15*
しおりを挟むシャワーヘッドから放たれる流線状のお湯が、背中から掛けられる。
殴られ蹴られたところに沁みて痛かった。
「痛いよ、キヨ」
「うん、痛くなるようにしたからね」
ボソリ、と精一杯の文句を口に乗せても、弟の江原 雪(エハラ キヨ)は当たり前だと笑っている。
僕に兄である威厳など微塵もない。
痛みに堪えるように目蓋を閉ざした。
「セイは、痛いの嫌い?」
久し振りに名前で呼ばれた。
江原 晴(エハラ セイ)。
それが僕の名前だった。
驚愕に閉じたばかりの目を開けて弟を凝視する。
「嫌いだよ。お前は好きなのかよ?」
ぶっきらぼうに答えれば、キヨは眉尻を下げた。
双眸を細め遠くを見ている。
それでいて、ふわりと笑うのだから、どこかちぐはぐで、僕は戸惑いばかりを抱く。
「痛いのは嫌いだったけど。……もう痛いのも気持ち良くなる体だから、きっと好きなんだよ」
え、と言われた内容を理解出来ずに声が漏れた。
時折感じる違和感は、弟に誰かが、こういうことを教えた――弟にした――人間の気配を感じるからか。
僕は何度も瞬いた。
聞きたいことがある。
しかしそれは、喉の奥で貼り付いて、外には出て行かない。
「きっとお兄ちゃんも、すぐにそうなるよ? 痛くされておちんぽおっ勃てる牝犬に、なっちゃうよ? ふふ、愉しみだねえ」
先程までの切なそうな表情は、跡形もなく、存在すらなかったかのように消え去り、歪に口端を引き上げ恍惚の表情で笑っている。
精液の付着する互いの体をお湯で流すと、浴場の扉に固定してある鎖を解き始める。
中には残滓が注がれたままだ。
綺麗にしないのか、と聞く勇気はないが、他人の精液を体内に入れたままと言うのは、些か気持ちが悪い。
「今から拡げなきゃいけないから、潤滑油になるでしょ? 肛門から僕のザーメン垂れ流してヨガり狂ってよ」
鎖を外し終えて振り向いた弟は、太腿を擦り合わせてもじもじする僕を見て、考えていることを察したのだろう。
嘲笑うかのように歪な笑みを刻み、鎖を引き寄せた。
首が無理矢理引っ張られ、首ごと前のめりに体が傾いてしまう。
手が前に出て床に手を着いた。
「そうしてると本当に犬みたいだね。似合ってるよ?」
四つん這いになった僕の姿に弟はニタニタと笑う。
掌に握る鎖を、ぐい、と引かれ、獣のような体勢のままに僕は前に進むしかなかった。
屈辱に心が悲鳴を上げても、僕の精神は既にそれを無視することを覚えたようだった。
無心で弟の足元まで四つん這いで歩み寄り、キヨの膝に頭を擦り付ける。
良く出来ました、と頭を撫でて貰うのがヤケに心地良かった。
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