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序章:乃々子さんの息子
飲み会でも飲み過ぎにはご用心 01
しおりを挟む【飲み会でも飲み過ぎにはご用心】
本当は聞きたいことが山程あった。
母親を知っているらしいその男は、本業の人かと思うぐらいに怖い顔をしている。
上司になった彼は、澤田 寧(サワダ ヤスシ)と名乗った。
母親の名を呼ばれた時は、息が止まるかと思ったが、結局その話は流れて、何も聞けなかったのだ。
楼は母のことをあまり知らない。
父とは折り合いが悪く、今現在実家から飛び出している状況だ。
それだから、澤田のことが気になってはいた。
聞きたいことが沢山あったのだ。
誰にも聞けずに押し込めた想いがある。
彼なら知っているかもしれない、そう思いつつも、澤田はその話題から逃げていた。
聞かれたくないのだろう。
二人きりになることを避けている。
そんな状態が一年も続き、新しく新人が入って一ヶ月程。
今日は楼の後輩、夏木 羽李(ナツキ ウリ)の歓迎会だ。
チャンスはこの日だけだ、と何となく思う。
澤田と飲む機会などないのだ。
可愛い後輩を歓迎する大切な席ではあるが、利用させて貰うことにするのだった。
仕事のない日曜日。
同じ職場の人間が、とある居酒屋に集まっていた。
BL雑誌の編集者の集まりではあるが、全員男である。
社長の『BL雑誌を作り上げるのは当然男だ!』のスローガンに基づき、楼が身を置く部署、BL小説雑誌『haNAon』(はなおん)には男性しかいない。
その代わりと言うのか、様々なタイプの男がいた。
楼はクールビューティーの部類に入る。
新人の羽李はツンデレ系だろうか。
編集長の澤田は、怖い顔に似合わず純粋でピュアである。
親父好きには受けるかもしれない。
他にも筋肉質なガチムチ系や、まるで男の娘のような可愛い系。
寡黙な奴もいる。
多種多様な集まりではあるが、一つの雑誌を纏める編集部にしては人員が不足していることは確かで、新人の内から求められる仕事のクオリティーも高い。
羽李は少し抜けていておバカなようではあるが、少しずつ身に付けていくタイプなようで、根気よく教えた方が良いな、と一ヶ月の付き合いで解ってきた。
因みに、全員が全員、初めから腐った世界を知っているかと言えば、ノーである。
殆どは、配属されてから勉強し真っ青になる。
中には、腐男子で是非とも、という奴もいるらしいが、そういった例は一件か二件だ。
羽李も全く知らない世界だったと言う。
初めはさぞかし驚いたことだろう。
目の前に座る本日の主役を控え目に眺める。
嫌味にならない程度の焦げ茶に染色した髪は、柔らかいのだろう、ふんわりとして見える。
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